13話 パブロバの引き寄せ
ジェシカの案内で家におじゃますると
「グランマー、ベラー」と
可愛い姉妹がお迎えに出てくれた。
「近くに寄ってくれていたから
捕まえてきたわ。
前にあったことがあるでしょう?
レイよ、覚えてるかしら?」
ジェシカが
10歳のアニーと
5歳のリリーに 聞くと
「覚えてる、レイー」
2人は可愛く返事をして
玲に抱きついた。
「レディーたち。覚えててくれて嬉しいわ
ジェシカに招待を貰ったの
アン。またあなたのスイーツが食べられるなんて
遊びに来る日を間違えなくて良かったわ」
「久しぶりね、レイ。
よく来てくれたわ。余った分をどうやって
スペースに入れようと思うくらい
作っちゃって。いや、ホント」
冷蔵庫へ入れるか胃袋へ入れるかの
計算ミスが転じて
楽しい時間になったことを
娘のアンという人は
素直に喜んでいた。
陽が差し込んだ大きな窓のリビングには
焼き上がりから少し時間がたった
パブロバの甘い香りが漂っていて
フルーツ飾りや紅茶の準備をレイも
手伝って食卓を整えた。
「こっちへ来てー」と子どもたちに庭へ
引っ張っていかれたルカと彩佳は
準備ができた声を聞き
ダックスのベラと中へ入って
みんなで一斉に手を洗ってから
食卓を囲んだ。
”パブロバ”を
焼き菓子とは知らず食べて
サクサクとした食感と甘みに
驚いて
「これ、何で出来ているの?」
と尋ねた彩佳は
「メレンゲを焼き上げた
お菓子よ。
典型的なNZスイーツなの」
そうアンに教えてもらって
「生クリームの代用以外に
メインでスイーツになるのね。」
と調理法を新鮮に感じた。
「簡単に出来るのよ」
母ジェシカから娘のアンに
伝えられた歴史のあるスイーツで
「おいしーい」と頬張っている
アニーとリリーも、
やがて
上手に覚えて焼き上げるんだろうな、
と顔がほころんだところを
「アニーとリリーは
まだまだ食べる専門よ」
アンが見抜いて彩佳に言った。
「ところでルカは?甘いものは大丈夫?」
今度はルカにも質問をした。
「甘党なんだ」
「甘党のルカは紳士なのかしら」
ジェシカもルカに関心を寄せて聞くと
「紳士?そう、僕は紳士だよ」
得意そうに答えたルカに
「紳士は自分のこと紳士なんて言わないよ」
玲があっさり否定した。
「あら、レイはあなたのことを
信頼しているのね。
あんなに楽しそうに笑っているレイに
私も早く会いたかったわ。
来た頃のレイは・・
表情が少し...沈んでいたもの。」
「玲、なにかあったの?」
彩佳が聞くとジェシカは
分かりやすく簡単な言葉に置き換えて
「沈んでいたと言うか・・・
そうね、今ほど表情豊かに
笑っていはいなかったわね」
「そう?そうだったかしら。
だけどこの大自然だもの。
何かあったのかも忘れたわ」
「そう、良かった
少し心配だったの。でも
元気そうだし
ベラが外へ連れていけって
引っ張っていってくれてよかったわ
今日はとてもいい日だわ。グッドガール、ベラ」
そう言ってベラを抱き寄せ
優しく撫でてキスをした。
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