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全然堂歳時記【夏】

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全然堂歳時記【夏】
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#夏の俳句

全然堂歳時記 夏【涼し2】

葉書俳句: テキスト: 神々の星座涼しく輝ける ハードエッジ 涼しさに住んでもみたき土星の輪 ハードエッジ 空を裂く大電流の涼しけれ ハードエッジ 大陸と海を隔てし国涼し ハードエッジ 天龍の川と化したる涼しさよ ハードエッジ 涼しさは水尾か水輪か漣か ハードエッジ ざつざつと水切る笊の涼しけれ ハードエッジ 丼は涼しと猫の子が眠る ハードエッジ 積み上げし積木涼しく崩れたり ハードエッジ 一字にて足る一、十、百、千、万涼し ハードエッジ かきとり帖おほきな枡の涼しさ

全然堂歳時記 夏 【蟬】

葉書俳句: テキスト: 夏や蟬老いてますます盛んなり ハードエッジ 鬱蒼と氏神様の蟬時雨 ハードエッジ お互ひを励ます如く蟬の声 ハードエッジ 蟬時雨ちがふ流派もうち混じり ハードエッジ 一族は茶の装束に蟬時雨 ハードエッジ 油蟬に油の艶はなかりけり ハードエッジ 蟬時雨より遁走の蟬ひとつ ハードエッジ 蟬のこゑ届かぬところまで泳ぐ ハードエッジ 体当りの愚かな蟬と思へども ハードエッジ 落蟬の鳴かず飛ばずを空に投ぐ ハードエッジ 水田に落ちて溺るる蟬もあらむ ハード

全然堂歳時記 夏 【蟬】ベータ版

テキスト: 鬱蒼と神社匂へり蟬時雨 ハードエッジ お互ひを励ます如く蟬の声 ハードエッジ 蝉鳴いて愉悦の末を仰向けに ハードエッジ 鳴きながら体当りして蝉果つる ハードエッジ われ先に死ぬ恍惚や蟬時雨 ハードエッジ 蟬時雨迫り来る死を忘れよと ハードエッジ 生きるべく死ぬべくひたに蟬時雨 ハードエッジ 夏や蝉老いてますます盛んなり ハードエッジ 鳴き尽すまではひたすら蟬時雨 ハードエッジ 懐しき地中の暗さ夜の蟬 ハードエッジ この蝉は雨に寿命を縮めしや ハードエッジ 蟬の

全然堂歳時記 夏 【蝸牛】

葉書俳句: テキスト: 暁闇の雨に目覚めし蝸牛 ハードエッジ 点々とでんでん虫のゐたりけり ハードエッジ 頭を上げて裳裾ゆたかに蝸牛 ハードエッジ 虹の輪に角を伸ばして蝸牛 ハードエッジ 渦巻の裏の単純かたつむり ハードエッジ ガラス戸にブロック塀にかたつむり ハードエッジ 硝子戸の絶壁を行く蝸牛 ハードエッジ 硝子戸のでんでん虫を裏見かな ハードエッジ かたつむり蛞蝓よりも子に好かる ハードエッジ 心臓は今も渦中に蝸牛 ハードエッジ 血の通ふ蝸牛の殻と聞かさるる 

全然堂歳時記 夏 【蟻2】ベータ版

テキスト: 朝の蟻すでに列なし働ける ハードエッジ 蟻歩むネオンの町の片隅を ハードエッジ 神仏の庭に働く朝の蟻 ハードエッジ 蟻の巣に昼寝の蟻はなかるべし ハードエッジ 遠足の如くに長し蟻の列 ハードエッジ 蟻一騎槍も持たずに彷徨へる ハードエッジ 蟻は地に蜘蛛は軒端に所を得 ハードエッジ 蟻黒し土や小石の色の上 ハードエッジ どこまでも連なる蟻の静けさよ ハードエッジ 静けさの集つて来し蟻の山 ハードエッジ 何事か蝶に呟く蟻の群 ハードエッジ 兵のごとく奴隷のごとく蟻

全然堂歳時記 夏 【茅の輪】ベータ版

新企画です 葉書俳句を伴った全然堂歳時記最終版は、 内容をあれこれ充実させたら、返って手間が増えて難航気味です 季節が代ってしまって、結局、翌年廻しにする案件も発生しています 次善策で、甘選バージョンをアップすることにしました とりあえず、最初の一歩を記録したので、弾みがつくのか、 それとも、 安心して後が続かなくなるのか、さて、、、 テキスト: 一年の半ばを潜る茅の輪かな ハードエッジ 茅の輪にも夜の帳の降さるる ハードエッジ 神主のこつこつ渡る茅の輪かな ハードエッ

全然堂歳時記 夏 【素麺】

素麺の入りし桐箱平べつた ハードエッジ 素麺に願ひの糸の如き赤 ハードエッジ 素麺に繙くといふ事始 ハードエッジ 素麺の湯を沸かしつつ胡瓜揉み ハードエッジ 素麺を翻弄すべき湯の滾り ハードエッジ 煮え滾る湯に素麺を突き立てて ハードエッジ 素麺を冷やす蛇口の露まみれ ハードエッジ 素麺を茹で上げる水冷ます水 ハードエッジ 素麺の細く長くと流れ来る ハードエッジ 印度人も素麺すする暑さかな ハードエッジ 素麺の細さを伊太利亜人が言ふ ハードエッジ 素

