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「ディーセントワーク」、「ケイパビリティ」についてディスカッション(2024/4/24)

高橋美恵子『ワーク・ファミリー・バランス』p1~21より
今回は「ディーセントワーク」、「ケイパビリティ」について報告、議論を行いました。

ディーセントワーク

まずは本文において用いられた際のディーセント・ワークの定義を振り返ってみよう。
ILOで述べられた際の定義としては、「全ての人の権利が保障され、十分な収入を生みだし、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」。
いわば「働きがいのある人間らしい仕事」を意味している。
decentに「きちんとした」という意味があることに由来している。
また、EU圏においては11時間の勤務間インターバルに加え、年に最低4週間の有給休暇を取得するように求める動きがあった。
一方で日本では「働き方改革法」により、勤務間インターバルが努力義務化されている。ただし効果は限定的である、との内容であった。
本文ではこれを「ワーク・ファミリー・バランス」の側面から照らし出していたが、そもそもディーセントワークについては、そういった家庭を築き上げるのが難しい障がい者にも当てはまるべきとされている。
そもそもILOの組織について「障害者のディーセント・ ワーク推進を担当しているのは WORKQUALITY Department の Gender, Equality and Diversity and ILOAIDS Branch である。
つまり、多様性(Diversity)および 公平性(Equality)が尊重され、あらゆる差別を撤廃した職場を実現し、労働の質(Quality)を改善するという面から障害者に向き合っているのである。」と述べられている。
これにもとづく国際労働基準に関しては複数個その旨が定められており、なかでも障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する法律は日本も批准している。
その内容としては、障害をもった結果「『……適当な職業に就き、それを継続し、それにおいて向上する見込みが相当に減少している者』のために適切な職業リハビリテーションの対策を講じ、雇用機会の増進に努めるもの」であり、「適切な雇用と社会統合を確保する」ために定められたとされている。
なお上記の条約は159号条約と呼ばれているが、その159号条約などをベースに専門家が作った指針が”ILO code of practice Managing disability in the workplace”である。
これについては「政労使それぞれの責任と義務、職場で求められる取り組み、採用や昇進、リハビリテーション、サポート体制を含めた対応と調整、情報の機密保持など、多岐にわたって具体的な指針が示」される事によって、ディーセントワークの確立を図ろうとしてきた側面があるといえる。

・参考文献
氏田由可(2023)「障害者のディーセント・ワーク実現に向けた ILO の取り組み」『産業精神保健』31(4): 170–174p, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/31/4/31_170/_pdf/-char/ja


ケイパビリティとは何か

「ケイパビリティ」はアマルティア・センによって提唱された概念
capabilityを日本語に直訳すると
「(…をすることが)できること;(…ができる)力,能力,才能,手腕」
と訳される。(ランダムハウス英和大辞典より)
センの提唱した用語としての「ケイパビリティ」は「実行可能な機能の集合」を意味する。
→ これではよくわからないので「機能」について次項で説明。

機能とは何か

人間の生活を構成する諸要素のこと。
「機能」の具体的例には「適切に栄養をとる」、「健康」、「教育を受ける」、「自尊心を持つ」などがある。
人間の生活、あるいは人間の存在そのものはこうした「機能」の組み合わせによって構成されている。
各個人の実行可能な機能の組み合わせが、その個人の「ケイパビリティ」である。

本書の該当部分について

本書8頁において育児休暇制度についてケイパビリティの観点から以下の様に説明されている。
日本において「育児休業制度は整備されており、就労者に取得の権利は認められていても、取得している男性は周囲にほとんどおらず、実行に移せない」。
日本では育児休業制度が整備されているので一見男性でも自由に制度を利用できるように見える。
しかし、周囲に制度を利用する男性が少ないので利用には勇気がいる。そのため日本の男性は自由に育児休業制度を利用できていない。
つまり、日本の多くの男性のケイパビリティには育児休業制度が含まれていないと言える。

・参考文献
牧野廣義「自由・平等とケイパビリティーアマルティア・センの倫理思想」、2006年、阪南論集42巻、阪南大学学会、https://hannan-u.repo.nii.ac.jp/records/170




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