正論

ここ数年正論が持て囃されていると言われ始めてからも数年経った。
僕も正論は好きだと思う。見ていてスカッとするかとかはどうでも良くて、正論とはまさに「正しい論」なのだから。正論が嫌いな人は自分の欠点とかを指摘されてる人だろう。あとは、臭いものには蓋をする精神の人。でも、正論はトゲを持つこともあるし、正しい事を直接的に言うのだからある程度のキズは負う事になるだろうし、言う側にも聞く側にもその覚悟も必要だと思う。

正論は嫌いじゃないけど、それはあくまで「論」が嫌いじゃないというだけだ。僕は最近、ワイドショーをほとんど見なくなった。朝も昼も、前は食事中にやっていたらワイドショーを見ていた。僕がワイドショーを見なくなった理由は、正論言ってますよって顔をするコメンテーターが嫌いだから。正しい事を言えばいいんでしょ?とか、私はこう思ってますけど、何か?みたいな雰囲気がプンプンしてくる。正論を言う時に必要な覚悟や配慮が微塵も感じられない。この人は正論を言う人気コメンテーターだとか、この人は若者ならではの視点でズバズバ正論を言うから、ワイドショーに引っ張りだこだとか、ネットニュースで見る。気持ち悪い以外の感情を抱かない。僕から見たら、配慮も常識も感じられない、人の事を慮る事の出来ない人間でしかない。そういう人を求める視聴者も、キャスティングする制作も、持ち上げるメディアも、みんな狂ってる。そして、こういう人に限って私正論言ってますよ、私何も間違ったこと言ってませんけど?みたいな顔をする。これも嫌い。どこにてめえの意見が100%正解であるという保証があるんだよ、てめえの判断の基礎になった情報に含まれてない重大な事柄は本当に無いのか?謙虚さが無い。

話は変わるが、最近気になっている芸能人がいる。ハライチの岩井勇気さんだ。彼も毒舌というか、正論を言う人に分類されるのだろう。だが、彼の正論には嫌味を感じない。覚悟を持って、空気を作って話す正論には文脈が生まれる。その文脈が、話す人間の本気度を見てる人に感じさせる。腐れ芸とか言われているが、僕にとっては空気を察して、自分の流れを作るのが一流の人というイメージだ。より正確に言うと、彼は正論というよりも問題点の本質を突く話をしているだけだ。正論と本質は若干だが、確かに違う。自分の空気を作って本質を話される、だから彼に問題を指摘された人間はキレる。だがそれすら彼の狙い通りで、彼はその覚悟を持って言っている。
だが、僕は若林さんの方が好きだ。これは発信の方法が違うからしょうがないのだが。若林さんは笑いを交えながら本質を突き、相手をハッとさせる。傷付けない。もちろん伝わらない人もいるだろうが、そんなバカは相手にしていない。
最初、この両者の違いは歳によるものかなと思った。でもそれは違う。前者は本気なのだ。誰にでも、どんな相手でも伝わるように本気でぶつかっているのだ。それに対して後者は、自分も相手も傷付けない変わりに伝わらない可能性も取る。だが、伝わらなかったらそれまでと諦める。そんな感じだろう。

僕は若林さんが好きだ。だが、それと同時に岩井さんを愛おしく思った。