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精神科専門医試験 口頭試問対策(第7~14回解答付)

はじめに

第15回精神科専門医認定試験に一発合格しました。口頭試問にあたり、勉強したまとめを公開します。鑑別疾患・検査のまとめ、心理検査のまとめは有用かと思いますが、過去問解答はおまけ程度に見ていただければと思います。大きく間違ってはいないと思いますが、個人で考えたものであり、確実なものではございません。また、第11~14回はある程度ちゃんとまとめていますが、第10回以前は症例内容がかぶっていることもあり、すっかすかなものが多いこともご了承いただければと思います。
解説等はICD-10、DSM-5、現代臨床精神医学、精神診療プラチナマニュアルを参考にしています。
なお、ご利用はご本人限りとし、共有、文書の無断転用、引用を禁じます。

この記事をご覧になった皆様が合格されることを、心よりお祈りしております。


<14回A>サンプル

解答の14回Aをサンプルとして公開します。ですが、14回は比較的気合が入っている解答であり、すべてがこのクオリティではございません。ご了承ください。

〈14回A〉

①症状

・娘の悪口を言われている:被害妄想
・誰かに後をつけられている:追跡妄想
・仕組まれている:被害妄想、迫害妄想
・人の目を気にする:注察妄想?
・不安
・子供を盗られる:被害妄想
・過度に心配
・大声でなにかと戦っている:幻聴
・独り言:独語
・家の中のものを投げたり、外に出ようとしたり:興奮、易刺激性の亢進、錯乱
・疎通が取れない:意識障害、認知機能障害、思考力の低下
・整容の乱れ
・同一の姿勢を保持:亜昏迷

*昏迷とは:意識が清明なのに、表出や行動など意思発動が全く行われなくなった状態。
  緊張病症候群では、緊張病性興奮(急激に起こる精神運動興奮で、意志による統制を欠き、状況との関連や行為の一貫性がなく、了解不能な興奮である)、緊張病性昏迷(意識は清明なのに一切の自発行動が停止した状態で、患者は彫像のように動かず、質問にも答えず、命令にも従わないが、周囲の状況を認識していてあとでその時のことを追想することができる。緊張病性興奮と昏迷は交代して出現することが多い)、カタレプシー(他から与えられた肢位や姿勢を長時間保持するもので、意志発動の低下と被暗示性の亢進によっておこる)、反響動作・言語(相手の動作や言語をおうむ返しに模倣して繰り返すもので、自己の意思発動性の低下による被影響性の亢進状態である)

・体温37.5度、頭痛、倦怠感
・多嚢胞性卵巣嚢腫(PCOS)

②鑑別診断

・外因:脳炎(ウイルス、抗NMDA受容体抗体)、神経梅毒、SLE精神病、アルコール・薬物乱用
・内因:統合失調症、統合失調感情障害、精神病症状を伴ううつ病、双極性障害
・心因:産後うつ?
 *産後うつ病・産後精神病:産後3~7日目から起こり、1~3か月続く。産後精神病は産後早期から急性に発症し、症状としては複雑な意識障害(錯乱・せん妄、アメンチアなど)のほか、幻覚妄想状態、夢幻状態、あるいは抑うつ、苦悶状態、躁性興奮状態などがある。予後は良好で短時日のうちに消退することが多い。
・発達:特になし

ベースには産後うつ、4月2日の体調不良から脳炎などの身体疾患が重なっている可能性。ただ産後うつにしては長引いているので、精神病症状を伴ううつ病か双極性障害の可能性も高いと考える。

③鑑別診断のために必要な検査、問診

・血液検査(炎症、自己抗体、梅毒、甲状腺ホルモン)
・画像検査 頭部CT、MRI
・髄液検査(ウイルス性脳炎では、は髄液圧の上昇、細胞数増多(単核球優位)、蛋白及び IgG の上昇を呈する。他、ウイルス抗体価やPCR。)
・脳波(抗NMDAでは92%が異常、徐派が71%、発作波21%)
・腹部エコー(産婦人科、卵巣奇形腫合併60%)
・問診(薬物使用歴、過去の躁病エピソード)
・心理検査(HAM-D、PANSS、WAIS)

④最も考えられる診断名

抗NMDA受容体抗体脳炎

 ・診断の根拠:若年女性で非特異的前駆症状(感冒症状 発熱・頭痛・倦怠感)に引き続き、急速進行性に統合失調症様症状が出現し、無反応・昏迷状態を呈することもある。
前駆期のあとに、
 精神症状:行動異常、幻覚、妄想、不安、気分障害
 けいれん:焦点性(部分)発作、全身性発作
 不随意運動:口の周りの異常な動き、四肢の不規則な運動、異常な突っ張り、ぴくつき
 意識障害:意識の低下、錯乱
 認知機能障害:記憶障害、会話の障害、思考力の低下
 自律神経症状:低血圧/高血圧、徐脈/頻脈、体温異常、無呼吸、睡眠障害 が生じる。

