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【ベートーベンカップND1700】青単改造男




要旨
ビッグマナやメイ様に勝ちきれる一つの選択肢として青単ジャバジャックが挙げられるが、従来の青単ではほとんどリキッドピープルしか採用しない制約上難しい盤面や展開を打開できるカードが少なかったので、他の色を足して強い動きを増やそうと試みた。
この場合、アクアサーファーの枠を削り5コストのホール呪文を採用すれば、青単の動きを損ねずジャバジャックから自然と繋げられると気が付いた。
デッキは時に攻めた構築の方が勝つこともある。

1. はじめに

今期は青単ジャバジャックを基盤として様々なカードを混ぜる試みをしていました。
ジャバジャックの手札交換性能により他の色を混ぜても機能しやすく、また従来の青単ジャバジャックでは勝ちえない試合を拾えるようになりました。

2.構築経緯

まずベートーベンカップでの環境を鑑みると、レートを上げるためには先1メイ様に対応できないデッキ、およびシータ刃鬼に有利を取れないデッキは使用できない。理由は、どのレート帯にも多いメイ様およびシータ、ビッグマナに負けていてはレートが上がらないからだ。最大母数に負けないことはレーティングバトルで最も重要で、またメイ様はプレイングで捲り得ないアドバンテージ差をつけられてしまう。したがってこれらに負けにくいデッキを選択しなくてはならない。
そうすると、環境デッキでは白緑天門か青単リキピはこれを充たす。メイ様によるリソース差をアガサと天門からひっくり返せる白緑天門と、アクアガードでのブロックはもちろん進化獣でメイ様をトンカチ出来るジャバジャックは上で挙げた必要条件を充たしている。
そしてこの考察の過程で、リキピにキクチを入れてブースト系に完全に勝つことを考えた。このデッキを形にするために黒をタッチしたリキピを回してみると、存外動きの邪魔にならないばかりでなく、青単に従来存在しなかった強い動きを取り入れより多くの勝ち筋を追えるようになった。この試作をきっかけに、その他の色をタッチして入れる準青単を研究した。


まどろみ使用、ベートーベンカップND1700


サークルの後輩に原案を渡したらNDで最終に残ってくれました

3.構築を歪める正当さと功罪

不純物…青かつリキピ、を充たさないカード。ゴーゴンシャックやキクチ、アクア・ハンプティなどがこれに当たる。
不純物の中に特に他の色のカードがあるが、不純物は青でないことが多い。そこで特に断りがなければ不純物と言えば青でもリキピでもないカードを指し、青だがリキピではないカードは青不純物と呼ぶ。ガロウズホールは青不純物である。また、クリスタルジャベリンなど青かつリキピを充たすが採用されにくいカードは定義上不純物ではない。

まず不純物を増やした場合、もとい他の色を足した場合にどれだけ動きの再現性が下がるかを検討する。懸念としては、
①     ジャバキッドの成功率が下がることで手札が足りなくならないか
②     3コスト以下の濁った不純物を採用する場合、それらを色事故なく出したいタイミングでプレイできるか
③     不純物を入れるため減らした分のカードの役割を、足した不純物が補えているか
①     は不純物の枚数次第だが、そもそもジャバキッドで1枚拾えないことがどれだけ痛手か、またジャバキッドが拾う確率を下げたとき許容できるラインはどれほどかを考えたい。前者はアクアガードをプレイしなければデッキとしての動きは悪くならない。ハンマーやエボリューターを出す動きが破綻していないのと同様に、2コス1000が手札を稼がず場に出ている状態は特段問題ではない。問題なのはアクアガードをプレイした場合で、特にエリートの引けていない先攻はガード→ジャバキッド→3コス→ガードにジャバジャック乗せをやりたいのでジャバキッドが拾わないと致命傷になる。具体的には手札の枚数が足りなくなり重要なカードをマナに置かざるを得なくなるのが致命的であるが細かい説明はややこしく本質的でないので省く。上の理由でジャバキッドはある程度の確率で拾えなくてはならないが、このラインはある程度高くなければならない。従来の青単では不純物がゴーゴンシャック4枚のみで、ジャバキッドが拾う確率は単純計算で1-4/39=35/39≒90%。これなら2回ジャバキッドを出して両方拾う確率が80%以上ある上に2回とも落とす確率は1%程度となる。しかし拾う確率が60%以下になると2回ジャバキッドを出して両方拾う確率は40%を切り、また両方落とす確率も16%程度と現実的な確率になる。拾う確率があまり低すぎるとガードをプレイしにくくなる上、場に2コスを並べることすら困難になりかねない。②との兼ね合いもあるが、自分の回した体感では少なくとも70%で拾えてほしい。すなわちデッキの不純物は多くとも12枚程度でなくてはならない。

