10月②ボーダーライン

メキシコとアメリカの国境地帯。と聞くだけで、血なまぐさい危険な場所、と容易に想像がつく。トランプ候補が、「メキシコ国境に万里の長城をたてる」と発言したことで、日本でも注目を集めた。

アホか、こいつ!?と私は思ったけれど、今回の映画「ボーダーライン」を観て、トランプのトンデモ発言を容認する人がいてしまうことも
なんとなく納得した。

メキシコの麻薬カルテルは、アメリカ側の警察にも協力者を得ているほど、強力で厄介な組織らしい。彼らの力を見せしめるためなのか、誘拐や拉致、殺人が頻繁に起きている。まさしく無法地帯。恐ろしすぎる。

そんな最恐カルテルのボスを逮捕する、というプロジェクトに、詳しい説明もされないまま参加することになるFBIの女性エージェントに、エミリー・ブラント。「プラダを着た悪魔」で助手役だったあの子が!出世したわねぇ…
自分の家族をボスに惨殺された恨みを晴らそうとして、プロジェクトに顧問として潜り込んでいる男を、ベニチオデルトロ!顔濃い!!

ベニチオデルトロは、昔からブラッド・ピットに似てると思ってたけど、さすがヒゲ面でもカッコいい。冷酷で無慈悲に、人を殺しまくっていくけれど、エミリーにそそぐ眼差しはどこか優しく切ない。殺された娘に似ている、というのだ。殺人者の哀愁を上手く演じていた。

最後は、ベニチオデルトロの復讐が成功するが、それを告発しようとする正義の人エミリー。だが、音も無く忍び込んだエミリーの部屋で、彼女を銃で脅かし、「違法性のない作戦だった」という書類にサインさせて、去っていく。

国境地帯において、確固たる正義など存在しない。
ただ、自分の身を、家族の身を守るために、悪事に手を染めざるを得ない人たちがいる。

綺麗事ではないのだ。

アメリカは、さっさと銃規制して、安易に銃が手に入る事で起きる多くの悲劇を止めるべきだ、と思ってきた。ロビー団体がどうだっつーんだ!と。

でも、一般市民だからといって、丸腰だからといって、見逃してくれるような、甘っちょろい連中ではないのだ、敵は。そして、守ってくれるはずの警察や政府も信用できない。
そんな場所なのだ、国境地帯は。

銃規制をして、万事が解決するような、そんな簡単な問題ではなかったのだ。

そんな現実をガツンと突きつけられたような、映画だった。

それでも、そうだとしても、暴力と悪を許さない社会を、ずっとずっと望み続けたい。
世界が平和になりますように。
世界中が、平和になりますように。

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