夏休み読書感想文:ブルーアーカイブ エデン条約篇

 表題の通り、先日ブルーアーカイブのメインストーリーであるエデン条約篇4章を読了したので、大きく分けて二つの感想を書き連ねます。
 考察を冠するような高尚なものではありません。また、当然俗にいうネタバレの配慮は致しませんので、特にnote外の私の知り合いのうちまだストーリーを読めていない方は、一度ストーリーを読み終えてから当感想文を眺めていただくことをお勧めします。
 

ここがよかったねエデン条約①:白洲アズサの英雄性

 直近の更新のあったエデン条約篇4章はアリウススクワッドとミカの行く末を描いたものですが、その中で前章の主人公の一人であるアズサについての描写もありました。アリウスに所属していた幼少期のアズサがマダム、ベアトリーチェの暴力的な教育に対して死すら厭わずに拒絶し、それを見かねたサオリがアズサを自身の下につけることで救う、という過去の回想シーンです。
 読了された方はご存じだと思いますが、エデン条約篇3章までにおけるアズサは心身を激しく摩耗しながらも、強靭な精神力と仲間の助けをもってついには3章までの悪の根源であり、師であり家族であるサオリを打ち倒します。
 チーム全員で立ち向かうという趣向の他のメインストーリーとは異なり、アズサは後方支援は受けつつ最後も一人でサオリに対峙しているわけですが、このアズサの圧倒的なヒロイズムはエデン条約篇の魅力の一つだったなと感じています。タイトルコールまでしている以上3章までの主人公はヒフミであったことに疑う余地がないですが、アズサはヒフミのサイドキック程度では全く収まらない、紛れもなくもう一人の主人公でした。
 このアズサの英雄性は他の多くの創作の、特に人気のキャラクター達にも通ずるようなものだと思います。単独では強大な敵に敗北するものの、異常な程の意志の強さにより決して倒れることはなく、やがて到着した仲間達と共に勝利する。これは多くのコミック的なストーリーラインのツボを抑えた展開と描写と言えるのではないでしょうか。4章で描かれた幼少期のアズサは、この英雄性・精神性が天性だったことを示すものでした。可愛らしい外見とは完全に相反する、ハードなアメコミチックなヒロイン、それが白洲アズサであり、エデン条約篇が多くの人を惹きつけた理由の一つとなるキャラクターだったのではないかと思います。
 先走って少し前述してしまっていますが、4章終盤でアズサはアリウススクワッド、もしかするとアリウスの生徒全員を指して、皆を家族であったと話しています。メインストーリー上ではアリウスの生徒たちが大手を振って生活できるようになるのはかなり遠い未来になりそうですが、いつかアズサと家族たちがフラットな気持ちで話せるシーンが描かれてほしいですね。

ここがよかったねエデン条約②:サオリとミカ、そしてミサキ ー自分勝手な少女たちー

 ここからがようやく4章の感想となります。4章の本筋はアリウススクワッドによるアツコ救出とベアトリーチェの打倒ですが、主立って描かれていたのはサオリとミカの二人の物語でした。作中でもサオリとミカの同一性についてミカ自身が話す場面がありますので、これは二人の物語なんだ、ということは明示されているといえます。この二人の連関については漫然と読んでいても明白にわかる部分ですし、方々でもう既に語りつくされていると思います。これとは違う視点で個人的にとても良いと思った箇所として、4章の主な登場人物の一人であるミサキと、サオリとミカの3人の少女の繋がりについて触れてみます。
 プレイヤーの皆さんはご存じの通りミサキは重度の自死癖・希死念慮を持っている生徒ですが、ミサキが被虐的な行為に走る都度、サオリが彼女を救出し続けてきていたということが4章ストーリー内で明らかにされています。ミサキが救命してくれたサオリに対してペシミスティックな主張をぶつけ、まだ精神的な強固さが十分でなかったサオリを傷つけてしまうという回想シーンもありました。4章序盤でプレイヤーがミサキに出会った際にも同様の振る舞いをしており、彼女はアリウススクワッドのサブリーダー的な立場ながら、サオリをかなり振り回し続けてきたことが伺えます。
 そんなミサキですが、作中でミカに対してかなり厳しい態度をとっています。ミカと対峙した際には「なんなのあの女」と吐き捨て、ミカが落ち着きを取り戻し、スクワッドに助力した際にも「自分勝手な女」と言い放ちました。事実ミカはブルーアーカイブ内では比較的珍しい、年相応の我儘さを隠さずに出しているキャラクターなので、自分勝手という評自体はそれほど間違ってはいません。しかし先述した通り、ミサキもサオリの存在をいいことに、自らの願望・欲望を満たそうとする自分勝手な行動をし続けてきたわけです。ベクトルは全く違えど彼女たちは二人とも自分勝手な少女で、つまりミカに対するミサキの態度は、ある種の同族嫌悪ともとれるのではないかと思います。
 そしてエピローグでは、サオリの性質についても描写がされています。全てが一応は終わったのち、サオリはヒヨリとアツコのことをミサキに託し、一人で新たな道を歩くという選択を取ります。その際にも、ミサキはもういないサオリに対して「勝手だよね」とぼやくのですが、先に記した通りサオリとミカには同一性があることが作中で示されています。そして、ミカとミサキの間に見出された「自分勝手」という共通項は、サオリとミカの共通項にもあたるように思います。本質的にはただの自分勝手な少女であったにも関わらず、ベアトリーチェによって余りにも多くのものを背負わされ、抑圧され続けてきたサオリは、きっと彼女の生涯で初めての自分勝手を、同じく自分勝手「だった」ミサキへとぶつけたわけです。4章はこのように、自分勝手な少女たちの模様を描く物語だったのではないでしょうか。

 なお、ミサキを自分勝手「だった」としたのは、ミサキはここから先、もう自分勝手ではいられなくなっているためです。勝手だよねとぼやいた後のミサキ自身が吐露しているのですが、サオリがこれまで背負ってきたもののうち、スクワッドのメンバーの存在はおそらく最も重いものです。そのような重すぎるものを託されたのですから、もはや自死などしていられません。サオリは最後に凄まじい楔を打ち込むことで、ミサキの癖を、希死念慮を、自分勝手さを消滅させたわけです。サオリはもうミサキの傍にはいませんが、これより後の生涯のミサキ全てを一手で救ったわけです。流石にミカほどのフィーチャーはされていませんが、ミサキもまた、エデン条約篇における重要なファクターだと思います。少なくとも、サオリにとっては最も信頼のおける、そして大切な存在のはずです。自分の一番大事なものたちを託したわけですからね。
 個人ストーリーでは「みんなを守る役目がある」と、自分勝手さの代わりに責任感を抱いた、まるでサオリのようなミサキが現れます。ガチャというゲームシステムに阻害されてしまうとは思いますが、機会があれば是非そちらも読んでいただきたいものです。アズサ同様、サオリとミサキにもまたどこかで出会ってほしいですね。

 以上、つらつらと感想文をしたためました。何か明確に間違っている部分があれば適当に指摘していただければ適当に加筆修正します。


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