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藤原さんという人

藤原さんが亡くなった、という知らせを数人から受けた。

突然のことだった。

前日まで元気にひと花センターに来ていたらしい。

藤原さんとはひと花センターで私が担当する「今日の出逢いを体験する」プログラムで出会った。
いつもニコニコしていて穏やかで耳が遠いけど黙って座って聞いてくれていた。

5年ほど前、私は和歌山の高校で「表現」の時間を担当していた。
その時の6人のメンバーがとても素晴らしくて、人の話をすぐに即興で演じあうプレイバックが得意だった。
友達だけではなく、私の話、担当している先生の話、時々遊びに来る校長先生の話など年代関係なく聞いたことを素直にやってくれるので、すごくおもしろかった。

特別授業として、ここにひと花センターのおじさんたちを連れてくることができないか学校側とひと花センターに交渉してみた。どちらも快諾してくれて、おじさんたちはある日車に乗って和歌山の高校に来てくれた。

2016年12月1日に今はもういないターシー、菅さん、そして和歌山出身の田辺さんもいて、その中に藤原さんもいた。おじさんたちとどんなことをするのか高校生たちが考えた60分の授業内容をおじさんたちはだまって一緒に受けてくれた。高校生たちと一緒に質問しあったり、身体で文字を作りあったり、最後におじさんたちの思い出を聞いてそれをすぐ即興のお芝居をして見せるという時間を持った。話を聞くのも高校生、やるのも高校生。そんな場で藤原さんは自分の15、6歳の頃の思い出を話してくれた。家が貧乏で、学校に行きたいなあと思っていたけどいけなかった。毎朝山から水を瓶に汲んで、水桶にいれるのが藤原さんの仕事。寒いなあと思いながら瓶から水桶に水を入れた。という話。高校生たちは「山から水を汲む?」「瓶?」「水桶?」とハテナだらけのその話を藤原さんは丁寧に笑いながら説明してくれた。そのあと、わからないながらも一生懸命に演じた高校生を見ながら手を叩いて喜んでくれた。いいもの見せてもらったと言ってくれた。

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私の朗読劇のお芝居も見に来てくれた。その後でまたお芝居の感想を書いて渡してくれた。

街で会った人に「今日の出逢いを体験する」の話をしてくれて、その人を連れてきてくれたこともあった。「先生のこと、紹介したい!」キラキラした目で話してくれた。

ひと花新聞にもよく私の活動について書いてくれた。一生懸命応援してくれた。

耳が遠くてあんまり聴こえていないようだったけど、いつもニコニコしてうんうんうなづいてくれた。

歌もよく歌っていた。その頃「今日の出逢い〜」では菅さんが歌担当という感じだったので藤原さんはいつも譲ってくれて、菅さんに花を持たせてくれた。いつも、自分よりも他の人のことを考えてくれていた。

今日はご葬儀で久しぶりの方にもたくさん会えたよ。みんな藤原さんとの別れを惜しんでいたね。

藤原さん、本当にありがとう。

コロナが明けたらまた話そうね、って言ってたことが叶わなかったけどまたどこかで会えたらと思います。

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