26.人生の転機

 初めて制服を着て登校した日。
まだ夏服。
白いブラウスにグレーの吊りのプリーツスカート。
白い靴下に黒の革靴。
そして白い帽子に校章。
校章のついた黒のランドセル。
一番最初の学校の時に使っていた黒のランドセルの冠の下の方に校章だけ入れてもらった。
ランドセルのふたの部分。
M学園の生徒は、全員が黒のランドセルと決まっていた。

夏の補習授業は自由参加なので、一度も登校していない子とは、この日、初めて会う。
4年生は全部で27人。
そのうち男の子が9人。

「いいなぁ…新しい制服!」
と駆け寄ってきたのは、補習授業の時に仲良くなったHちゃん。
仲良しの子がいるって、嬉しい!!

私は朝、7:03のバスに乗って、その後電車で学校近くの駅まで二駅。
二両しかない電車の中は、同じ駅で降りるアメリカンスクールの生徒たちでごった返している。

このアメリカンスクールに通う生徒の中に、 “リンリンとランラン” という双子の歌手の女の子や、 “キャロライン・洋子” も乗っていた。
実は、2回ほどノートに、鉛筆でサインをもらったことがある。
3人ともとっても可愛くて、キャロライン・洋子はプラス綺麗なお姉さんという感じ。
日本語も上手で、サインをもらいに行った時も、快く書いてくれた。

学校に着くのは8時少し前。
この時間には、殆どの生徒が登校しており、校庭で遊んでいる。
早い子は、学校の門が開く7:30に来ている。
(今でもその風景は変わらない。)

「おはよー!!
早くおいでよ!!」

私も、ランドセルを教室に置いて、急いで校庭へ走って行く。

早く学校へ行ってみようと思い、たまに6:46のバスに乗って行くのだが、少しでも寝ていたい私にはちょっと辛い。
早く行くと電車はとても空いていて、アメリカンスクールの生徒もいないので、たった二駅、座って行くことができる。

この学校には給食がないため、みんなお弁当を持ってくる。
お昼になるとパン屋のおばちゃんがきて、パンを売りにくる。
パンを買うためには、封筒に欲しいパンの名前を書いてお金を入れて、朝提出する。
注文したパンをおばちゃんが持ってきて、お昼になると各自取りに行く。
私はここの “レモンパン” が好きだった。

メロンパンはどこでも売ってるけど、レモンパンって珍しかった。
レモンの形をしたパンに、甘いレモンの味のお砂糖がかかって、色もレモン色。

「お母さんが週に一回、お弁当作るのお休みするから、その日がパンの日なの。」
と、話している子がいた。
私がそのことを母に言うと、
「それいいわねぇ。
ママもそうしようかしら。」
と、ウチも週に一度、水曜日をパンの日にしようと決めたのに、忘れて母はお弁当を作ってしまって
「パンの日、忘れちゃってお弁当作っちゃった。」
ありがたい事なのに、私はがっかりしてしまう。

Hちゃんは、とても面倒見のいい女の子。
私がお弁当を食べ終わるのが遅くて、一番最後になって、誰もいなくなっても、Hちゃんは待っていてくれた。
「あと3口で食べられるよ!!
あと2口、1口!!
そめ偉いね、残さず食べたね!」

たま〜に、最後から2番目に食べ終わった日は
「そめ、偉いね〜
今日は早く食べられたね!!」
と、私を褒めてくれる。
お姉さんってこんな感じなのかなと思った。

私の食べ終わるのを待って
「早く行くよ!!」
と、校庭へ走って行く。
私たちはよく、雲梯でよく遊んでいた。
みんな思い思いに遊んでいて、サッカーやドッチボール、追いかけっこ。とにかくひたすら全力で走っていた気がする。

私にとってM学園に来たことは、人生の大きな転機。
先生やクラスのみんなとの出会いが、この後の人生にいい影響を与え、そして今の私がいる。
M学園を探してきてくれた母に心から感謝。

…続く……🍱


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