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GoToの上場を誇りに、IT業界で躍進するインドネシア

今回は、2022年4月にインドネシア証券取引所に上場したインドネシアを代表する企業GoToグループとインドネシアのIT業界の状況についてお伝えします。

<インドネシアのITに関する変化>
日本の皆様には、インドネシアにITのイメージはあまりないのではないかと思います。しかし、2019年の平均年齢が32歳(日本は47歳)と若者の多い国であるインドネシアは、人々がパソコンを買う経済レベルになる前にスマートフォンが普及し、スマートフォンを使ったIT系のビジネスが次々に生み出される国となり、日本の多くのIT企業がここインドネシアに進出してきたりM&Aしたりしています。
 
<インドネシアIT系企業の星GoTo>
GoToはインドネシア最大のスタートアップであったゴジェックと、インドネシア通販大手のトコペディアの2社が経営統合した会社です。この2社はインドネシアを代表するユニコーン企業(*1)で、ゴジェックは世界に40社程度しかないデカコーン企業(*2)でもありました。企業価値は、イーロン・マスク氏設立の宇宙企業のスペースXや、TikTokを運営するバイトダンスと並ぶ規模で、トコペディアも統合前には同等の規模まで拡大していました。
ゴジェックは、タクシー配車や食事の宅配、電子マネーなど幅広く事業を展開しており、200万人のドライバー(いわゆるバイクタクシーの運転手)を抱え、労働者の所得向上に大きく貢献しました。

【様々なサービスを提供するゴジェックのアプリ】

トコペディアは通販やEC(イーコマース)の大手で、日本の楽天のような会社に近いビジネスを行っています。
 
<インドネシア人にもたらす誇り>
ジョコ・ウィドド政権の大臣はゴジェックについて「ゴジェックはインドネシアの誇りだ」と述べました。これまで、歴史的にも石油産業に関してはシェブロンやエクソンといった石油メジャーがもたらしたものであったし、自動車産業に関してはトヨタや三菱自動車など日本企業がもたらしました。インドネシア人の青年が自国で世界有数のIT企業を生み出したことは、インドネシア人に大きな自信を与えたのは間違いありません。
 
<インドネシア社会にもたらす影響>
今の若者が最も憧れるのがIT業界であり、同時にIT技術者の給与はインドネシアの水準からは乖離して欧米に迫る勢いを見せています。それまでは、日系自動車会社へ技術者として勤めることが最も人気だった状況が一変してしまいました。
2019年10月23日には、2期目に入ったジョコ・ウィドド大統領はゴジェックCEO(最高経営責任者)のナディム・マカリム氏(35歳)を教育・文化相に任命しました。ジョコ政権はゴジェックについて、労働者のデジタル化のモデルケースとして見ており、これまでインフォーマル経済(*3)に属していたドライバーをデジタルで武装させて所得水準を向上させたと評価しています。
 
<資本の力による影響>
最近では、コロナの影響や収益性の問題等で、マッサージ師の派遣や家事代行のサービスが停止され、投資家の影響力を感じさせる出来事が続いています。以前のゴジェックのような「スマホの中にすべてのサービスがある」という状況から、収益性を重視した別の形になってゆくことが懸念されます。

(*1)企業価値が10億ドル(約1,500億円)以上 の非上場企業
(*2)企業価値が100億ドル(約1兆5,000億円)以上の非上場企業
(*3)法的な手続きを取っていない、非公式の企業、活動、労働者によるすべての経済活動

(ジャカルタ ビジネスサポーター 中川 智明)

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