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津南町の大名かつ丼 だからや

津南のたからやは大名カツ丼が有名だ。

使い込まれた塗りのお椀の蓋をとると、白身多めなカツ丼が現れる。
しかし、白身だと落胆してはいけない。
越後の大名と名乗るほど、そのどんぶりの中身は計算され尽くされている。

下のご飯は鰻のタレと間違えるほどの甘いコッテリなタレご飯で、その上に半熟な黄身とよく煮込まれた玉ねぎとカツが乗っていて、最後に白身が程よい固さで丼を覆っているのだ。

雪国津南町の名物として恥じる事のない、雪のような卵の白身。
そして大名を名乗るに相応しい大きなトンカツと、大名の隠し黄金をイメージしたであろう黄金色に輝く半熟な黄身。

カツ丼が好きなメタボのために、タンパク質の白身を先に摂取させ、カロリーの吸収を抑えてから、カツ丼の真髄、トロトロ卵とカツ部分を食べるよう、店主の緻密な計算が隠されている。
やはり店主は知っているのだ。
「太る人は太るものが好き」と、、、

写真の上には、絶好調に太った渡辺徹(郁恵ちゃんの夫)とマスターと家族の集合写真が見受けられる。
1998年9月15日。二十数年前。
彼はここにいた。

彼をここまで太鼓腹にしたものは、カツ丼ではなかったかもしれない。
しかし、彼の高カロリー舌を唸らせ、記念撮影に応じた心は、私がカツ丼界の大名と呼ぶ事を許した今の私と同じ気持ちだと確信している。

一時期、グルメを追い求める私は数々の名店の暖簾をくぐった。
満足する店には必ず「でぶや」のステッカーが、貼ってあった。

最近は石ちゃんやパパイヤの姿も見かけなくなって、でぶやかぶりの呪縛から逃れたと思ったが、今、目の前にはラガーと呼ばれ、アーモンドチョコを背負ってたち、大正漢方胃腸薬が必要だった彼が!!

静かに微笑んでいる。

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