NAFTAについて

これも学生の頃の資料ですねえ。なんか頑張って調べてデータベースからグラフまで書いたんだけど、知識がほとんどない自分なりの分析で、どうなのかなあといったところ。

1 国際経済の枠組み
第一次世界大戦以前は金本位制であり,自由貿易の利点 が国際的に享受できる経済体制だと思われていた.しかし, 金本位制が崩壊したあと,金本位制の崩壊から主要国はブロック経済を形成して孤立していった.そのブロック経済 が戦争の一因となったとも言われている.第二次世界大戦後 は戦前のブロック経済の反省を踏まえ国際経済秩序の再建 が図られ,1948 年に貿易と関税に関する一般協定 (General Agreement on Tariffs and Trade,GATT),1947 年に国際通 貨基金 (International Monetary Fund,IMF) という 2 つの 制度ができた.
GATT は自由貿易を促進するための制度であり,関税や輸 入制限措置の撤廃を多国間で協議する場を設定し,着実な成果 を上げてきた.しかし,1980 年代になると経済摩擦が激化す る中で GATT が形骸化しかねない情勢となった.その結果, 1986 年に世界貿易機関 (World Trade Organization WTO) に移行した.
WTO では国際間での話し合いが持たれてきた.しかし, 政治的な背景を考慮しない公平な国際ルールを定める方 針であるため,交渉が決裂することもあり,自由貿易協定 (Free Trade Agreement; FTA) や 経 済 連 携 協 定 (Economic Partnership Agreement; EPA) がそれを補完する形で機能 している.WTO は世界全体の中での枠組みであるのに対し て,2 国間,多国間で協定を結び,自由貿易を促進している. FTA は関税を減らしたり撤廃することが目的であるのに対 して EPA は投資や就労に関するルールや資金や知的財産権 についての保護など経済に関わる幅広い分野での取り決めが 目的となっている.二国間・多国間の FTA や EPA は WTO の規定に反するものではないが,多用すると WTO を侵食し 兼ねないとの指摘もある.

2 地域経済統合
同一のルールの下で無差別に自由貿易を拡大していこう とする IMF-GATT 体制のグローバリズムに対して地域的な 自由貿易圏の創設を目指す地域主義の動きが活発化してい る.ヨーロッパでは経済統合を目指す欧州共同体 (European Communities ;EC) が市場統一を進め単一市場を発展させて いった.1993 年には欧州連語 (European Union ;EU) が発 足し,1993 年には共通通貨ユーロが導入された.北米では 1994 年にアメリカとカナダの自由貿易協定にメキシコが加 わって,北米自由貿易協定 (American Free Trade Agree- ment ;NAFTA) が発足した.また,1995 年には南米南部共 同市場 (メルコスール) が発足した.アジアでも 1967 年に東 南アジア諸国連合 (ASEAN) が結成され,その後 ASEAN 自 由貿易協定 (AFTA) が合意されている.1989 年にはオーストラリアなどの太平洋沿岸の国々がアジア太平洋経済協力機 構 (APEC) を結成した.

3 メキシコ経済
メキシコはこれまで,82 年の債務危機と 94 年の通貨危機 によって 2 度も経済破綻をしている.70 年代,メキシコは 石油資源を背景に石油開発と工業化を推し進め,海外の金融 機関から多額の外貨資金を借り入れていた.しかし,80 年 代に入ってからは過剰な対外債務を抱え込むようになってし まった.米国金利が急上昇したことで対外債務の支払負担が 急増し,それに加えて原油価格下落も影響しメキシコの債務 返済が難しくなった.メキシコを始めとする中南米諸国だけ でなく,ポーランド,ハンガリーなどの一部の東欧諸国も累 積債務問題によって経済破綻に直面していた.これが国際的 な金融危機に発展する恐れがあったため,IMF や米国財務 省,国際金融機関などが支援行った.この一連の政策はワシ ントン・コンセンサスと呼ばれている.85 年にはベーカー・ プラン,87 年にはメニュー・アプローチ,1989 年にはブレ ディ・プランが米国側から提案され,リスケジュール (債務 返済を繰り延べ) や追加融資を行う代わりに,債務国に国際 収支の改善,財政支出の削減,経済の市場化,貿易の自由化, 政府部門の削減などを要求した.ワシントン・コンセンサス はワシントンにある国際経済研究所のジョン・ウィリアムソ ンが使用した言葉で,広く新自由主義的,“平面の象徴として 様々な場面で使われている.多くの批判があったものの,メ キシコに関しては IMF が再建に乗り出して成功した事例で ある.これら一連の政策の特徴は次のように整理されている