全然堂歳時記 夏 【薄暑】16句

葉書俳句: テキスト: 旅に良し家居また良し薄暑かな ハードエッジ 白雲の夜空に遊ぶ薄暑かな ハードエッジ 通り雨薄暑疑ひなかりけり ハードエッジ そよ風に吹かれ薄暑の旅へかな ハードエッジ 信号を軽く抜けたる薄暑かな ハードエッジ 旅ゆけば薄暑の町のベーカリー ハードエッジ 薄暑なり銀座へ出れば画廊あり ハードエッジ 軽暖のオープンカフェに人を待つ ハードエッジ 見て楽し薄暑の街の人通り ハードエッジ 軽暖の街に薄暑の人通り ハードエッジ 高校生に薄暑の町の狭さか

全然堂歳時記 夏 【若葉】20句

葉書俳句: テキスト: 若葉とは日に透きとほる薄みどり ハードエッジ 青春の光と影と若葉風 ハードエッジ 若葉して光合成の出番なり ハードエッジ 若葉していよよ小枝のゆれ止まず ハードエッジ 鳥の餌のこれつぽつちよ朝若葉 ハードエッジ 週明けの駅前若葉まぶしけれ ハードエッジ 良き風と若葉の道を共にして ハードエッジ 若葉して早も摘まるる茶の木かな ハードエッジ 黒き枝も見えて若葉の木なりけり ハードエッジ 若葉して滝の飛沫を弾くなり ハードエッジ 若葉して水の音さへ

全然堂歳時記 夏 【豆飯】

初夏の青を散らして豆ごはん ハードエッジ このごろの夕餉明るし豆ごはん ハードエッジ 赤飯は祝ぎ豆飯は睦まじく ハードエッジ 翌朝の分も炊きたる豆ごはん ハードエッジ 豆ごはん豆のごはんと口々に ハードエッジ 豆めしを炊きたる母も嬉しさう ハードエッジ うす塩の仄かに甘し豆ごはん ハードエッジ 目に見えぬ塩の恩寵豆御飯 ハードエッジ 食べられる水玉模様豆御飯 ハードエッジ 豆飯の豆の二つに割れたるも ハードエッジ 豆飯の豆の芯まで緑色 ハードエッジ 豆飯の豆の偏る一処

全然堂歳時記 夏 【梅雨3】20句

葉書俳句: テキスト: 傘の骨ぐいと曲げたる梅雨入かな ハードエッジ 梅雨空のグラデーションの濃きところ ハードエッジ 梅雨の日々梅雨曇りなる日を挟み ハードエッジ 時差呆けのやうな雲行く梅雨の日々 ハードエッジ 水嵩を楽しむ梅雨の大河なり ハードエッジ 雨の字の中も雨ふり梅雨つづく ハードエッジ 蝶ひらり梅雨の影なき世界へと ハードエッジ 梅雨深し昼は灯らぬネオン塔 ハードエッジ 梅雨深く書類に印を点じたる ハードエッジ 教室やあかあか梅雨の灯を点し ハードエッジ

全然堂歳時記 夏 【紫陽花】

3ヶ月ぶりの全然堂歳時記です 紫陽花が朝日のごとく卓の上 ハードエッジ 紫陽花や目に見えねども低気圧 ハードエッジ 紫陽花は気圧の谷に咲くといふ ハードエッジ 明け方の霧の中なる濃紫陽花 ハードエッジ 舟が消え湖が消え濃紫陽花 ハードエッジ 紫陽花にこの曇天のいつまでも ハードエッジ 紫陽花や砂利敷き詰めて変電所 ハードエッジ 紫陽花や雨戸を叩く雨の音 ハードエッジ 水を得ていま紫陽花の濃紫 ハードエッジ 紫陽花も金魚の墓も雨の中 ハードエッジ 紫陽花やズボンの裾がびし

全然堂歳時記 夏 【螢】20句

葉書俳句: テキスト: 螢火は螢の闇の中にこそ ハードエッジ 螢来よ小学校は真の闇 ハードエッジ 冠に二つ火のある螢かな ハードエッジ 螢火の飛んで光の速さかな ハードエッジ 螢火を裸火とこそ言ひつべし ハードエッジ 雨に来て葉先に滲む螢かな ハードエッジ その中に燻る螢ありにけり ハードエッジ なれそめの十五十六螢の夜 ハードエッジ 戦にも恋にも果つる螢かな ハードエッジ 降り出して恋の螢の行方かな ハードエッジ ほうたるの余命を刻む点滅ぞ ハードエッジ 晩年の光尊

全然堂歳時記 夏 【雲の峰】

葉書俳句: テキスト: 日本の海の守護神雲の峰 ハードエッジ ふるさとに入道雲のある限り ハードエッジ 峰雲の中で働く神仏 ハードエッジ また一人行者降りくる雲の峰 ハードエッジ 善は白、正義は力、雲の峰 ハードエッジ 虹よりも雷に親しき雲の峰 ハードエッジ 峰雲や数多の雷を産み捨てて ハードエッジ 閻魔への供物の如し雲の峰 ハードエッジ 太陽の彼方に続く雲の峰 ハードエッジ 雲の峰見ゆるオープンカフェ香る ハードエッジ 白飯はカレーに埋もれ雲の峰 ハードエッジ ベ