ミリオンの重圧

*センシティブな内容を含むので苦手な方はGOバック!












 前回からまた少しあいてしまいましたが、続きから。
お茶引きの売り専人生→売れ始めてから半年程の停滞期をはさんで→とうとうお店のトップに駆け上がったところから。



  お茶引き時代からのRとKの助けもあって、オープンからのバー待機を地道に毎日(予約がない日は)休みなく続けていたおかげで突然の転機が訪れました。

  最初は別のボーイに着いたお客さんでしたが、数回のボーイ複数指名を経て自分に固定になりました。そして、突然そのお客さんからの予約おさえ。月の平日は全部そのお客さんの貸切(平日5日間)。
  土日は今まで指名してくれていた別の2人のお客さんの前延長のロングコース。

   約1年間、そのルーティーンが続きました。  プライベートな時間はほぼほぼなくなり、接客中はお客さんが望む自分像を必死で演じてました。

 時にはお客さんと揉めたりもしましたが、お客さんはずっと切れずにルーティーンを繰り返しました。
  揉め事の原因は大抵

お客さんの
「いつになったらこの仕事辞めてくれるの?」
の一言が発端でした。

  月日が長くなるにつれお客さんの色が濃くなり、自分自身のボキャブラリーの引き出しも減っていったのを覚えてます。最初の頃は上手くかわして切り抜けていたのですが、だんだんとワガママになっていくもので……

お客さんの
「お店に言って俺が一生面倒見るから」(俗に言う水上げの提案)

やら

「お店抜きでお前と会いたいんだよ」

が、だんだんと苦痛になっていきました。

  前述しませんでしたが、過去に水上げされた人やヤミケンをやってた人達を見て来てロクな結果になっていなかったのでずっと断り続けました。
そもそも、店を通さないで金銭を受け取る事のリスクの方が大きすぎると考えていたので自分の中に《水上げ》の選択肢は全くと言っていいほどありませんでした。


  いつしか、そのエース(自分に着いてる1番の太いお客さん)と一緒にいることすら苦痛になってました。
作っている自分が嫌すぎて、お客さんと過ごすのが苦痛すぎて貸切明けでよく近くのビデオボックスに閉じこもって泣き散らかしてたのを覚えてます。


  お店のトップを走り続けてもうすぐ1年が経とうという時、久しぶりに空き時間に事務所の店長に呼び出されてマンツーマンに

店長「ポンちゃん、最近どう?△△さんは。」

自分「変わらずです。店を辞めさせようと相も変わらず誘ってきます。苦痛で苦痛でたまりません。店を辞めて会うって事のリスクはわかってるつもりなので自分は辞めるつもりはありません。でも、毎日のようにお客さんに会いたくないって思ってます。」

店長「そか。でもな、それがポンちゃんが見たがってたてっぺんからの景色よ。しんどい事は金になる。これ、覚えてるか?」

自分「今や座右の銘になりつつあります(苦笑)。でも、適度に売れててRちゃんとかKとかと話せる時間があった頃に戻りたいって思う事も多々あります。もちろん、お茶引きの辛さも知ってるのでその頃にも戻りたくありません。」

店長「まぁなぁ、今はRやKと会う時間もほとんどないやろしな。気持ちは少しわかるわ。だけどな、1度掴んだもん手放したら後悔するで。これだけは言っとくな。それに、美容室も△△さんと一緒にいつも行っとるしご飯でも服でもお金使う事も無いから貯金もだいぶ貯まったやろ。」


(売れる為には身だしなみを整える事が基本だった為、美容室は少なくとも月2回以上、洋服にもエースが自分につくまではそれなりにかけていた。指名中発生する飲食代などはお店のルールで基本お客さん持ちになっている。自分で出費することは無いが何かをねだるのは綺麗じゃないので基本的に自分はチップや高級な物などは断っていたし、興味もなかった。)

