見出し画像

恒力集団がSTX(大連)の資産買収、ハイエンド臨港設備製造基地を建設(中国)

中国ポリエステル大手の恒力集団は、今年7月、韓国の中堅造船会社のSTX造船海洋が遼寧省大連市に持つ資産を17億2,900万元(約350億円、1元=約20円)で取得しました。恒力集団は、この資産を活用し、180億元(約3,600億円)を投じて、世界トップレベルのハイエンド臨港設備製造基地(※)を建設すると発表し、大連で話題となっています。

STX造船海洋は、世界有数の造船企業ですが、2012年頃から主力事業が造船不況により深刻な資本不足に陥り、2014年4月に上場廃止となりました。2013年5月より資金繰りが悪化し債権銀行団の管理下に入っていましたが、昨年、STX造船海洋が8年間続いてきた債権団との共同管理(自律協約)を最終的に終了し、社名を「K造船」に変更し、大規模な組織改編を断行しました。

【STX(大連)造船海洋総合生産基地の全体図】

STX造船海洋の子会社であるSTX(大連)もまた、同じ時期から破綻処理を進め、同社の資産のオークションによる企業再生が行われました。こうした一連の破産・清算事件は、中国国内船舶業界で負債の規模が最も大きく、最も複雑な案件で、実に10年以上に渡り、恒力集団の参加によって重要な進展を遂げることができたのです。

建設されるSTX(大連)造船海洋総合生産基地(以下、「STX基地」とする。)は、2006年9月に設立された大連長興島経済技術開発区にあり、造船業の技術水準は同業界では世界トップクラスで、ピーク時には3万人の従業員が働いていたといいます。STX大連グループは、2012年以降、韓国本社の様々な要因により深刻な損失を出し、STX(大連)造船、重工業、海洋重工業、エンジンなど13社が相次いで破産更生法の適用を申請していました。長年、STX基地は放置され、何度も競売が行われましたが成立せず、大量の遊休資産と無駄な資源を抱えることになったわけです。

恒力集団は世界トップ500の企業として、「一滴の油から一切れの布まで」という全産業チェーンプロジェクトによる発展を形成し、特に、造船と海洋重工業分野に広いビジネスの接点を持っています。恒力集団は、STX(大連)の資産を取得することにより、その先進的な産業チェーンや経営理念などの優位性を最大限に活用し、長年にわたり国内外で蓄積した高度な人材と産業資源を結集して、世界的に優れたハイエンド臨港設備製造基地を建設していくとしています。

このプロジェクトは大連市にとって、1,000億元(約2兆円)レベルの港湾設備製造業クラスターの建設を加速させ、製造業にとって基地全体の配置を最適化することを目指しています。産業構造の転換と高度化を推進することは非常に重要であり、「GDP1兆元都市」に向かうための重要な起点となるはずです。

【STX(大連)造船海洋総合生産基地の内観図】

また、2022年7月13日には、省党委員会副書記、市党委員会書記の胡玉亭氏は長興島経済技術開発区に赴き、STX再生プロジェクトを考査し、プロジェクト手続きを迅速に進めること、フォローアップをしっかり行い、力を結集して新プロジェクトを早期に開始させて、生産するための条件を整えることなど、世界的なハイエンド臨港設備製造基地建設に全力を尽くす必要性を強調しました。さらに、長興島経済技術開発区管理委員会は、長興島のハイエンド臨港設備製造基地の発展を全面的に支援し、よりよいビジネス環境のもと、より多くの高品質港湾設備製造企業が大連に集まるよう誘致していくことを伝えました。
 
(※)重機製造、船舶・海洋プロジェクトの建造、海洋モジュール工事などの製造拠点
 
参考記事:百度(画像共)【以下中国語記事】
胡玉亭氏、長興島経済技術開発区を訪問し、STX再生ブロジェクトを調査
恒力集団、STX(大連)の資産を買収し、ハイエンド臨港設備製造基地建設

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?