②     解決のためには逆に不純物の枚数を増やさなくてはならない。3コスの不純物(例えばキクチ)を3ターン目に安定してプレイするためにはキクチと黒マナ両方を3ターン目までに引かなければならない。ただ、これは黒マナ10枚では45%程度でしか達成できない(計算過程は複雑なので略)。よって①と合わせて考えると3コストのキクチを安定してプレイするのは難しい。青不純物は②の問題がないので採用しやすい。

③     不純物を多く採用しようと思うと本来の青単に入っているカードをより多く減らさなくてはならない。2コスを10枚以下にしなくてはならなかったり、ブラザーズが不採用になったり、進化クリーチャーを削らなくてはならなかったり。唯一手札からプレイしないサーファーの枠は削っても直接は動きに影響が出ないが、キクチなど3ターン目にプレイすべきカードを採用するためには動きの本筋に関わるカードを削らなければならない。

以上①~③の問題を解決した上で、不純物を入れるに値する強さを発揮するカードを採用しなければ青単の劣化である。
これらの推論を経て私が考えだしたのが5コスでSAの出せるホール呪文―ミカドホールとシューティングホール―をサーファーの枠に4枚だけタッチする方法である。3コストでプレイする以外あまり強くないキクチのような不純物を諦め、不純物の枚数をシャックと合わせて計8枚とした。これによりジャバキッドが拾う確率を80%程度まで上げられる上、5コスホール4枚タッチならジャバジャックの手札交換により色マナを引きながらジャバジャックの次にプレイできる。また、元々動きに関与しなかったサーファーの枠しか削っていないので青単本来の強さもほぼそのまま残している。そしてミカドホールとシューティングホールは採用する価値のあるカードである。


再掲


刃鬼カップ序盤で瞬間レジェンド
コダマンマがリソース取れるので①解決

4.採用候補カード紹介

基本的なカードは青単のnoteを参照願う。
【青単noteへのリンク】
ここでは特筆して解説すべきカードと、考察したカードについて細かく記す。

[黒]

キクチ師範代
事の発端。ビッグマナ相手への最もよくある負け方はトリガーブーストからリュウセイホールや永遠リュウが間に合ってしまうことだ。そのため、ブーストトリガーを封殺しながら殴れれば勝率を上げられるだろうという算段でキクチ入りのリキピを試した。もちろんキクチは想定通りの強さを発揮したし、ミルザム、シューベルトの盾追加やベリアルワームの墓地肥やしなど幅広いメタ範囲で汎用的に活躍した。しかしキクチを安定してプレイできない、キクチがいてもMRC対面は結局変わらない、ビッグマナ系統は青単に寄せていないディメンジョン系が増えたことなどから最終的には青単そのものの強さと再現性+ホール呪文のカードパワーできちんと勝つ方が強いと判断した。
もちろんキクチ入りのリキピは強い。

ミカドホール
ジャバジャックから自然につながり、進化即攻撃を軸とするリキピと5コスで手札1枚からSA勝利ガイアールを出せるという点で青単ジャバジャックというデッキと噛み合っている。これはシューティングホールも同様である。ミカドホールならではの強さとして、ミラーにおける一方的な2面除去とガンヴィートによる永遠リュウや大型クリーチャーの除去、そしてジャバジャックから繋いで確定で覚醒するランブルの存在がある。
特筆すべきはミラーでの除去で、青単ミラーはしばしば打点を溜めて睨みあう展開が起きる。ヴィルヴィスで盤面を退かせない場合やブラザーズをケアする場合などだ。この睨みあいにおいてミカドホール+サンダーティーガーによる二面除去は致命傷を与えうる。特にブラザーズをバウンスではなく除去することで相手の勝ち筋を厳しく細められる。
勝利リュウセイ、ガイアール、ガンヴィート、ランブルのどれも青単にない要素として勝ち筋に大きく貢献してくれた。

ディスメルニア
ジャバキッドで拾える黒マナであり、ミラーなどで大型と相打ちを取ってアドバンテージを稼ぐことが出来る。見た目以上に強いカードだったが多色濁りがあまりにも厳しかった。まず、濁りを回避するためには使用可能マナを増やさなくともよいターンが必要だが、ガード→2コス→3コス→4コス進化と動きたい本デッキでは多色を逃がせるターンがない。おまけにジャバキッドで回収したとてその次にキクチを出すのには使えない黒マナである。濁りが致命的で、それを上回る強さがなかったので不採用となった。当然、2コスでプレイできる試合は殆どない。

スタートダッシュリバイバー
ジャバキッドで拾える黒マナであり、エリートを軸にする青単ジャバジャックとの相性は良い。また、ジャバキッドが落としたキクチやシャックを蘇生できる点も噛み合っている。
あくまでリキピを軸にすると能動的に墓地に落とす手段が少なく濁りもあって意外と使いにくいカードだが、メルゲやコンクリオンと合わせると真価を発揮するカードである。

