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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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2023年10月の記事一覧

王道ファンタジー×ご当地ものの親和性やいかに⁈ ~佐々木 鏡石『じょっぱれアオモリの星』を読んで~

 最近の私の読書事情を振り返ってみると、思いの外ファンタジー系を読んでいないことに気が付いた。恐らくアニメでかなりの本数を見ているのと、ロングシリーズな作品が多く、手を出すことに少し躊躇いが生じてしまっているからだろうか。ラノベ好きを自称しておいてこの体たらくはありえない。そう発起して久しぶりのファンタジー作品として手に取ったのが今回ご紹介する『じょっぱれアオモリの星』だ。ファンタジーどころか完全にご当地ネタというところに引っ張られてました。  そういった経緯で読んでみると

少年心はいつだって ~朱雀 伸吾『はたらけ! おじさんの森』を読んで~

 前回の本紹介にて題名の話をしたが、その後ふともう1つ、題名で濃い印象を残した作品があったことを思い出した。それが『はたらけ! おじさんの森』だ。本作は本当にたまたま書店に寄った時に新刊コーナーで見かけてそのぶっ飛んだ題名とラノベではあまり見かけない清々しいほどに生き生きとしたおじさん達の表紙。どこかで見かけたフレーズの題名でありながらラノベでは前面に出にくい「おじさん」の異色さが際立つ……。そこで私は悟った。「これは確実に面白い──!」と。 あらすじ ある会社に総務として

目先の君は過去の中 ~四季 大雅『ミリは猫の瞳の中に住んでいる』を読んで~

 物語には必ず題名が存在する。一部例外はあるが題名にはその物語を端的に表すものとなっている。漠然と内容を表す例も多いが中には作中で題名の単語が出てくる、所謂「タイトル回収」が行われることもある。タイトル回収のタイミングは作品によってまちまちなのだが、今回紹介する『ミリは猫の瞳の中に住んでいる』はタイトル回収が行われたであろう作品の中でもトップクラスに印象深い回収だった。一見奇妙な題名ながらも短い時間の中でタイトル回収を行い、最後まで濃厚なストーリーを魅せ続けた。その濃厚さはじ

2つの日常、その交差点で ~扇 友太『ブラックガンズ・マフィアガール』を読んで~

 VRが根を張る世界観と言えばどのようなものが想像可能だろうか? やはり、現代の技術の結晶、誰もが想像しやすい新時代のテクノロジーの代表格ということも相まって近未来風やSFじみた世界観だろうか。どうしたわけか私はこれらのイメージがこびりついていたのか、『ブラックガンズ・マフィアガール』を読み始めた当初、世界観のギャップに困惑してしまった。ゲームでもなくパッと見現実世界のように錯覚してしまうVR世界。しかし現実と別のフィールドである事も納得させられてしまう。それでいて世界観が全

真の師弟は闇の中で ~武葉 コウ『スパイ≒アカデミー』を読んで~

 つい先日まで『このライトノベルがすごい! 2024』に向けての読書集中期間に入っていたためこちらの方を一時停止してしまって申し訳ございませんでした。でもその分得られたものも多くありました。今回はこの期間中に読んだ一冊を取り上げようと思います。この作品に関しては実のところ前々から気になっていたのですが恥ずかしながら読めておらず……。今回の投票を機会に真っ先に読ませていただきました。改めまして今回取り上げさせていただくタイトルは『スパイ≒アカデミー』、先日新たに姿を現した新進気