Ver17 ボディ補強とは宗教ないし宗派だ

GT-Rをチューニングして、高速領域に入るようになると、自然とロールケージの必要性を感じるでしょう。クラッシュして横転したら天井なんて一発で潰れてしまうからである。

そのロールケージも、ボディ補強のひとつ。この他にも補強方法は沢山ある。ドアやトランクなどの開口部のスポット溶接を追加するスポット増し。フレーム内にウレタンを充填して硬化させる内部補強型。フロアのトンネルを繋いだり、タワーバーで左右のサスペンションの根元を繋ぐ棒追加型。ロールケージも室内のみで施工すると6点に斜行バーを幾つか追加できるが、さらにエンジンルームまで貫通させてストラットタワーなどを繋ぐとより強固なものに出来る。レーシングカー方式だと各ピラーに直溶接してある。

こういったボディ補強は、乗員を守るという目的の他に、たわみを防ぎコントロールを容易にすることにある。…と言われている。

確かに10万キロ走行の32に乗った後で、34の新車に乗った時、フロアからフロントのストラットまでブレがないなと感じた。サスペンションがキレイに動いていて、ボディが動かないなと。段差を超えた際に内装のきしみ音もない。

さらに驚いたのは、群馬のキャロッセでほぼホワイトボディの32にレース仕様のロールケージを溶接留めしている車両に乗った時だ。恐らくフルスポット増し、全てのロールケージがピラーに線ないし面溶接状態。足回りとブッシュは強化品で、組み終わった直後のおろし立てだ。クラッチがピーキーで繋ぎにくくて発進がやっかいだった。最初にパーキングから車道に降りる際に、歩道との段差3センチくらいのところだろうか、ここを前輪が降りた際に「な、なんだこれはー!」と太陽に吠えろ状態になってしまったのだ(笑)。これは笑い事ではなくて事実! シートとステアリングから伝わってくる車両側のインフォメーションが、びた一文ぶれない。フレームが1㎜も動かずにバネだけが伸び縮みしていえる感覚だったのだ…。「こ、これがボディを固めるということか…」と衝撃で全身が汗でじっとり湿ったのを覚えている。

ここまで固めれば、サスペンションの味付けが100%反映されるだろうし、狙ったラインをトレースするのも容易だろう。しかし、ここまで固めるのは簡単ではないし費用も膨大にかかる。個人的にはボディがよれるならよれるで、それを計算したセッティングや運転をすればいいのではないかな?と思っている。ロールした際にボディがたわんで外側のグリップが逃げるのなら、サスが縮んだときにキャンバーが切れるようにしたらいい。ハンドリングよりラインが膨らむのであれば、もう3㎜内側にステアリングを切ってやればいい。35のことを思えば、固めた34だってトラクション逃げまくりでブレーキング中の姿勢だった暴れまくりなのだ。だったら、固めるというチューニングにコストや労力を振る必要があるのかな…と。そこで実際タイムがどれくらい縮むのかな…というのが自分の考え方だ。またロールケージ溶接留めや棒追加系を施工すると重量が増えるというデメリットも生じてしまう。個人的には、補強自体はダイレクトに速くならないから好みではない。

実際、32のフロントだけジャッキアップして、ドアの開閉をしてみたのだが、全然引っかかることなくスムースに閉まった。これはよく言われる、ボディが緩んでいると「ジャッキアップするとボディがたわんで、ドアが閉まらなくなる」という都市伝説なのだが、そうそうドアが閉まらない車両にはおめにかかれない。自分の32は事故歴アリでフレーム修正をかけているので、余計に弱っているはずだが、ドアはしっかり開閉できた。

また固めたボディは、次に緩むとボディが終わってしまう。もうやりようがない…というのも言われている。これも都市伝説の域を出ないけれど、注入したウレタンが劣化して粉になったら確かに終わり。溶接した箇所ももう増やせない。

ボディ補強は、やった方がいいと思う人はやればいいし、やらなくても平気だと思う人はやらなくても十分に楽しめると思う。



かつて自分の血を沸騰させたスポーツカーと界隈の人間。その思い出を共有していただきたい、知らない方に伝えたいと、頑張って書いております。ご支援いただければ幸いです。