見出し画像

ストーリー「やさしい花」

※私の知人の実話を個人が特定できないように少し脚色して書いています


ある男性の話です。


彼には妻と2人の子どもがいて都内で暮らしていました。

3人目の子どもが生まれましたが彼は自分の子か信じていませんでした。

そんなこともあって妻と不仲になり、ある日妻は子どもと一緒に昼逃げをしました。

遠い他県に子どもを連れ去られました。


妻の弁護士が要求してきた婚姻費用の金額は家裁の「算定表」の通り、彼の抱えるローンなど考慮なくただ収入に対する額で、それは彼の生活を圧迫する金額でした。子どもが3人なのでそうなるんです。妻は働いていなかったし。


............


妻はよく2人の子どもを置いて夜遊びに出掛けていました。とがめると子どもたちに当たり散らすので彼は言うのをやめ好きにさせるしかありませんでした。

妻はいつもイライラピリピリしていて彼は子どもたちのためにも自分の精神のためにもただひたすら黙って「わかった」と言うだけでした。


3人目の子どもができたと妻から聞いたときあり得ないと彼は思いましたがもう彼に妻を追及する気力はありませんでした。

妻に服従する下僕でいいんだと自分に言い聞かせていましたから。

ただ、平和であればいいと。

心をかき乱されないように子どもたちを守りそっと息をして暮らす日々を過ごすだけでした。



それが、ある日仕事から疲れて帰宅すると部屋には子どもたちの気配はなく食卓のテーブルに封筒が置かれていました。

弁護士の受任通知でした。

「今後は連絡はすべて弁護士を通すように」と書かれてありました。



............


それからの記憶は思い出したくもない家裁のデタラメの記憶だけです。

言っても信じてくれるわけがないです、家裁が親子を会わせないなんて、妻に有利なようにしかしないなんて、子どもを奪われた側を踏みにじるようなことしか言わない、これが家裁だと、誰が信じますか?

調停で裁判官から「子どもに会わせてもらいたいなら奥さんに土下座して頼んだら?」と言われたときは死刑宣告された罪人のようでした、それもえん罪の。



彼は配送業の仕事を残業をしてがんばりなんとかその子たちのために婚姻費用を払いました。

しかし、家裁の面会交流調停は妻側の牛歩戦術でズルズル長引くだけでしたから子どもたちとは一切会えませんでした。

婚姻費用も何に使われているかわかりません。

でも払わなかったら子どもたちに会えなくなるかもしれない、そんな不安しかありませんでした。

子どもたちと暮らした日々はかけがえがなく諦めたら子どもたちに申し訳なかったから、だから、必死にがんばりました。




彼は勤め先の配送会社に転勤を希望し子どもたちのいる某県に行き部屋を借りて共同養育できるようにしました。

しかし、ある休日に突然警察が3人きて妻子に近づかないように警告してきました。

どうやら妻が彼が暴力を振るう夫だと通報したようでした。



彼は都内に戻り、疲れ切り、仕事もやめ借金を負いました。

バカらしくて婚姻費用を払う気力を失っていました。

生活も苦しく精神的にも苦しくそしてなによりもこの理不尽な日本に絶望し、2021年春、彼は都内某所のビルの高所から身を投げかえらぬ人になりました。


どんなに無念だったかと思います。

心からご冥福をお祈り申し上げます。


彼は孤独でした。

家族も友人にも言いませんでした。

周囲は彼のこのことを彼の遺書で知ることになります。



...............


日本にはこんな悲惨なことが知らないところでたくさんあって、当事者になって初めて知ります。


たくさんの人たちが子どもたちに会えずたくさんの人たちが孫に会えないまま亡くなっています。


子どもたちに会いたいと思いもがき苦しみ亡くなられた方たちのその悔しさと無念に想いを寄せ、彼らが「頑張ってくれたこと」に感謝したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?