1. 財政規律 地方自治体,国営企業,中央銀行等を含めて算出され た財政赤字を十分小さくすること.
2. 公共支出の優先度 高い収益や,所得配分を改善させるための公的支出を 増やす.
3. 税制改革 課税対象を広げ限界税率を低くする.
4. 金融の自由化
5. 為替レート
単一為替レートを必要とする
6. 貿易の自由化
貿易の数量制限を関税に移行する
7. 海外直接投資
外国企業の参入を妨げる障壁は廃止する
8. 民営化
9. 規制緩和
政府は, 企業の新規参入を妨げ, あるいは競争を制限する規制を廃止する
10. 財産権

4 メキシコ経済の変化
メキシコでは 1982 年に IMF や米国財務省,国際金融機関 の救済措置を受け入れたという経緯がある.救済の条件とし て厳格な返済義務とともに,農業などへの補助金カットなど の緊縮財政や公的企業の民営化,貿易と直接投資を阻む障壁 の撤廃,内外企業の無差別的な取り扱いなど,幅広い市場化 改革を課せらてきた.そのため,石油開発を中心とした工業 化 (輸入代替工業化) から輸出振興型市場化へと方針を変更 した.
94 年の NAFTA の発行後は再び経済が悪化し 82 年と同様 の債務危機に陥った.そのため,IMF や世銀,米国財務省等 による救済額が 82 年 870 億ドルから倍近くの 1700 億ドルに 増加した.その救済策の条件として,より一層の緊縮財政と 徹底的な自由化改革を実施した.そのため,結果として失業 者は増え GDP が減少した.メキシコの実質 GDP を図 1 に 示す.83 年,86 年,95 年,08 年に一時的に落ち込んでいる ものの,80 年代後半から順調に成長していることがわかる.

5 産業構造の変化

2004 年に,NAFTA が 10 周年を迎えた節目の年で あるということで,世界銀行が報告書,NAFTA の教訓 (LessonsfromNAFATA) を公表している.世界銀行は NAFTA 加入によるメキシコ農業への大打撃を回避できた主 な理由には PROCAMPO(Programa de Apoyos Directos al Campo) の成功によるものがあったと分析している.PROCAMPO は伝統的な国内消費向けの作物から,輸出競争力のあるメキ シコ農産品 (果物・野菜) への転換をスムーズにもたらせたと 指摘されている.
5.1 NAFTA までの農業
メキシコでは 30 年代以降,都市化が進む一方,都市部では 慢性的な食糧不足が起きていた.そのため輸入農産物への高 関税など積極的な農業への保護政策を採った.40 年代からは 自給自足が出来るようになり,輸出の実績もあった.
5.2 農業への影響
メキシコが取り組んだ NAFTA 後の大胆な市場化改革の中 でも特に農業分野については,農業への財政支出の大幅カッ ト,規模拡大と企業の参入を促す農地改革 (メキシコ革命以 来の伝統である共同体農場エヒードの解体),従来の農産物の 価格支持政策から直接支払いへの転換,高関税や輸入許可制 等の国境措置の撤廃などがある.これは NAFTA 以前までの 農業政策を否定するもので,灌漑施設や農業研究,普及,農村 金融支援等は大幅に削減され,農産品の保証価格の引下げや 撤廃など全面的に見直された。国営食糧公社 (CONASUPO) による補助金も大幅に減らした.背景には生産者補助金額が 非常に大きな額となっていたことが挙げられる.直接支払政 策 (PROCAMPO) のは特定品目の生産量ではなく,耕作し ている農産物の面積に応じて, 単位面積当たり一定の基準額
メキシコの実質 GDP(IMF,World Economic Out-
メキシコとアメリカにおける失業率の推移を図 2 に示す. メキシコでは 83 年,95 年,08 年に失業率が急激に増加して いることが見て取れる.実質 GDP と失業率は,それぞれ, 債務危機,通貨危機,リーマンショックが大きく影響してい るように見える.をかけて補助金額を生産者に直接に支払うものである.結果 的に大規模農家に偏った.
5.3 経済
石油輸出,自動車・自動車部品輸出が大きな割合を占める. NAFTA 以降増えた在米移民労働者の家族送金なども無視で きない.
5.4 NAFTA 後のメキシコ農業
メキシコは NAFTA への参加によって市場化改革を行っ た.その結果として穀物の輸入が急増したものの,農業の基 盤は維持され続けた.特にトマトの輸出が拡大し,主食のト ウモロコシも増産することができた.これは大規模生産者へ 有利だったから?零細農家は移民としてアメリカへ流出した が,人口の 10% にもなる規模だった.寡占的状態が形成され やすいとも指摘されている.