ザビデモナ
黒マナかつミラーに踏ませたら勝ちのトリガー、さらに手札から出しても赤ヤヌス+2コスリキピで覚醒させてSAを作れる、腐りにくいトリガーとして一時期採用した。しかしそうはいっても結局手札から使う機会はほぼなく、リキピを削るほどの活躍を見せなかったので最終的には不採用になった。

[赤]

シューティングホール
5コスで即時打点を形成でき、またブロッカー破壊によるゴリ押し性能も高いカード。単純に中速ビートダウンとすこぶる相性が良い。シューティングホールならではの強みとしてエビセンを出せることがある。MRC対面でエビセンが非常に強力なのはもちろん、実質的な除去耐性持ち2打点は同じく無敵のジャバジャックと並べると手の付けられない無敵艦隊となる。

キルホール
このカードの強みは3ターン目に撃てればMRCのベリアルワームを破壊して墓地肥やしを阻害できることと、それが出来なくても十分に強いことだ。3ターン目でないとあまり強くないキクチと異なり、キルホール赤ヤヌス+2コスリキピでヤヌス即覚醒という他のホール呪文同様5コスでの動きがある。また3コスキルホールでジョン→エリート進化or2コス2面展開で覚醒を簡単に狙える点も強い。赤をタッチするなら2‐3枚採用したい。

ジェットドリル
現環境ではキクチ以下のロック性能で、キクチ同様の理由で採用されない。

[白]

白はアクア・ハンプティがジャバキッドで拾える白単色マナであったり湧水でエリートや進化クリーチャーを蘇生できるのが強かったが、これらが即時打点形成に関わりにくいことからいまいちデッキパワーが上がらず、タッチで白を入れるなら普通の青単の方が強いと感じた。
白入りのリキピは他の方が研究されていて、青単ジャバジャックとは全く異なる動きをするデッキとしてまとめられている。私が今回目指した、青単ジャバジャックの強みを活かした形では白入りは強くなかった。

[緑]

緑で入れるべきカードはなかった。2コスブーストが引ければ3ターンジャバジャックが出来て強いが不純物を多く入れなくてはならなくなる。その他の緑のカードはミカドやシューティングより使い勝手が悪い。そもそもマナを伸ばしたりパワーを上げたりする恩恵を受けにくいデッキであり、緑との相性は悪かった。
3コストの母なる大地があれば4枚採用する。

[青]
青不純物は採用しやすいがNDでは強いカードが少ない。
コンクリオン
青単で苦しいクリーチャー型MRCへの簡単なメタで、2コスゆえに出しやすく邪魔になりにくい。ADではマーキュリーがいるので進化元として活躍するが、結局クリーチャー型MRC対面のハンデスやトリガーをケアできないので個人的な評価は低い。

エクストラホール
ガガパックンを出すことで5枚目以降のゴーゴンシャックとして機能する。また簡易的な墓地メタとして墓地に落ちたMRCを山に戻せるのでヤミノオーダーをケアしながらMRC側の対処しにくいアンタッチャブルを出せるなど意外ときちんとMRCに強いカードである。

ガロウズホール
おそらく最も多く採用されている不純物。永遠を退かしてリーサルに行けるのが大きな強みで、出せるカードも強く、色事故も生まない。しかし6コストでありジャバジャックから繋がりにくいのが難しい。2コストから順当にクリーチャーを展開し続け、進化獣を複数体立てながら6マナ貯めてガロウズホールを唱えようとすると、6マナまで貯めなければならないゆえに5ターン目の動きが弱くなりやすい。ジャバジャックやエリートを複数回プレイできないと、青単とガロウズホールの両方を活かす立ち回りは取りにくくなる。カードの見た目以上に青単の基本的な動きを邪魔しやすいのだ。

5.立ち回り

青単のプレイングの解説は青単noteに回すとして、青単に不純物を混ぜた場合のプレイングを特に解説する。
不純物を入れた際のコンセプトは「青単が強いだけならそれでいい」だ。まず青単のカードで勝てるなら無理に不純物を使わない。不純物はあくまで青単では対処できない場面で使うという意識でプレイするべき。
最初の方に引いてしまった不純物はマナに置いてしまってかまわない。青単として勝てるならそれでいい。ミカドホールやシューティングホールはゲーム後半にトップして強かったり、青単では為し得ない除去を行うために採用されている。もとい、不純物のために青単のプレイングが歪んでは本末転倒なのだ。

6.終わりに

青単リキピに限らず世間は初動を減らすなど事故の要因を増やすことに臆病すぎると思います。アガサ天門のボルメテウスブラックなどは最たる例ですが、勝率を上げることが目的なので初動や安定を減らした分以上に勝てるならそれでよく、逆に安定して理想の動きをした上で負けていては何の意味もありません。安定した動きを繰り返していれば勝てるから事故要素を減らすべきなのか、それだけでは勝ちきれないから事故をある程度許容してハイリスクハイリターンのカードを採用するのか。安定という神話は捨てなければならない日もあると私は考えています。

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