【修正版】声劇用台本 1 ちょい猟奇的なメロドラマ
はれのそらです。今回、以前個人的な理由で書いてみた声劇用台本を投稿します。(諸事情で公開は今になりました)
何分、始めて書いた脚本(台本)なので、修正点など教えてもらえると嬉しいです。(TwitterのDMの方にお願いします)
この作品書き上げるのに、めっちゃ苦労した思い出があるのでよろしくお願いします。
尚、この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
追記 内容や形式を全面修正しました。
監修者
でんじぃさん(神がかってる!!)
規約
登場人物
女(後半にモノローグの読み上げがあります。変更もありです)
男
本編
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A市内 築25年の賃貸マンション。
烏のやかましい声が、締め切った窓ガラス越しから漏れ聞こえる。梅雨入り前の、生温い風がじっとりと肌をぬぐう。2人では住むのには広々した、家内の居間のテーブルに男が突っ伏している。口は固く閉じられ、死んでいる。
女
「……うん。アイツがカプセル飲んで、この時間ならもう死んでるはず」
「……変。もう汚れていない手なんて洗ったって、どうしようもないのに……ふふっ、不思議」
「PCの中に遺書なんて書いて……喋ってないとダメみたい。まるで、軽口しか言わないアイツみたい。多分、アイツならうんうんって言ってくれたんだろうな。にしても、テトロドキシンってこんな効くんだ……抽出して、アイツがいつも飲んでるサプリメントと一緒の奴に混ぜたんだけど……」
「フグ、もったいないって思うけど……」
「アイツ……トラ柄の帽子被って、顔ぷくぷくさせて、トラフグって寒すぎることしてたっけ。トラフグってなに、毛深そうでおいしくなさそう」
「……ハリセンボン!!」
「うちの中華料理屋に、フグなんて取り扱わないだろ、父さん」
「だから、角野卓造じゃねーよ!」
「渡る世間か」
「世渡り下手だったのは、お前だろ!」
「はぁ……あたし、なにやってんだろ。一人で漫才なんて……もうツッコんでくれる人なんていないのに……男……突っ込む。あ、うまい。……はは」
「まだ、温かい。……もう死んでるんだ……」
「ん?」
「口の中……になにか……がっちり閉じてる」
「!!……何か入っている??」
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数時間前
男
「……ふぅ...。まだ、時間はあるか」
「……へ、なんの因果か、まさか自分がこういう選択をするなんてな。西から昇った太陽が東へrunaway」
「はぁ……いつもなら、アイツから覚めた目で見られて……いや、でもいつもと変わらないように呆れられるだけだ」
「……くそっ。」
「アイツ、俺のアソコを、……はらぺこあおむしみたいって!!っくそったれ!」
「ククッ、まあ俺はドロドロした奴だからな……。ちゃんと成長するからな……そろそろ、アイツが仕込んだ眠剤が効いてきたか……じゃあな……うん?」
「これは……俺の口の中……に」
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再び 現在
女
「ちっ!」
「この中に何か入ってる……もし、ダイイングメッセージのようなものが入っていたら……
いや、睡眠薬入りのペットボトルで飲んでいるはずだから、普通だったら証拠なんて残さないけど……」
「どうしよう、どうしよう……はぁ、なんだろう、口の中が乾いて苦い……うん、仕方ない、計画を変更しよう。バラバラにするしかない。最後まで手間がかかるんだから」
「うっ!重い。とてもじゃないけど、運べない!……もうっ、この前ダイエット成功したって言ってたじゃない」
「ふぅ……運べない……。なら、ここである程度切っていかないと。……でもこの口の中、気になる……。ここでまず見てから、切ることにしよう」
「はぁはぁ……ペンチで歯をへし折るなんて、歯医者さんでもやらないわよ、うぐっ。血が生温い……」
「あれ?これ見覚えがある、ちょっと拭いてみよう」
「これ……私のブローチだ。一番大切にしてたけど、失くしていた……蝶のブローチ……あ、そういえば前にこんな事が」
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回想
寝室。
男女が枕元で話す。
「ねえ、あんたは今ドロドロなのよ」
「は?」
「中身がドロドロしてるって事……まるで昆虫のさなぎみたいに」
「え?さなぎって、なんというか形が作られていたような」
「いや、ドロドロとしていて、成虫でもないの。想像すると、正直きもいけど」
「おい」
「だから、さなぎの段階って、とてもデリケートで危なっかしい分、色鮮やかな羽を広げて、成虫は外へ飛び出していくの……自信を持って。前だけを向いて」
「……」
「ねえ、だから……羽ばたくの。澄み渡るような、青い空に向かって」
「……無理だよ」
「え?あんたなら、できるって」
「無理だよ……」
「また無理って!」
「……一人でならね。片方ではできないけど……(男は自身の左肩をさする)……2人なら飛べるさ」
「……」(男は女の右肩をさする。右肩には鮮やかな蝶の入れ墨があり、女は潤んだ目で黙っている)
「……だろ?」
「んな訳ないじゃん。私は勝手に飛んじゃうって……あんたからプレゼントされたこのブローチでね」
「んな!?」
「ふふ」
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再び 現在
女M
「甘えられなかった。
好きって言って欲しかった。
褒めても欲しかった。
私の事を。もっと、もっと。
強いフリをして。
大丈夫って。
ヘラヘラ笑って。
心の奥底で。
泣いていた私を。
弱い私の心を。
勘違いされても。
違うといえなかった。
悲しいくらい強がって。
飲んだ酒の中に、涙を隠して。
気持ちの悪いくらい。
深く深く。
水底に沈むくらい。
優しくして。
誰にも見つからない秘密の場所へ。
隠して。隠して。
あなただけの私にして。
どろどろに求めて。求められて。
不安な私を。
ゆっくりと、すっぽりと。
ここは無事なんだと。
抱きしめて欲しかった。
望んでいたのは。
お金でもなく、自由でもなく。
あなた。
最愛の恋人にすら、甘えられなかった。
お酒で忘れたくなるくらい。
気だけは大きくなった気がした。
小さな、とても小さな。
そんな私を。
声が聞こえなくなるまで。
目が見えなくなるまで。
意識が途切れるまで。
命が尽きるまで。
その身が朽ちるまで。
存在がなくなるまで。
愛して。
愛して。
ただ、私を。
もう一人にしないで。
ただ、あなたを。
もう一人にしないから。
迎えにいくから。
だからお願い。
愛して。」(トンと、胸を叩く音が静まり返った室内に響く)
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現在
「もう一つ使うことになるとはね。そう……一人なら。……もう、一人じゃない。もう私達は解放されてる……。ぐふっ。もうここにはいない」
女は男の傍らに寄り添っている。
左手には、血で染まった蝶のブローチ。
右肩にある、蝶の入れ墨が血に混じっている。
女は静かに微笑んだ。
(了)