6 TPP と農業
NAFTA は二つの先進国と一つの途上国を対等に扱う最初 の協定であり,貿易と投資の全面的自由化に関わる最も広 範な地域間協定である.そのため TPP に最も近い形態の協 定であると見られている.TPP に参加する際に最も壁とな るのが農業である.日本は FTA の締結より EPA での締結 の方が楽だと言われている.技術力のある先進国とは結び にくく,農産品の関税の代わりに技術援助などで代用してい るからである.海外取引の多い日本は有利になるが,現状で 食料自給率が 40% 程度であることに加えて,価格の安い農 産物の輸入によって農業への打撃を受けるという問題があ る.NAFTA への加盟の際にはメキシコでは輸出競争力のあ るメキシコ農産品への転換に成功し,トマトなど労働集約的 農産物の輸出はむしろ拡大した.主食であるトウモロコシな ども大きな打撃を受けることはなかった.一方,日本ではま とまった土地がないことなどから,土地を集約するのが難し いという問題がある.よって,メキシコのように機械化や大 規模農家への支持政策という手段のみでこの問題を解決する ことは難しいと考えられる.作物や農法の個別化をはかった り,生産加工,流通の一体化などの工夫をするなども当然必 要となると思われる.また,農業には多面的な機能を果たす 役割があり,土壌,環境や景観を保全するという側面からも 問題が指摘されている.
7 幸福を考える経済額
幸福について考えるとき,効用という概念が重要となる. 効用は,財を消費したときの満足度のことである.財の消費 が増えるにつれて効用が減っていくことを指摘した限界効用 逓減の法則が有名である.これまでは効用は測定不可能とさ
れていた.しかし,幸福を測る方法や効用をあくまでも主観 的な指標として経済学の分野で扱っている人たちもいる.幸 福は哲学の研究テーマで,実証実験は心理学の分野で行われ てきた.しかし,近年では社会学や政治学でも研究が行われ ている.経済学に心理学的な研究が結合したのは最近のこと である.1990 年代後半からからは経済学で様々な国と期間 について幸福の決定要因に関する実証分析が盛んに行われ るようになった.幸福度研究の専門ジャーナル「Journal of gappiness studiesGame」も有名.標準的な行動経済学など では個人が行った選択を観察するという客観主義的な立場を 取っている.その場合,個人の効用は有形の財・サービスと 余暇のみに依存することになる.そのため非科学的であると 扱われている.選択から推論される効用を決定効用と呼んで いる.個人の効用だけでなく,社会構成を測定する際にも用 いられる.経済学ではこの実証主義的な立場がほとんどであ る.しかし,標準的な経済理論が用いるアプローチでは人間 の幸福への理解や影響力を大幅に制限すると指摘し,客観主 義的でない理論分析も行われている.主観的なアプローチは カーネマンが提案し決定効用ではなく経験効用を重視してい る.経験効用を自己申告による主観的な幸福によって測り, 決定効用の代理とすることについては研究上の疑問は多い. 効用について主観的に捉えるとき,それぞれ幸福について自 分自身の考えを持っていることから,観察された行動を個人 の幸福をはかるには不完全な指標であるという立場に立って いる.具体的には生活満足に関する全般的な評価を直接人々 に尋ねる方法,経験抽出法,1 日再現法,U 指数など複数の 方法がある.また方向性の異なるアプローチとして社会的生 産関数 (集計的生産関数??) を用いたものが挙げられる.ミク ロ計量経済学による幸福関数を用いる.
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参考文献
[1] ブルーノ・S・フライ (著), 白石小百合 (訳),“幸福度を はかる経済学”,NTT 出版
[2] 坪井賢一,“めちゃくちゃわかるよ! 経済学”, ダイヤモン ド社
[3] “TV&新聞&ネットで目にする経済の疑問”,21 世紀ビ ジョンの会
[4] “リーマンショック後のメキシコ経済”, 海外研究員レ ポート,IDE-JETRO
[5] 阮蔚,“NAFTA 発効後のメキシコ農業-大規模農家に傾 斜した農業支持と小農の移民流出-”
[6] 田中高,“NAFTA10 年間による、メキシコ農業の構造変 化について”
[7] 谷洋之,“メキシコにおけるトマト生産”
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