入らなかった曲から考えるhappyender girl(アルバム)
ex. happyender girlの2ndアルバム「happyender girl」は2020年11月頃から2年ほどかけて制作していました。
もちろんずっと作っていたわけではなく、ダルくなったので曲作ること自体をやめてた期間とかも込みですが。
2020年11月当時の制作メモには当初想定していた曲目が書かれています。
全然違うじゃねえか!
というわけでこの記事では、当初考えていた曲目から漏れた曲について書くことで「happyender girl」というアルバムを考えてみます。
漏れた曲がなぜ漏れたか
上記の曲目にある曲のうち、実際のアルバムからは「ピースフル・ハートフル」「ガールフレンド・アーミー」「あんたは笑って暮らしてな」「ワールズエンド・ガール(フレンド)」が漏れ、代わりに「長い廊下」という曲が収録されています。
以上4曲が漏れた理由はひとえにアルバムのコンセプトとそぐわないからです。
詳細は各曲の項目で書きますが、今作「happyender girl」(アルバム)のコンセプトは当初はもっと緩いものでした。
最終的に「『その後の少女たち』の世界観を拡張する」という形に落ち着いたんですが、元々はもう少し広く「不在と記憶について書いた楽曲のオムニバス」という括りで曲目を考えていました。
ので、有り体に言えば以上4曲は「その後の少女たち」に繋がらない話だから外したということになります。
アルバムから外れた各曲について
1. ピースフル・ハートフル
この曲は元々2019年にはデモとして存在していた楽曲です(アルバム「さよならのハッピーエンダーガール」に収録)。その後、バーチャルライブ「still dreaming (hour) vol.1」でも披露した後にライブ版が「a perfect day to eat pancakes e.p.」に収録されましたがスタジオ版は未だ存在していません。
ライブ版で音源化してるし別にスタジオ版作らなくてもいいかなと思ってるので、おそらく今後もスタジオ版は作らないと思います。
(そもそもどっちも全部打ち込みなので別にライブ録音でもスタジオ録音でもなんでもないんですが)
この曲の歌詞は女の子の独占欲について書いた歌詞です。「忘れないで」という今作のコンセプトに通じるワードが出てきたりはするものの、いなくなった人についての思慕ではない(むしろ「居るのに伝えられない」という鬱屈した思慕についての話なので方向性としては真逆)ので曲目から消えました。
そしてこれが漏れた後に一曲目に収まった「長い廊下」ですが、本来は「長い廊下」も元々は居るのに伝えられない系の曲でして、これを今作に収録する上で歌詞を書き換えたので「[further away]」というバージョン名が付記されています。のでアルバム版の歌詞は正式な歌詞ではありません。
2. ガールフレンド・アーミー
この曲は2021年にSoundCloudで発表しまして、EP「cityscapes #3」に収録されています。歌詞は2020年に書きましたので昨今の情勢とは関連ありません。
歌詞を一目見ればこれが今作に入るべくもないと分かっていただけると思いますが、しかし「コミュニケーションの絶対的な分断」「ノスタルジーとその喪失」というテーマは「その後の少女たち」と通じるものがあります。ので当初のコンセプトであれば確実に入っていたであろう曲でした。
あとは普通に曲の作風自体がシューゲ基調のアルバムとそぐわないというのもあります。Hyperpopの真似ごとみたいな曲なんですが、作ってるうちにどうアレンジすればいいのかわからなくなったので適当に作ってサンクラに放流しました。ロックではない曲を作るのは難しい。
3. あんたは笑って暮らしてな
漏れた楽曲で唯一、デモすら出来てない曲です。そしてコンセプトが固まる前の曲目ではクライマックスになることを想定していた曲でした。
クライマックスという点では後述「ワールズエンド・ガール(フレンド)」もその役割を担えるのでどちらを入れるかで迷っていたんですが、結局どっちも外すという形に落ち着きました。
「ガールフレンド・アーミー」もそうですし最終的にアルバムに入った「ニノコルモノ」や「白日の下」など、このアルバムに向けて書かれた大体の曲は「既に終わったこと」について書いているんですが、この曲だけは「全部いつか終わるけど今はまだ終わってないからあんま気にすんなよ」という趣旨の歌詞でした。
そもそも他の曲があんまりにも救いがないのでちょっとは明るいメッセージの歌詞を用意したろって感じで書いたんですが、結局外したので最後まで暗いままで終わるアルバムになってしまいましたね。
ただ、「その後の少女たち」を中核に据えるにあたって片方が既にいなくなってるのは確定しているので、「今はまだいる」という形で救いを用意するのは無理があるかなと思って選外になりました。
4. ワールズエンド・ガール(フレンド)
2022年の毎月リリースのラストで投稿した曲です。
これも「ガールフレンド・アーミー」と同じく単体で完結したお話なので漏れました。のちに単独のEP「ワールズエンド・ガール(フレンド) - world's end(er) girl(friend)」としてリリースしました。
happyender girl(アルバム)とこの曲はどちらも「終わり」をテーマの一つにしていることは間違いないんですが、何も世界終わらすことはないだろって感じです。「その後の少女たち」は世界終わってないので。お話のベクトルが違うかなーと思うので選外です。
あと、構成的に入れられなかったというのもあります。この曲はだいぶボリューミーだしあまりにもオチとしてのパワーが強すぎるので、「その後の少女たち [afterwards]」との噛み合わせが悪い。元々のアルバムコンセプトの発端として「その後の少女たち」を外す選択肢はないので、こちらに外れてもらうことになりました。
そうなるとクライマックス担当がいなくなるので悩んだんですが元々EP「phase 2」のオチ担当だった「ghost 2」に担当してもらいました。歌詞は総書き換えになりましたが。
まとめ
アルバム「happyender girl」の一番のテーマは「喪失」でもなく「コミュニケーション不全」でもなく「不在」なんだなーと書いてて思いました。
「ここにあなたが居ないのが淋しいのじゃなくて、ここにあなたが居ないと思う事が淋しい」という話ですね。「君がいないことは君がいることだなぁ」という話でもあるかもしれない。
アルバムにどのような歌詞の曲が入り、どのような歌詞の曲が入らなかったかでどういうアルバムか捉えやすくなるんじゃないかなと思います。
現場からは以上です。