大阪市廃止4特別区設置論点整理

大阪市の廃止・分割構想に関する主な論点について
 
【政令指定都市としての権限と自主財源の喪失】
○大阪市が特別区に分割された場合、これまで政令指定都市として実施してきた都市計画の決定、一部の国道・県道・河川の管理などの事務・権限が大阪府に取り上げられるほか、一般の市町村が実施している上下水道の整備・管理、消防に関する事務も大阪府が実施することとなる。
○また、特別区では、市税である法人市民税、固定資産税、都市計画税、事業所税等を大阪府が徴収するため、特別区全体の税収(1,782億円)は大阪市の税収(6,595億円)の約27.0%にまで減少する(H28決算ベース)。特別区財政調整交付金で財源補塡があるとしても特別区の自主財源は大幅に脆弱化する。
○すなわち、大阪市の廃止・分割構想は、権限と自主財源が充実した「政令指定都市」を、権限と自主財源が制限された「特別区」に格下げするものである。
 
【大阪市の分割に伴う行政コストの増加】
○大阪市が4つの特別区に分割された場合、スケールメリットが失われるため、全体の行政コストは増加することとなる。大阪市財政局では、大阪市を単純に4つの市に分割した場合の行政コストを試算しており、これによれば、地方交付税算定上の基準財政需要額ベースで、年度当たり218億円増加するとしている。
○しかし、国から交付される地方交付税(特別区分も大阪府に交付)は、4つの特別区を1つの市とみなして算定するため、大阪市の分割に伴う行政コストの増加は反映されず、現在の大阪市と同水準となる。
○このため、大阪府・特別区においては、地方税や地方交付税などの歳入は増加しない一方で、歳出が著しく増加するため、深刻な財政難に陥る可能性がある。
 
【大阪メトロからの配当収入等に頼る特別区財政の危険性】
○大阪府・市が作成した「特別区設置における財政シミュレーション」では、特別区設置に伴うコスト増(イニシャルコスト204億円、ランニングコスト14億円等)があるにもかかわらず、15年間にわたり、特別区に収支不足は発生しないとしている。
○収支不足が発生しないのは、上記シミュレーションにおいて、「地下鉄事業の民営化による効果」(一般会計からの繰出金削減や株式配当収入などで年間71億円程度の増収)などが特別区の収益として見込まれているためである。
〇しかし、この「地下鉄の民営化による効果」は特別区設置とは無関係に生じるものである。
○また、大阪メトロは、新型コロナによる乗客の減少などの影響で営業収益が大幅に悪化しており(4~6月期で前年比42%減)、厳しい経営が続いている。
○新型コロナによって、大阪府も大阪市も財政悪化は避けられず、大阪市の廃止・分割を強行すれば、大阪府と特別区はともに深刻な財政難に陥り、住民サービスを低下せざるを得なくなるのではないか。

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