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わたしは幻のコロナ感染者だった

新型コロナウイルスに感染してから早いもので一月半。息苦しさなどの後遺症もすっかり消えてコロナの怖さも薄れはじめた頃です。会社から、加入している生命保険にコロナの療養証明書を提出するようにとの連絡があったので、私はあまり使っていない自宅のパソコンを立ち上げて地元の保健所に申請をしました。
厚生労働省が開発した「HERSYS」(ハーシス)と呼ばれる電子申請システムは、スマホやパソコンで入力出来るため保健所や医療機関の負担も減って"スピード感"を以て処理できるというのです。ところが…
保健所から届いたメッセージを見て私は驚きました。
<保健所からのSNS>
9月13日 『HERSYSIDの申請をいただきましたが、陽性の診断を受けられた医療機関から「新型コロナウイルス感染症発生届」の提出がされていないため、療養証明書を発行できません。つきましては、大変お手数ではございますが、陽性の診断を受けられた医療機関へお問い合わせいただき、発生届を療養されていた所在地の管轄保健所へ医療機関から提出いただく旨の依頼をしていただきますようお願いいたします。なお、発生届が提出された段階で、下記の電話番号までご連絡いただきますよう、お願いいたします』

えぇっ?わたし、コロナ感染者にカウントされてなかったの?

私はスケジュール手帳の8月のページを開いてオンライン診察を受けた病院の登録情報を念入りに確かめました。登録したメールアドレス、登録IDとパスワード、診察時間と医師の名前。
深呼吸をしてから病院に電話をかけました。
「もしもし私8月5日にオンライン診療を受けてコロナの陽性判定を受けたのですが、保健所にコロナの発生届が出ていないと言われたのですが」
電話の応対をしてくれた女性は
「すぐにお調べして折り返しますね」と言って電話を切ってから十分後…
「大変申しわけございません。私どものミスで提出しておりませんでした。あってはならないことで本当に申しわけございません…」
もう、聞いているこちらの胸が痛むほどの憔悴したような声。
「いいえ、大丈夫ですよ。もうコロナも治っていて事務手続きをするだけで、本当に急いでいませんから」

電話を折り返すまでの十分間。病院の中ではどんなやり取りがあったのでしょう。誰が忘れたの?確認しなかったの?いや知らない、あなたが謝って…先生もカンカンじゃない!
想像するのも恐ろしい修羅場だったのではないかと電話の女性に同情してしまう。
「今たった今、申請しましたので明日には!明日には必ず保健所で登録されていると」
「あ、そんなに急がないからお気になさらず。 のんびり待ちますから~よろしくお願いしますね」
私は務めてのんきな声で応えました。
この後またお局様に絞られるんじゃなかろうか。ああ心配です。

ところで毎日16時45分に発表されている都道府県別のコロナ感染者、私の1人分は追加修正が入ったはずなので…担当デスクの皆さま、お手数をお掛けしますが数字のチェックよろしくお願いいたします。

と、一度は締めくくったつもりでしたが、まさかの結末。
会社で加入している保険は、過去5年以内にがん等の特定の病名で7日以上休んだ場合は該当しないことが判明。
苦労して入手したコロナの療養証明書は…たくさん謝ってくれた病院の女性や、保健所で即日発行してくれた敏腕職員に申し訳ない。ごめんなさい。そして、ありがとう。


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