ぽんこつの扇風機

扇風機を買った。

夏が暑く、室温が33度に上り詰めたので。扇風機はこの時期特にかわいらしい。

私の家にはクーラーが二つ存在しているのだが、一つは開かずの間にあり、開かずの間は文字通り開かないので使えないし、この前ベランダ越しに見てみたら食いかけのカップラーメンを見つけたので開けたくない。

もう一つはもう既に壊れてしまっている。

私ほどの才能を持つ人間ならばチョチョイのチョイで直せる──あるいはトドメを刺せる──が、如何せん金がない。本音を言うと知識がない。真夏日の熱光線に冒されながら機械なんぞバラバラにしてみたら、完成品はクーラーではなくミケランジェロ・ブオナローティの「瀕死の奴隷」にでもなってしまう事は想像に難くない。

中学生のころ、この「瀕死の奴隷」でチンポをいじった事があり、友人とその話をすることになると、必ず決まって「瀕死の奴隷チンポついてんぞ!」と言われる。いまでは私の十八番である。

扇風機の話に戻るが、その扇風機には「弱」「中」「強」の三つのモードがあるが、私の買ったそいつはどうやら極端な奴らしく、「弱」はチンポを回したときに起こる風よりも微弱だし、「強」ともなると、障子に穴が開いた。ちなみに「中」は水族館のチンアナゴのコーナーと同じくらいの風力であった。私は「中」が好きだった。

首を振る機能も無論ある。
しかし、首を振らせると「ギコキガココ」とよくわからない音がなる。例えるなら、死にかけの蝉に「The Chariot」の「Forgive Me Nashville」を歌わせた後の声のような感じである。

この扇風機はこの通り、たいへんなぽんこつである。しかし、私はこの扇風機を購入してよかったと思う。文明の利器の「便利さ」とこの地球にうまれた人間が背負うべき「不便を生きる覚悟」を両方摂取できるのだ。

私はいまこの世で最も神様らしい扇風機と生きている。

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