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「三歳児神話」、「タンデム方式」についてディスカッション(2024/5/29)

高橋美恵子『ワーク・ライフ・バランス』p132~149より
今回は「三歳児神話」、「タンデム方式」について報告・議論を行いました。

①三歳児神話

1-1三歳児神話について

三歳児神話は主に3つの内容により構成されている。

  1. 子どもの成長にとって、とくに3歳までの幼少期が重要である。

  2. この大切な時期は生みの母親が養育に専念しなければならない。なぜならお腹を痛めたわが子に対する母の愛情は子供にとって最善であり、女性は生来的に育児の適性を備えているからである。

  3. その母親が就労等の理由で育児に専念しないと,将来子供に悪い影響を残す。

三歳児神話は1960年代に欧米における母子研究などの影響を受け、広まったとされる。1992年の調査では9割近い既婚女性が「少なくとも子どもが小さいうちは,母親は仕事をもたず家にいるのが望ましい」という考えに賛同している。
また、専業主婦は育児に専念するのが当然であり、自分の時間を持とうとする専業主婦を自分勝手と見られるケースもある。

こうした三歳児神話は「厚生白書(平成10年版)」において既に、「三歳児神話には,少なくとも合理的な根拠は認められない」と否定されている。
母親が育児に専念することは歴史的に見て普遍的なものではなく、たいていの育児は父親によっても可能である。むしろ保育者や地域社会など多くの人と共に子どもが育つ環境がより望ましいとされている。

子育てに他人の手を借りずにやり遂げるのではなく、専業主婦であっても保育所など保育サービスを利用し自分の時間を持つ。これにより適度にストレスを発散し、より豊かな心で子どもと接することが重要とされている。

1-2大学における三歳児神話への認識

東京都内の大学に通う大学生女子99名を対象とした2019年の調査。
三歳児神話を知っているものは99名中、47名。そのうち、三歳児神話に対して、「全く賛同しない」は9名、「あまり賛同しない」は21名、少し賛同するは16名、「非常に賛同する」は1名だった。否定的な回答が30名肯定的な回答が17名となった。
このように子育てにおける女性以外の役割の重要性は多くの大学生女子に認識されている一方で、幼少期における母親の存在を重視する傾向や、保育所へ子供を預けることへの否定的な態度は根強く残っている

1-3議論で出た内容

  • 三歳児神話があるから、育児への予想される負担が強く、子どもを生む意欲が減退

  • 幼稚園のシステム自体が三歳児神話がベースにある?

  • 団塊世代が生まれた後に出生率が下がったのは三歳児神話が流行ったから?

  • 三歳児神話は母親の育児を重視、父親は育児から遠ざける
    → 子供の増加は母親だけの負担増を意味するから、母親が子どもを欲しがらなくなる

  • シングルマザーで育った子供がまっすぐに育つとは限らない

1-4参考文献

  • 大日向雅美「三歳児神話とはなにか」2001、『助産婦雑誌 55巻9号』、医学書院

  • 厚生省「厚生白書(平成10年版)」1998

  • 齋藤慈子、江嵐彩香、木村めい「大学生女子における三歳児神話の認識」2019、『日本心理学会大会発表論文集 83巻』、日本心理学会


②タンデム方式

2-1タンデム方式について(テキストに書かれていた内容+α)

本文では「責任が重く、仕事量が多い管理職ポストを、二人のパート勤務でジョブシェアリングする」方式。「個人のライフスタイルに合わせた働き方の選択を可能にする」。
※「タンデム」とは二人乗りの自転車を意味する。
→ 1人でやる仕事を2人で分けることで、勤務時間を短くしたり、柔軟にしたりできる。
基本的に2010年代に入ってから流行をはじめた。

+αの部分:2013~2015年において、タンデムプロイ社が、タンデム方式を推進するソフトウェアを開発。ドイツにおいて様々な企業がタンデム方式を採用する契機に。

2-2タンデム方式の具体例

①VR銀行 (企業概要:ドイツの協同組合銀行に向け、市場サービスを提供する組織)
導入動機:「企業構成員の年齢構造の影響により、パート勤務に移りたいという希望が 年々増加しているため」
→ 年齢構造って具体的にはどんな?
パターン1:経験に差がある二人組。ベテランと若手の混合など。
パターン2:育休(親時間)を終えて会社に戻る人が、パート勤務にやりがい求めて就任。
※パターン2の場合、能力はおおむね同程度。
例:5時間×4日を2人で回す(20時間×2人=40時間)

テュッセン・クルップ社(企業概要:男性中心で保守的だった鉄鋼企業)
導入動機:2000年代以降のダイバーシティ・マネジメントへの対応の一環
例:1人は週24時間で15時には帰宅、もう1人は週20時間(家で可能な仕事は在宅勤務)

バイヤースドルフ社(企業概要:ニベアに代表される化粧品を作るメーカー)
導入動機:会社および人事執行役員の推進(役員自身もタンデム方式を採用)
例:元々の仕事量100%に対して、2人が60%ずつ、計120%担当
①②においては基本的に「ジョブシェアリングが向いている二人組か = 一緒に働いてギスギスしないか」という確認がなされている。③の場合は前例は無かったが、役員が実践したのがキッカケで、周囲から認められるようになった(→ケイパビリティ)といえる。

2-3.具体例が導き出した、タンデム方式の利点

  1. 人間関係が密接になるため、部署全体の雰囲気が良くなる

  2. 責任者2人のうちどっちかは必ずいるので、職場の安心感が確保される

  3. 仕事量が半分、勤務時間が短縮されているものの、やりがい自体は損なわれない

  4. 定期的な仕事の交代に伴い、1人では思いつかないアイデアが出てクリエイティブ

  5. 仕事量の増大にも対応できる

  6. 育休を経てからでも社会復帰が可能など、一人一人にあった生活に対応

2-4参考文献

田中洋子「ドイツ企業の管理職における短時間パート勤務とジョブシェアリング : 企業調査からみる働き方改革の実態」2020、筑波大学人文社会科学研究科 国際地域研究専攻、https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/54497



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