⑤治療方針

まずは診断確定のための身体検査を行い、仮に抗NMDA受容体抗体脳炎であれば、腫瘍切除や免疫療法(ステロイドパルス、血漿交換、免疫グロブリン大量療法)を行う。身体疾患の治療を行った後、精神症状を評価し、気分障害の疾患が疑われるようであればそれに対する治療を行っていく。また、産後より不安や被害妄想など精神症状を認めているため、育児環境の確認を行い、家族のサポートが受けられる状態なのか、地域の保健師とのかかわりはどうか、必要であれば訪問看護なども検討し環境調節を行う。 

⑥ロールプレイ:診断、検査、治療方針を説明
安全が確保された場所での療養が必要、入院が適当でないか

当日の流れ

 集合時間にホテルに行くとロビーに受付が設置されており、名前と顔、症例レポートのコピーを確認(書き込みがないか)したあと、名札をもらい、携帯電話は回収される。ZOOM面接の注意事項(接続不具合の時には注意事項ボードを画面に見せる等)をもち、ロビーで待機。面接時間になり、スタッフと一緒にエレベーターで客室に移動。面接用の客室は2,3部屋用意されていた。
 客室にはパソコンと伏せられた共通症例がおいてあり、マスクを外し、画面で見えるところに名札を貼る指示を受ける。画面上の面接官3人(女性1人、男性2人、あとは事務スタッフが声だけ)と挨拶し、画面オフの状態で共通症例の読み込み10分が開始となる。紙に書き込みは可能。
 10分経過後、進行役の面接官より共通症例について①症状②鑑別診断③検査④最も考えられる診断⑤治療方針について述べるよう指示あり。2日目午後は、アルコール依存、双極性障害、現在うつ病エピソードの男性で姉と一緒に来院。食事がとれておらず、転倒し歩行困難もあるという症例。症状を聞かれるとき、歩行困難が抜けていたら、進行役の先生より「他にはありませんか」とやや誘導があり。③鑑別診断は身体症状を羅列したところ、「身体症状が大事ということですね」と言われ、そこまで頑張って羅列する必要はなかったかも。治療方針もざっくりしたもので、細かい薬物療法などは聞かれなかった。一通り答えた後、他の面接官の先生より、すぐしなければいけない治療はありますか、など追加の質問がいくつか。
その後、面接官が患者本人、姉役となり、ロールプレイ。まずは診断・治療方針などを説明。患者は入院を嫌がっている状態だったが、入院するように促し、最後は「わかった、そこまでいうなら入院するよ」と本人が言いロールプレイ終了。途中、姉から現在の状態や家族ができることなどについて質問があった。雰囲気は圧迫ではなかったので、普段の臨床での説明のようにすれば、問題ない。
 共通症例終了後、症例レポートのうち、2症例について質問が開始。まずはどちらの症例でも、苦慮したことを最初に聞かれ、そのあとは面接官3人から順番に質問される。治療自己中断後に症状再燃した統合失調症の症例では、治療の自己中断理由、本人の困りごと、薬剤選択理由などが聞かれ、高校生の摂食障害の症例では、その後どうなったか、家族特性などが聞かれた。
 終了後は挨拶をし、共通症例の紙と注意事項のボードを持って退室。受付で共通症例や名札を返却し、携帯電話を受け取って終了。

共通症例で聞かれること

①症状
②鑑別診断(・外因・内因・心因・発達)
*外因性:外因とは頭部外傷、感染症(進行麻痺など)のように、外部から加えられ脳に直接に侵襲(器質的あるいは機能的な)を及ぼす身体的原因である。
*内因性:内因とは、統合失調症や気分障害(うつ病、双極性障害)などのように、ふつうは明らかな外因なしに発病し、遺伝素因が関係することが多く、神経病理学的検索などで脳に明らかな器質病変が見出されない精神障害の原因として、内的・素質的な原因として想定されたものである。
*心因性:虐待、慢性的な過労、ストレスなどの生活環境や失恋などのライフイベントをはじめとする、心理的な影響が深い出来事や状況があること。
③鑑別のために必要な検査、問診
④最も考えられる診断名
 診断の根拠、診断基準
⑤治療方針
 治療目標、薬物治療、心理教育、環境調整
⑥ロールプレイ:診断、検査、治療方針を説明

鑑別疾患・検査のまとめ

〈幻覚・妄想の②鑑別・③検査〉


②鑑別疾患
 外因:内分泌疾患(甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、下垂体)、脳血管障害、腫瘍、脳炎(抗NMDA受容体抗体脳炎、ウイルス性)、神経梅毒、てんかん精神病、認知症、薬剤性、アルコール性
 内因性:統合失調症、妄想性障害、統合失調感情障害、精神病症状を伴ううつ病、双極性障害
 心因性:解離性障害
 発達:精神遅滞、自閉スペクトラム症
③検査
 神経診察
 採血(ホルモン、糖尿病、肝機能、電解質、感染)、必要であれば髄液検査
 脳波、頭部CT・MRI
 心理検査(PANSS,BPRS,WAIS)
 問診(家族歴、薬歴、学生時代の成績、交友関係、仕事の状況、ストレス因など)

〈気分障害の②鑑別・③検査〉

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