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「EC業界の新勢力・共同購入」

今回は台湾でも最近、特に注目されている消費者動向、共同購入(團購)について取りあげてみたいと思います。また日本では今風に「シェア買い」とも呼ばれていますが、「シェア買い」をキーワードにネット検索をすると、広島県三原市の八天堂がシェア買いアプリを使って販売数を急激に伸ばしたことが紹介された記事にヒットしました。
台湾の政府系シンクタンク、資策会産業情報研究所(MIC)が発表した、2021年度台湾消費者ネットショッピング動向最新調査では、92%の消費者が総合型ネットショッピングモールでのECサイトから商品を購入するとのことで、企業が自社で運営するネットショップ、ECサイトでの購買者(35%)やオンラインデリバリープラットフォームからの商品購買者(28%)を上回ったとの調査結果が発表されています。(インターネット調査、有効サンプル数は2,500人)。また、台湾のオンライン調査会社「東方線上」では、今年の6月に20歳~59歳のネット会員1,000人を対象に、各種購買サービス(プラットフォーム)を利用した共同購入に関する調査を実施したところ、68%の消費者は何らかの共同購買グループに加わっているとのことでした。また、その内の8割が3か月以内に共同購入の経験があり、利用頻度についても2週間に1度は共同購入にて商品を購入している割合は50%という結果を示しました。
従来よりある「共同購入」は、その言葉の通り、同じ商品を多数の購買者が集まって購入することで、各個人の購入価格が安くなるという基本の部分は同じですが、今やソーシャルネットワークサービス無しでは生活がなり立たないと言っても過言ではない台湾の人々にとって、オンラインショッピングとソーシャルコマースの出現により実現した今時の共同購入は、日本の「生協」等とは少し趣きが異なります。
 
<共同購入のリーダーがキーパーソン>
ソーシャルネットワークサービスの利用者が多い台湾では、オンラインショッピングの普及とともに共同購入コミュニティ内でのFacebookやLINEアプリを使った購買促進が欠かせません。こうした共同購入コミュニティで購入を促すリーダーがキーパーソンとなるため、販売業者の間でも、こうしたリーダーの動向には注意を払っているようです。リーダーへの報酬は、大抵、販売額に対する歩合制を採用しているケースがほとんどで、相場的には各リーダーの能力に応じて5%~30%のコミッションが支払われるのが普通だそうです。またこうした共同購入コミュニティへの参加者は商品が低価格で購入出来るという本来の目的以外に、個人単独でのオンラインショッピングとは違う人との繋がりが感じられ、オンライン・コミュニケーションという部分にも魅力を感じている参加者も少なくないとのことです。この場合、コミュニティのリーダーを芸能人や有名インフルエンサー達がつとめている場合がよくあります。この様に現代人の消費スタイルの多様化にあわせ、商品の供給側としても、今後こうした共同購入コミュニティと協力して、販売、拡散を図る業者がより一層増えることが予測されます。
実は今回「共同購入」を取り上げてみたいと思ったきっかけがあります。それは、私の会社で取り扱っているワサビドレッシングを台湾のセレクトショップが購入してくれたことです。最初は注文が入り、間もなくして追加のオーダーが入りました。そしてその次は、「今ある在庫を全て買い取るので次回の入荷はいつ頃ですか。」と、この間の流れが非常に慌ただしく、最初はどの様な販売方法をされているのだろうと非常に興味を持ちました。この商品は台湾でも高級食品を取り扱うことで有名なスーパー「微風廣場」でも販売しています。35-40歳くらいの富裕層の女性客をターゲットにしているこのセレクトショップは、「微風廣場」で販売されているという信用度・ブランドイメージにより、台湾ではまだあまり知られていない商品にも関わらず、ご注文頂きました。また、このセレクトショップでは、外国製食品及びヨーロッパの雑貨類を中心に取り扱っており、店頭販売が3割、ネット販売が7割と電子商取引に力をいれられている企業でもあります。こちらのオンラインショッピングでも、共同購入コミュニティをリーダーにとりまとめてもらい、会員に商品を販売しているとのことでした。どの商売でも同じことですが、共同購入コミュニティではリピーター客の有無が特に重要です。少なくとも商品納品後には直ちに次回の入荷スケジュールの問い合わせがあり、実際、会員からの注文も入っているとのことで、このワサビドレッシングを気にいって頂ける台湾の消費者がいるということが実感出来ました。私にとっては心強い経験として、今回のテーマである「共同購入」の余談として皆様方にご紹介させて頂きました。
 
(台北ビジネスサポーター 歐 元韻)


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