自分「キャッシュカードで預金はしてるけど、もう通帳記入しばらくしてないのでざっくりしかアレですけど……かなり貯まったと思います。△△さん、いつも頑なに断ってるのに美容室に連れて行かれるし、ご飯はいつも高いところだし、服も全然興味のないの(高級ブランド)をいつも両手いっぱいに買い与えて来ます(苦笑)。もう、たまに自分がリカちゃん人形かなんかなんじゃないかって思うくらい嫌です。」


店長「(爆笑)。でもな、ポンちゃんあの人センスいいで。ポンちゃんに合う服をいつもコーディネートしてくれてるんよ。ま、馬子にも衣装やけど(笑)。」

自分「あ、やっぱりそう思います?(笑)着てる服絶対身の丈に合ってないんで(笑)自分はUNI○LOとかH&○とか古着とか動きやすくて着れればなんでもいいと思ってるんで。」

店長「あんたのそういう変なところ本当ブレんよなぁ(笑)。でな、話変わるけど実は先月終わりくらいに久々にエラい新人入りおってな。Eって子なんやけど。ポンちゃん、今月今いくらや?」

指名帳は空き時間欠かさずつけていたので

自分「あぁ、たまーにHP見るので写真だけ見た事あります。今月、今○○万です。」

何やら店長も1枚の紙を取り出して、真剣な表情に切り替わる。

店長「そか、やっぱりな。ポンちゃん、今ショート2本分くらい負けてるで。これから大事な話するからよく聞いてな。」

これまで図らずとも守ってきたトップが初めて揺らごうとしていた状況に変な汗が出た。
そして、しばらくの沈黙。声のトーンが変わり、店長が口を開く

店長「ここ1年弱、この店のトップはあんたなんよ。それを守ってきた頑張りはよくわかってるつもりよ。でも、ここに来て初めてそれを超えようとして来てるEがいる。それでな、新人にトップ取らせてもいいんやけど僕の経験から言うと新人でトップとった子でその後ロクな売れ方をした子がいないんよ。」

しばらく、何かを考えているのかしばらく空いて

店長「簡単に言うと、ボーイの寿命が短くなってしまうんよ。それだけじゃなくてな、他の売り専で見ても新人に簡単にトップ取らせるお店は長続きしないんよな。ポンちゃんに僕のボヤきをちょっと聞いて欲しくてな。何が言いたいかわかるな?」

自分「・・・・・・。Eに絶対今月の売上勝てって事ですよね。」

店長「さすがポンちゃん(笑)わかってくれたか。絶対Eに負けるなよ。(めちゃくちゃドスのきいた低いトーン)これ、僕のワガママやけど付き合ってくれるか?(笑)」

自分「全力は出します。でも、いつものペースだと負けるんですよね?具体的に何をすればいいんですか?」

店長「■■さんとか□□さん(売れ始めの頃に何度もよくショートで来てくれてたお客さん)とかに営業かけてみ?ポンいるか〜?って問い合わせちょいちょい来てるんよ。メールは交換してるやろ?」

自分「懐かしいなぁ。■■さんはSEX上手いしタイプだから好きなんですよね(笑)120分で4回とかやってたわぁ。メールは2人とも交換してるんで、ちょっと送ってみます。」

店長「あんたのその情報いらんわ(苦笑)」



△△さんの指名でかなり病んでるところに店長からの追い討ちをかけられた。でも、久々に■■さんとか□□さんの問い合わせがちょくちょくあったことを知らされてヤル気が出てた自分もいた。
心を折られかかってたけど、心の中で《この1ヶ月耐えたら大丈夫》って言い聞かせてそれから作戦開始。


指名と指名の空き時間がほとんど無い状態で必死で営業をかけました。1年弱は○○さんと○○さん(土日前倒しロングのお客さん)、そしてエースの△△さんだけしかほぼほぼやり取りをしていなかったんですが、過去に好意にしてくれたお客さん(■■さんと□□さんを含む)をアドレス帳から引っ張り出して当たり障りのないやり取りをしてました。

