平成29年度 解答作成方法解説と解答例

設問



 次の枠に囲まれた文章は、平成24年版厚生労働白書にある福祉レジーム(*注1)論を紹介したものである。また図1はジニ係数(*注2)の異なる4つの国について、係数の低い国から高い国を縦に並べ、所得格差に関する国民の意識調査を比較したものであり、図2は各国政府の格差是正に関する国民の意識を比較したものである。更に図3は日本における社会保障の負担と給付のバランスに関する意識調査を表したものである。
 自由主義的福祉国家のアメリカ合衆国、社会民主主義的福祉国家のスウェーデン、保守主義的福祉国家のフランスを取り上げ、図1図2の表す内容に触れた上で、下記の福祉レジーム論による3類型を参考に、「これからの日本の社会保障の負担と給付のバランスをどうすべきか」、あなたの考えを540字から600字で述べなさい。

*注1  レジーム‥体制、制度をさす。
*注2  ジニ係数‥社会における所得分配の不平等さを測る指標。ジニ係数がとる値の範囲は0から1で、係数の値が大きいほどその集団における格差が大きい状態である。

(枠に囲まれた文章)

(福祉レジーム論)
デンマークの社会学者エスピン=アンデルセンが提起した福祉レジーム論では、西側先進国諸国を分析した結果、自由主義的福祉国家(アメリカ合衆国など)、社会民主主義的福祉国家(スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国)、保守主義的福祉国家(フランス、ドイツなどの大陸ヨーロッパ諸国)の3つに類型化されている。
 自由主義的福祉国家(以下、自由主義と略す。)の典型例としては、アメリカ、カナダなどがあげられる。これら自由主義諸国では、機会の平等や個人の自己責任が重視され、公的制度による社会保障は、必要最小限の限られた人(貧困層など)に必要最小限の額を給付する傾向があり、その結果として社会保障負担も低水準となっている。多くの人は民間企業が提供する医療保険サービスに加入するなど自助努力的な対応をとっており、子育て等の公的支援は、低所得者を対象とした一時的な扶助に限定されているのが特徴である。生活上のリスクを社会保障による給付に頼ることなく、自力でリスクに対応できる社会を築くことが目標とされている。そのための前提として、自由な競争のもとで、高い成長率で雇用を確保し、勤労意欲さえあれば就労可能で社会保険に加入しリスクに対して備えることができる社会の構築が必要である。結果として所得の格差は他の2つの類型と比較し大きくなっている。
 社会民主主義的福祉国家(以下、社会民主主義と略す。)の典型例としては、スウェーデン、デンマークなどがあげられる。これらの社会民主主義諸国では、社会保障を受ける権利を有するのは個人の市民であるというのが特徴である。これは高所得者であれ低所得者であれ、皆が同じ権利を持ち、同じ給付を受けるというものである。また国民の連帯を構築するために労働者階級と中間階級の間に二重構造が生じることを容認していない点で、所得の格差は比較的小さく平等化されている。家族や市場が福祉に果たす役割は小さく、国家が中心的役割を担っている。生活上のリスクを国の社会保障を中心とした社会的制度でカバーしその範囲が広いため、社会保障給付の水準は高く、負担の水準も高い(高福祉・高負担)。また、他の類型に比べて現役世代への給付が厚く、社会保障給付は現金給付よりも現物給付(金銭ではなくサービスの給付)が多い。
 保守主義的福祉国家(以下、保守主義と略す。)の典型例としては、フランス、ドイツなどがあげられる。これら、保守主義諸国では、所得再分配政策を重視するが、その機能を家族、企業などの伝統的組織による共同扶助に担わせ、国家の役割はその活動を補完するものと考えられている。生活上のリスクは、保険料を労使双方で負担する企業や育児などについても家族制度が背負うことになる。具体的には宗教が福祉をはじめ教育・医療などの社会サービスを主導的に担っていたり、男女の性別役割分業などの伝統的な家族主義やギルドとよばれる職業別組合に代表される封建的な職域を重視している。その影響から、社会保障制度は職域ごとの社会保険制度を中心に発展しており、職業的地位による格差が維持されている。以上のことから、国家の役割は補完的であるものの所得の再分配政策が機能し、所得の格差は3つの類型では中間にあたり、社会保障の給付と負担の関係についても、3類型の中では中程度となっている。また、社会保障給付は退職後の高齢者向けのものが多く、現物給付より現金給付が多い。

(「平成24年版厚生労働白書」より作成)


攻略法(共通)


  1. まずは設問を完全に理解

  2. しっかりと資料から重要なポイントを読み取り抽出して箇条書きにする(正しい分析・考察)

  3. その箇条書きの点をつないで(根拠の明確化)線にし、洞察を加えて面にして議論を構築(意見の的確な表現)

  4. 設定された字数内に落とし込む(論理的文章の構成)


ステップ1 設問を完全に理解する

ぱっと見からしてくそ超めんどくさい問題だが、頑張ろう。

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