『月がきらいですね』【#テレ東ドラマシナリオ】【月がきれいですね】
「私のキライの意味がわかるあなたと、ずっと一緒にいたい」
(サキのナレーション)
◯路上
「別れよ、俺たち」
「え?どうして?」
「どうしてって......なんかサキってさ......重いんだよね」
「えっ......」
「一日一回結婚の話題出すし、子供は男の子と女の子どっちがいいかなって言われても......俺にだって自分のペースがあるからさ。」
「そっか......ごめんね」
「まぁサキはかわいいし、俺なんかよりいいやついるって」
「......そんなことないよ」
「幸せになれよな」
「............あんたなんか大っ嫌い!!!」
「え?.....」
サキは男に背を向けて歩いていく
◯居酒屋
ガヤガヤした飲み屋で友人・リカと対面
「で?何また別れ話?重いって言われたんでしょ?」
「うん......」
「あ〜あ、これで何度目?あ、すみません、ハイボール1つ。」
「3度目かな......」
「あっはっはっは!そっか、3度目の正直か。4度目もあるね、きっと。」
「リカのそういうところ、キライ」
「え?何?なんかいった?」
「なんでも!あ、この煮物美味しい.....私この味”スキ”かも」
パチンという音と共に、居酒屋にいる人たちが眠ったように崩れ落ちる
「え?何これ?」
日垣は椅子から立ち上がり、サキの方へ歩いていく
「おかしいですねぇ.....なぜあなたは”スキ”という言葉を知っているのか......」
「え、、、、だ、だれ!?」
「申し遅れました。私、世界救済機関、略して”WSO”の日垣と申します。お見知り置きを」
「WSO?......」
「我々はこの世から争いを一切なくすことで、平和な世界の実現を目指しています。その第一歩が、この世から”スキ”を消し去ることなのです!」
「ど、どういうことですか?」
「知りたいですか?ま、教えてあげませんけどね。」
リカの隣の席に座る日垣
「キライ......」
「あっはっはっは!!!」
「争いを無くしたいなら、”スキ”よりも、”キライ”を消した方がいいと思うんですけど.....」
「ちょっと今、海外の方でですね、”キライ”を消し去る許可が下りなくて.....」
「許可......。......あと、みんなはなんでこんな.....」
「ご心配なく。みんな眠っているだけですよ。無論、あなたの友人もね」
「一体どうやって......」
「それは”機関秘密”です」
「何それ......まぁ別に私は、”スキ”なんて通じなくても困らないですけど。」
「え?どうしてです?」
「私に好きな人なんていないからです」
「あれあれ。お友達は?ご家族は?......彼氏さんは?」
「うるさいなぁ.....みんな”キライ”なんです!!!!」
「そうですかそうですか.....ならいいです。もし”スキ”という言葉を言っても、あなた以外の
人には通じませんからね。つまり”スキ”の意味を知っているのは、あなただけなんです。」
「なにそれ......わけわかんない......」
サキは怒ったように立ち上がる
「もういくんですか?」
サキは一瞥して、荒々しく居酒屋を出ていく
◯居酒屋の外
サキ店の前でしゃがみこむ
「もう......なんなのよ一体......」
「あれ?サキか?」
大輔の声で顔をあげるサキ
「はい?......ゲッ大輔.....最悪......」
「そんなに嫌そうな顔すんなよ......一応幼馴染だろうが......」
「だってあんたのことキライなんだから、しょうがないでしょ......」
「はいはい......あれ?今日、全体的に化粧濃くね?」
「そういうところがキライだって言ってんの!」
「おーこわ。そういや、高一んとき同じクラスだった隆が、お前に会いたがってたぞ。」
「隆?」
「ほら川崎一帯の高校をシメてたやつだよ」
「あのヤンキー!なんで!?」
「高校時代、お前のことが気になってたんだと。一昨日、久しぶりにあいつと会ってさ」
「はぁ.......」
「じゃあまたな!」
「また、なんてないから!!!」
「この世から”スキ”が無くなっても、私は一向に構わない。だって私は、さっき振られたばかりの元彼も、ヤンキーの隆も、よくわかんないWSOの日垣さんとやらも、そして無神経な幼馴染の大輔も、みんなみんな”キライ”だから!」(主人公のナレーション)
つづく
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