気づけば、その月の残りの日数は本当の意味で予約満了。(今まで土日の泊まり前は疲れてるだろうからと店長の判断でショートの予約は一切断っていたらしい。)

メール営業の甲斐もあり、土日の泊まり前にはスパンを開けずにショートを120分、60分、90分とぶち込まれ、それプラスいつものルーティーン。
幸い土日泊まりの○○さんも○○さんも寝る方(泊まりのお客さんによっては一睡も出来ない時もあります。)だったので、最低限の睡眠時間は確保できました。


元々Hは好きだったので(いらん情報)、回数が多いこと自体は全く苦では無かったのですが流石にその月が終わる頃には身体にガタが来ていて、精神はボロボロでした。

その月耐えたら裏取引で店長に翌月初休みを1日貰える予定だったので死にものぐるいでした。

  そして、目まぐるしく時は過ぎ翌月初。
約束通り休みを丸1日。(それまで休みを取りたいなんて言おうものなら、断固拒否されるのをわかっていたのでこの日は待ちに待った日でした。)

  事務所の開店1時間前、ケータイが鳴り店長から呼び出し。
その場にはEもいました。

なんとも言えない重い空気。  

店長「なんで呼ばれたかわかってるな?ポン、E。」

E「……。」
自分「……。」

いきなり声のトーンが変わる。

店長「先ずは、ポンもEもよく頑張ったね〜あんた達(笑)あんたら、約束通り今日1日予約満了にしてあるから羽休めてきなさい(笑)」

Eの指名状況がわからなかったので、気になり過ぎて口が先走る。

自分「それで……どうだったんですか?、結果は。」

店長「まぁまぁ、待ちなさい。とりあえずご飯でも行こか。もちろん僕の奢りで(笑)」

店長の店を選ぶセンスはピカイチだったし、何よりご褒美だったので、自分は快く了承。
Eとはこの日初対面だったのでどんな子かまだわからなかったが、Eも結果が気になる様な表情をしていた。
(この日も近場のめちゃくちゃ美味しい料理屋さんに連れてってもらった。)

ご飯を頂き終え、事務所に戻り少し雑談をしてから本題に入った。


店長「それじゃ、先月の精算しよか。先ずはE、119万4000円。はい、お疲れさん。よく頑張ったね!」

封筒に入った恐らく帯付きと端数が渡される。

E「ありがとうございます!それで、ポンちゃんはいくらだったんですか?」

店長「まぁまぁ、焦りなさんな。ポンちゃん、120万6000円。あんた本当よく逃げ切ったね〜!最後のショートの60分2本取れなかったらEに負けてたわ。」

封筒を頂く。

自分「ありがとうございます(半泣き)良かった……。本当過去一しんどかった……。Eが凄い勢いで来てるって言うからもう半ば意地でした……。」

満面の笑みで店長が続ける。

店長「まぁ、ポンの場合は△△さん1人で全部貸切って手もあったんだけどあんた絶対それは拒否してくるだろうと思ってケツひっぱたいといて良かったわ〜(笑)。E、よぉ見とき。これがうちのトップよ。そう簡単には譲ってくれないみたいよ(笑)。この子意外と負けず嫌いだから。はい、2人ともすぐ銀行預けておいで。そしたらゆっくり今日は休む!以上。」



  張っていた緊張感が一気にほぐれて安堵したと同時にもう相当この仕事がしんどくなっていました。




その日、本当に久々の自由を手に入れたのでやろうと思っていた事を決行しました。


  先ずは、ケータイから仲の良かったボーイの連絡先とお客さんの連絡先、事務所の連絡先先を全て消去。

 その後、ケータイショップに行きケータイを解約。別の番号でまた契約し直しメモリーから地元の友達と家族の連絡先だけを移行。

  次の日、予約がもちろんのこと入ってました。でも、もうお客さんと二度と会いたくありませんでした。

 

そして、その日に誰にも何も言わず全てを投げ出して飛んで実家に帰りました。





おわり。

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