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嫌われた監督(落合博満は中日をどう変えたのか)

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
鈴木忠平/著  文藝春秋/刊
を正月休みの時間を使って、じっくり読みました。

日本のプロ野球における落合博満さんの実績は、恐るべきものです。

野球選手としては、ロッテ、中日、巨人、日本ハムで活躍。
三冠王 3回を含めて、首位打者5回、ホームラン王5回、打点王5回。
通算成績 打率 . 311 ホームラン510本

監督としては、中日で8年にわたって指揮をとり、
日本一 1回、日本シリーズ出場5回、セ・リーグ優勝4回。
優勝以外の年も、リーグ2位が3回、3位が1回、すべてAクラス。

最後に指揮をとった2011年も、セ・リーグ優勝。ソフトバンクを相手に戦った日本シリーズは、惜しくも3勝4敗で敗れたものの、日本一まであと1勝にまで迫りました。

書籍「嫌われた監督」は、野球記者だった鈴木忠平さんが、当時の記憶と記録、そして関係者へのインタビューで構成した厚みのある内容です。

落合博満さんは、選手時代も監督時代も、打つために勝つために、徹底して『理』を追求してきたことが分かります。ときに常識を疑い、ときにムラ社会の掟に逆らうことになっても。。

その一方で、取材に来た鈴木忠平 記者に対し、
「お前、ひとりか?」
「俺はひとりで来る奴には喋るよ」(P83~P84)
と、個を認める姿勢も持ち合わせている。

また、多くを語らない一方で、洞察力にも恐るべきものがあります。
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ベンチから定点観測するなかで、三塁手としての立浪の守備範囲がじわじわと狭まっているのを見抜いていたのだ。
<中略>
「今もよおく見える。ああ、また一つ、アウトがヒットになったなあ・・・ってな」(P86)
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井端選手と荒木選手の、ショートとセカンドを入れ替えるコンバートについては、
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「俺から見れば、あいつら足でボールを追わなくなったんだ。今までなら届いていた打球を目で判断して、途中で諦めるようになったんだ」
<中略>
「どんな選手だって年数を重ねれば、だんだんとズレてくる。ただ荒木だけは、あいつの足の動きだけは、八年間ほとんど変わらなかった」(P393)
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同じチームのコーチ、選手でさえ気づいていないことが、落合博満さんには見えている。まして他球団、グラウンド外の評論家で気づく人はほとんどいなかったことでしょう。
そして、落合さんなりの『理』に従って、対策を断行する。理由については、なぞなぞのような短い言葉を語るくらい。その結果、誰かに反感を買うこともいとわない。

歴史を例に取れば、源平の合戦で平家に「勝ち過ぎた」源義経が、鎌倉の源頼朝に切り捨てられてしまったように・・・

落合博満監督もまた、十分過ぎる実績を残しながら(契約満了という形とはいえ)実質は解任されてしまったのかもしれません。

されど、私を含めて、選手や監督としての落合博満さんのファンという人は、少なくないことでしょう。

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