同世代

30代に入ってからだろうか。
小説を読み終わって、その作家のことを調べたら、自分と同世代だった、と知って驚く、という経験が増えてきたのは。

万城目学、三浦しをんは二つ上。西加奈子は一つ上。森見登美彦、山崎ナオコーラ、米澤穂信は同い年。
好きだなと思って、新刊が出る度にチェックしてしまうような作家は、同世代であることが最近多くなっている。

若い頃はもちろん年上の作家のものを読んで、憧れてきた。山田詠美、林真理子、宮部みゆき、吉本ばなな、村上春樹。本棚をざっと見ても、その遍歴が分かるように文庫本が並んでいる。

特に好きだったのは山田詠美で、高校生で読んだ「放課後の音符」に出てきた、「家で、テレビじゃなくて本とか読んでそうな」女の子になりたい、と強烈に憧れた。
実際には、本も読むけど、生粋のテレビっ子で、「このドラマのセットは、前のあのドラマのセットの使い回しだよ。」とか言って、同級生に引かれていたが。

当時は、背伸びしたくて、大人の世界を垣間見せてくれる、そんな小説を欲していたのだと思う。

自分が年を重ね、それなりに経験も積んでくると、リアルじゃないものに、共感できなくなる。
山田詠美の世界観は好きだが、米軍基地に勤めるアメリカ人と恋に落ちる機会は、自分には訪れない、と分かってしまった。そんな感じ。

もちろん、小説は全部リアルである必要なんてない。
村上春樹の世界の出来事なんか、絶対自分にふりかかって欲しくない。奇妙すぎる。それでも、その小説世界にトリップできる感覚が楽しくて、読むのだ。

ただ、いろんな面で、世代間のギャップが出てくることは、避けられない事だ。

例えば、同世代の能町みね子さんが何かの媒体で言っていたのに、すごく共感した。宮部みゆきの小説に出てきた、女子高生が使う「オジン」というフレーズに違和感を感じた、と。私たちの世代でそれを使う人はまぁいない。「オッサン」か「オヤジ」とか、そんな言葉を使うだろうなと思う。

私も、宮部みゆきの小説「小暮写真館」を読んで、なんとなく主人公の男子高校生の言動に共感を持てなかったのは、今どきこんな素直な高校生いるのかな、と思ったから。自分が高校生じゃないから、ではなく、今の高校生のリアルさを感じられなかったから、世界に入り込めなかった。

宮部みゆきを批判したいわけではない。彼女の時代小説は、時代とか世代とか超越した人間の営みや姿を描いていて、今も好きだ。
でも、同世代というだけで、わざわざ言葉で説明しなくても共有できる感覚、というのは絶対存在すると思う。それは、同じ時代に育ってきた過程で培われたもの。話し言葉や、文化。時代の空気感。

だから、今、同世代の作家が多く活躍しはじめて、本当に嬉しい。読書体験がもっと豊かになるかな、と期待している。

年をとるのも、悪くない!

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