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更正保護制度 医療観察制度の概要と、地域社会における処遇や関係機関との関係について述べなさい。

 医療観察法は、心神喪失または心神耗弱の状態で、重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的としている。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われることは、被害者に深刻な被害を生ずるだけではなく、精神障害を有する人がその病状のために加害者になるということからも、大変不幸な事態であるといえる。このような人について、再び不幸な事態を招くことなく社会復帰を促進するためには、継続的かつ適切な医療を確保して、病状の改善を図ることが極めて重要である。
 医療観察法が施行されるまでは、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく措置入院制度等により処遇が行われていたが、問題もあると指摘されていた。
 問題を解消すべく、医療観察法に基づく新たな処遇制度においては、裁判官1人と医師1人による合議体の審判で、処遇の要否及び内容を決定する。医療スタッフや設備を充実させた「指定入院医療機関」を開設し、国の責任において手厚い専門的な医療を行う。地域において継続的な医療を確保するための仕組みを設ける。そして、国の組織として全国的なネットワークを有し、また、地域社会において保健・福祉等の関係機関と連携しつつ更正保護を推進してきた保護観察所が、医療観察制度に関与し、一定の役割を担うこととなったのである。
 本人の円滑な社会復帰を促進するためには、地域社会における処遇の三要素ともいえる「医療」「精神保健観察」「援助」が、統一的な方針のもとで、適正かつ円滑に実施されることが大変重要である。これらを担う指定通院医療機関、保護観察所および都道府県・市町村等には、互いの役割や組織の現状を理解し合いながら、医療観察法の理念を共有し、連携協力して取り組むことが求められる。
 本人の社会復帰を促進するためには、ボランティア活動に従事する個人や民間団体の支援を得ることが重要であり、また、地域住民等の理解と協力を得ることも大切である。

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