時の長さと絆の深さ
夫との日々はとにかくチャレンジ続きだ。
いや、「続いている」チャレンジ。ただ、いたずらに時間が流れている。子供が義務教育を終えるまで、と心に言い聞かせながら。
こんなことを強く思うようになってきた数年前。私はあるドラマに出会った。まだ私がカフェで忙しく働いている時だった。
「優しい時間」という寺尾聡が出ている北海道が舞台のドラマだ。彼の亡くなった奥さん役が大竹しのぶだ。
主人公の寺尾聡が営む「森のとけい」という喫茶店。昼間はいつもの顔ぶれや旅行者で忙しい。しかし夜になって、彼が片づけをしていると、カウンターの隅に、「大竹しのぶ」が座って、話をするのだ。
幽霊か?それとも彼の幻想か?
けれど、この会話がとても優しいのだ。夫婦のありきたりな、そんな話。よくみんながおじいちゃんおばあちゃんになったら、縁側に座ってお茶でも飲みたい、というような、レベルの心地よさ。一緒に費やした時間が作り上げた信頼と安定感。確かに設定では、主人公の彼は仕事に明け暮れて家庭を顧みない商社マンだった(確か)。妻の交通事故死がきっかけに仕事をやめ、妻の故郷でもある北海道に移住し、今の仕事に就いたのだ。とはいえ、それなりにも思い出があり、そんな話をする二人。
その温かさに触れたくて、意地でも家のことをしながらパソコンを抱えて全話見つくした。
付き合いだした「カップル」というのはキラキラしてみているだけでわくわく感が出てくる。けれど、私が今欲しいものって、「年月を経て出来上がった静かで温かい深みのある」関係だ。付き合いだした頃のわくわくも素敵だけど、でも、やっぱり二人で過ごした時間で積み上げて来た、誰から見ても安定している関係が私には魅力でならない。
それは友達関係も一緒かもしれない。ただの長さだけではなく、何を話し何を共有し、共感し、今日まで来たのか。そのかかわりが大きければ大きいほど、深ければ深いほど、絆は固い。
何人かの私の友達はこの「深みのある」パートナーと人生を歩み続けている。
彼らに会うと、べたべたするわけでもないけど、ごちそうさま!と言いたくなるくらい、うらやましいほどの二人が出す歴史の深さと渋さが見えてくる。喉から手が出るほど、欲しいものだ。
けれど、私の人生は、もう後半に差し掛かっている。離婚を数年後に始めたとしても、1,2年かかるとして、残された時間は限られている。いや、まだわからない。とあがきたくなる。笑
今一番欲しいけど、でも、手に入らないもの。
それは「時の長さで培われたパートナーとの絆の深さ」目に見えないけれど、とても大きなギフトなのだ。どんなものよりも大きく、どんなものよりも価値があり輝いて見えるものなのだ。
素晴らしいものって殆ど見えないものが多い。
そんなものが沢山あるけれど、その中でやはり私はこれが一番欲しいのだ。ここ数年上位一位を占めて揺るがない。
人と作り上げる歴史と時間。素敵なものだ。一番の宝物と言っても過言ではないかもしれない。
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