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「経済の活況戻る、ベトナムの所得動向」

<経済の活況戻る>
ベトナムは、全般的に経済の活況が戻っている感があります。一例として、ハノイ特別市(ベトナムの首都)~ホーチミン特別市(ベトナム第1位の経済都市)の航空路線が、世界4位の年間乗客数を記録しました。世界の航空関連情報を提供する英国のオフィシャル・エアライン・ガイド社(Official Airline Guide)が発表した、2021年10月から2022年9月までの1年間の乗客数です。同時期の1位はソウル~済州の1,600万人、2位は東京~新千歳の1,000万人、3位は東京~福岡の980万人でした。

比較的早く観光を再開したベトナムは、国内外からの旅行客も増えています。航空業界は急速に息を吹き返しており、これに伴う航空・空港関係の雇用も急速に回復しています。ホーチミン特別市のタンソンニャット空港では、2020年のロックダウン期は1日20~30便しか運航していなかったものが、1日300便の運航まで戻っているとのことで、ベトナムの航空会社は月次で30,000便以上を運行しているとの記事もあります。ベトナム航空局(CAAV)によると、2022年1~9月の空港旅客数は前年同期の約2.6倍に相当する7,500万人で、このうち国外からの旅客は約19倍の670万人、国内の旅客数は同2.4倍の6,800万人余りとなっています。

<ベトナムの所得動向>
ベトナムでは毎年、ベトナム総務省統計局が「ベトナム家計生活水準調査」を発表しています。全国の世帯を対象に、収入、支出、人口統計、教育、健康、雇用、住居、耐久財、衛生など幅広い項目のデータを収集し、低所得者層から高所得者層を5つのグループに分けて各層の平均所得を報告しているものです。2021年の情報によると、1人あたりの平均月収は4,205千ベトナムドン(1円=175ドン換算で、約2万4,000円)で、2020年対比で▲1.1%となりました。また、都市部の1人あたりの平均月収は5,388千VND(約3万円)で、農村部3,486千VND(約2万円)の1.5倍となりました。2019年以前は1人当たりの所得は継続的に増加傾向にありましたが、2020年と21年は連続して減少しています。

なお、都市部の所得減少率は農村部の減少率よりも高く、2020年と比較すると2021年の1人あたりの平均月収は3.6%減少しました。農村部は非現金収入の割合が大きい、比較的、伝統的・安定的な収入が占めている等の理由から農村部の1人あたりの平均月収は大きく変更していません。

2021 年のベトナムのジニ係数(イタリアの統計学者コラド・ジニにより考案された所得などの分布の均等度合を示す指標で、国民経済計算等に用いられる。ジニ係数の値は0から1の間をとり、係数が0に近づくほど所得格差が小さく、1に近づくほど所得格差が拡大していることを示す)は 0.374で、2020 年の0.373から殆ど変わらず、依然として平均的な不平等レベルにあります。また、所得分配における不平等の水準は、都市部よりも農村部の方が高い傾向にあります。例えば、貧困率が高い 2 つの地域(北部ミッドランドと山岳地帯、および中央高地地帯)は、ジニ係数が最も高い 2 つの地域で、それぞれ 0.428 と 0.418です。南東部はジニ係数が0.322と最も低くなっています。

最後に、東南アジア諸国におけるベトナムについて、簡単に触れておきます。東南アジア諸国では財閥(王族、華僑、印僑、新興財閥などの様々な系譜がある)が富を独占する国が多くあります。それらが経済のみならず、政治をはじめとして国の中枢へ強い影響力を持っている場合が多々あります。ベトナムでも不動産財閥は増えているものの、他の国々と比較すると、異なる様相となっており、億万長者の数はまだ少ない印象があります。

【ホーチミン・タンソンニャット空港】
(タンソンニャット空港ウェブサイトから)

(ホーチミン ビジネスサポーター 石川 幸)

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