ゆっくり文庫の原作を読もう&観よう「犬神家の一族」

ゆっくり文庫原作履修シリーズ第2弾。2023年11月24日(金)までYoutubeで1976年の市川崑版を無料公開中の「犬神家の一族」です!

1976年市川崑版は10年くらい前に1度見ていたんですがだいぶ内容を忘れていたので、再度見る機会を持ててよかったです。
ゆっくり文庫版はかなり市川崑版からも要素を引っ張ってきてると確認できました。

原作小説の感想

原作小説を読んでまずびっくりしたのは、野々宮が男色家であることが序章で触れられていたことですね。中盤以降の重大情報だと思っていたんですが、まさかの先出し。
これのおかげで、人によっては珠世=佐兵衛の孫が予想できなくはないラインになっているのが面白い。

三姉妹が青沼親子に暴行を加えるシーンは想像以上にひどくてしばらく脳内につくられた情景が焼き付いてしまいました。金田一が「三姉妹の中で一番底意地が悪そう」と見立てていた梅子のヤバさがここでくっきりわかるのもいい。(というか竹子の語り口的に、梅子の残忍さに姉ふたりはときどき引いてたんだろうなって・・・)

佐兵衛最大の秘密である「珠世は佐兵衛の孫」ですが、小説だとなんと大山神官が大勢の前で暴露するという大暴挙に出ます。静馬も聞いたので彼は珠世が姪であることを知ってしまいました。
血縁関係を知った時点で静馬がとれる選択肢は①叔父と姪であることを承知で結婚する②珠世を殺して佐清の分の相続を受け取る、のどちらかしかなく、どちらも珠世を不幸にしてしまう。詰んでる。かわいそう。
1976年版の大山神官はちゃんとプライバシーを守っていたいい神官でしたね…。(最近のNHK版の大山神官はあんまりデリカシーなさそうで、原作再現度たけーなとこっそり思っていました)

角川シネマコレクション 【本編】『犬神家の一族』1976年公開

小説版だと松子夫人は遺言の内容を若林経由で知ったあとに珠世殺害未遂を起こしています。松子いわく冷静じゃなかったとのことなんですが、さすがにそれはアホすぎでしょという違和感は残りました。
ゆっくり文庫版ではここの違和感も解消されてますね。


市川崑版(1976)の感想

とりあえず珠世役の島田陽子さんと、はるちゃん役の坂口良子の顔面が強すぎませんか!?5分に1回「うわっ綺麗!」「うわっかわいい!」「ひぇっ美しい!」「めっちゃかわいい~!」になるので情緒が忙しい。
手形あわせのときとかの、大きく澄んだ瞳の力がすごかった…。声もいいんですよね。美女の声がする。
はるちゃんはひたすらかわいい。そんなことよりおうどん食べなさい食べなさい。

全体的にはホラー・スリルを与えることを優先して作っているのかなと感じました。ふすまが倒れてくるシーンとか、佐武の死体浮き上がりシーンとか、長めに尺をとった斧振り下ろしとか。
その分、静馬の身バレが早めだったり謎解きが分割されていたりと、ミステリ成分は若干減っている印象。

橘所長の「よし、わかったぁ!」はコメディリリーフとしてめっちゃ良いのとともに、『新しく出てきた情報に短絡的に飛びついた場合にでる結論』を見せることで観客に頭の整理をさせる効果もあるのがうまい。

角川シネマコレクション 【本編】『犬神家の一族』1976年公開

三姉妹が服装でもキャラ付けできるのは映像化の良いとこですよね~。梅子さん推しなので彼女の服装をついつい見ちゃったんですが、赤系や強めの色の服装を好み、和服の時は姉たちより襟をゆったりめに着付けている(肌を見せている面積が大きい)。
橘所長とのやり取りでも見えますが、彼女は三姉妹の中でも「女」を出していくスタイルなんだなあという印象。
(梅子役の草笛光子さん、たくさん金田一シリーズ出てるんですね)

あと、三姉妹みんな高そうな帯つけてんなあ~と思いましたね。眼福。
日が変わると服装がちゃんと変わっていて、時間経過をわかりやすくするとともに視覚的にも楽しめてうれしいです。

遺言状公開のシーンが面白いのはもちろんなんですが、直後に竹子・梅子両家が集まって半作戦会議をしてるのが怖かったです…。本来同じ立場にあるはずの松子が、佐清への疑いゆえにハブにされてるのが生々しい。
というか真っ先に「珠世が死んだら分配はこれくらいの額よ」って竹子に情報共有し、「珠世も静馬も人の恨みで死ねばいいんだわ」って吐き捨てる梅子怖いですよね。人死にを前提にした皮算用をしないで。

別れを告げに来た佐清にすがりつく珠世が切なくてすっごい良かった。原作でも佐清を前にすると冷静さが消し飛ぶ珠世がすごく魅力的なんですが、映像だったらああやって直接的に描いちゃえばいいんですよね。あれがあるからラストの「お待ちします」でほっとする。


(読んでた時の実況ツイートまとめはここ)


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