少し顔を上げたら、自分が変わっていた話

道を歩いていると、大きな声がした。

「顔をっ、上げてっ、歩くーっっ!!!」

突然、なにごと、、、?
と思い、パッと顔を上げると、見知らぬおじいちゃんから言われた。

顔を上げた時に、そのおじいちゃんと目が合い、ニコッと微笑まれた。
その時、わたしに言ったんだと分かった。

ちょうど眩しくて、無意識のうちに下を見ながらで歩いていたのでろう。
前髪が伸びて、サングラスの役割をしてくれていた。

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私はファッションには、とても疎い方である。
大学生の頃は、とりあえずよくみるブランドの服(高いものではないが)を来ていれば間違いないと思っていた。
しかし、あまりのファッションセンスのなさに、ブランド服もお手上げだったらしい。
ブランド殺し」の異名で呼ばれることになる。

そんな私である。
美容室に行く理由は、
「髪が伸びて、自分の手には追えずウザいから」
だった。

大学を卒業して、就職しても、毎日同じポニーテール。
会社の仲のいい人たちからは、
「もう少し気を遣ってみたらいいのに 笑」
とよく言われていた。

そんな時、突然、当時付き合っていた彼氏からフラれた
彼氏は地元に残り、私は大学進学を機に上京。
移動時間で見ると、海外へ行くよりも遠い、遠距離恋愛だった。

めちゃくちゃ悔しくて、悔しくて、、
「地元に帰省したときに見返してやりたい」

思い立ったが吉日。
ブランド殺しでも、どうにか変えてくれそうな場所。

テレビで見た、おしゃれに興味のない人の見た目を大変身する番組が、ふっと頭に浮かんだ。

「表参道の美容室だ、、、」

上京して6年目。
初めて、OMOTESANDOUのオシャレ美容室に行くことを決意した。

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美容室に行くと必ず言われるセリフ第1位、
「どんな髪型にしますぅー?」が苦手だ。
こんな人みたいな髪型にしたいとか、目指す方向性とか、私には全くないからだ。
ハッキリ言って、聞きたいのはこっちのほうだ。

「そ、そうですねー、うーんと、、、
 うーんと、、、、、、
 うーーーん、、、、、、、、」

返答に困っていると、ヘアカタログを持ってきてくれるが、どれも同じようにしか見えず、違いがよく分からない。。。
髪型自体がかわいいのか、モデルさんがかわいいからかわいく見えるのか、さっぱり分からないのである。

次に、ヘアカラーのカタログを持ってきてくれる
どれも一緒の色にしか、、、以下略。

もう表参道のオシャレ美容室なんて来ることはないな、
えーい、恥のかき捨てだーいと思い、最初に白状した。

「すみません、ファッションとかほんとに興味なくて、よく分からないです、、、
あと、手入れとかもできる人間ではありません、、、
そんな人間でもどうにか東京を歩けるようにしてやってください、、。」

そして、分からないなりに、一生懸命伝えた。

「カットは、前髪は伸びても大丈夫な感じ、あとは良しなにしてください。
カラーは、明るすぎず暗すぎずで、でも色が変わったことがわかるようにしたいです。
パーマは、くるくるではなく、ふわふわが好きです。」

今思っても、注文が多い。
そのくせ、抽象的なお願いばかりで面倒な客だと思う。

しかし、担当の美容師さんは
「なるほどねー♪
じゃあ、かわいくしちゃいますね♪」

と一言。

え、、こんな感じのお願いできちんと伝わってるの、、、?
慣れない表参道、自分に似合わないオシャレ美容室、かわいい美容師さん。
かれこれ4時間くらい、緊張でずっとスマホを見ているしかできなかった。

「はーい、終わりましたよー♪」

顔を上げると、拙いお願いしかできなかったにも関わらず、
私の理想を叶えてくれていた
自分で言うのもなんだが、べ、べ、別人じゃんと思った。

それから、会う人会う人が、
「えっっっ、、、、いやー垢抜けたねー!
かわいくなっちゃって、一瞬誰だか分からなかったじゃん!!!」

と口を揃えて言っていた。
(中身は変わってないからしゃべるな、とも言われたけど。)


いろんな人から「垢抜けた、かわいくなった」と言ってもらえて(お世辞かもしれないけど)、ほんとに嬉しかった。

たくさん褒められると、少しだけ自分に自信を持てるようになった。
いつもより少し顔を上げて、胸を張って歩けていたんじゃないかと思う。

人は変わることも実感した。

ブランド殺しとまで呼ばれた私が、
どんな着こなしが流行っていて、今年の流行の色はなに色で、季節感のある、私らしいオシャレについて調べて、考えるまでになった。

人に褒められるオシャレするのも楽しい。
それで、自分のテンションも上がるなら万々歳。

人は外見じゃない。大切なのは中身。

でも、誰かにかわいいって思われるために、
そして、自分の俯き気味の顔をすこし上げて歩くために、
私はまた、あのオシャレ美容室に行くんだろうな。

#私が美容室に行く理由 #ぶんしょう舎