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4話 未来スケジュール

森散歩終着点の
滝が打って流れた水辺で、
玲は
仲が良かったみんなと
会う時間が出来て嬉しそうだった。
日本語と英語の発音はどちらも綺麗で
「これだけ語学勉強している人は
文化の研究で来ていたりするのだろうか?」と
彩佳は、玲に
”この国に来た理由”を
挨拶代わりに聞いてみた。
「玲は、卒業してからどうしてるの?」
「うん、近くのレストランで
アルバイトしてるよ。
でも期間を決めて、そろそろ
旅行に行こうと思う」
ああ、旅行かあ、いいねぇと
彩佳は自分の先の予定に
シンクロ出来るところがありそうで
嬉しくなって
そこから二人の
話題を膨らませていった。

「彩佳は来て2ヶ月くらいになるの?
結構英語上達したんじゃない?」
「うーん、最初よりは
少し聞き取れるし、
少し話せるようになったくらいかな
最初がひどかったからね、
うまくなったよって
みんな言ってくれる」
この国の海の魅力に取り憑かれたように
毎日のように海へ言って
過去形を出せば
「昨日は海へ行っていました」
今日の予定はと聞かれれば
「このあと、海へ行きます」
willを使った未来形なら
「明日は海へ行くでしょう」
と答えていた彩佳も、そこから
ほんの少し広げられるように
なっただけだけどねー、と
笑いながら答えた。
なるほど、語学勉強が
メインではないのねと察した玲は
「卒業したら
彩佳はどうするの?」と聞いた。
「せっかくだから
ファームステイがしたいかな。
牛とか羊のお世話して・・
そう思って一度
電話をかけたことがあるんだけど
でも力仕事だし、
女の子だしちょっと..って言われて。
それで、農園の方を探そうかと思ってる
観光も行きたいからステイ後か
それとも先にするかで迷ってるところかな」
「うん、観光はねえ
この国っていろいろ本当に名所揃いで
どこをピックアップして行こうか
とっても迷う。お金と時間次第なんだけど。
彩佳は
星空が世界一美しい観光スポットとか
好きでしょう?」
「世界一!?うわぁ、すごいね。
知らなかった。
行ってみたいな!
でもそう、時間とお金が・・
無理かあ
せっかく、すぐそこ。なのにな」
彩佳が楽しそうな表情から残念そうでも
笑っている表情を見て
玲は、すぅっと視線を右に
そしてゆっくりと左に移して
少し上を見上げたあとで
彩佳に言った。
「この国の最北端に
海ばっかりの道を90マイルも走って
たどり着く岬があるんだけど、
そこも行こうと思うんだ。
彩佳、一緒に行ってみない?」

セリフあり

レインガ


そういえばルカも言ってた。
その場所からは
2つの海が見える、と。
いや、実際に視界に入る海は一つで
海が2つってことはない。
「2つの潮」を「2つの海」と
彩佳が日本語に置き換えたんだったかもしれない。
境目の右半分、左半分色が違う
という表現に惹かれて、彩佳は
自分もその場所に行って
見てみたい、と思った。

それから2週間して、
「クライストチャーチへは
もう行ってきたんだよ」と、玲は
ランチのサラダをフォークで刺すより前に 
「写真見る?」と彩佳に小さなフォトアルバムを
差し出した。








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