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完璧なオリエンテーリングを目指して 〜地図読みの先を見越したプランニング〜

本田圭佑:メッシ見てて思うんですけどあんなにサッカー上手かったらそら楽しいやろなと思いますよ。
寺川アナ:…。
本田圭佑:それかめっちゃおもんないか。
寺川アナ:もう、うますぎてってことですか。確かにどういう感覚なんでしょうね…。
(2022サッカーワールドカップ準決勝、アルゼンチン×クロアチアの実況席にて)

完璧なオリエンテーリングができたらどんな景色が見えるのだろうか。果たして面白いのだろうか。もはや面白くないのだろうか。そもそも完璧なオリエンテーリングなんて存在するのだろうか。そんなことを考えたりします。


オリエンティアAdvent Calendar2022の17日目を担当させていただきます、京都大学4年目の平岡丈です。自己紹介遅れました。おかげさまで今年度はインカレスプリントロング2冠することができました。

ここに書く依頼をいただきましてありがとうございます。何を書こうかと迷ったのですが、オリエンくらいしか取り柄のない僕はオリエンくらいしか書けないなと思ってしまいました(笑)。

大学オリエンテーリング生活のまとめとして、オリエンテーリングの一つの要素であるプランニングの理論的な話について今考えていることを書いてみようかと思います。オリエンテーリング中のプランニングの手順とかはあまり表には現れない部分で、他の人がどのようにやっているのかというのがとても気になっているので、話すきっかけ的な考えでここに自分の分くらいは晒してみようと思いました。個人的にはオリエンテーリングの卒論的な感覚です(笑)。

ある一人の大学生オリエンティアは、完璧なオリエンテーリングというのを夢見て、こんなことを考えてオリエンをしているんだなあと流し読みしていただければ幸いです。なんかまじめな記事になってしまいそうな気がして少し悲しい気がします。


【はじめに】


僕が今回書こうと思っているのはルートプランニングの話になります。あくまで僕が今最適なのではないか思っているプランニングの手順です。
人それぞれのやり方があるはずなので、議論するきっかけになったらいいのかなくらいに思っています。そして、重ねてになってしまうかもですが、僕は他の人がどんな感じで地図を読んでいるのかとても興味あるので是非どこか機会があれば話せたらうれしいです。


書くにあたり、理論と実践という二つに分けようと思いました。理論的な話も好きな方は【理論編】から、地図を見るのが好きな方は【実践編】からが良いのかなと思ったりしています。

【理論編】

プランニングの構成

当たり前かもしれないのですが、オリエンテーリングを行う上では「最大限にシンプルに、最小限に詳細に」地図を読むことが必要だと考えています。

座って行う地図読みとは違って、オリエンテーリングをする上で地図を読める時間は限られています。速く、だけでなく上手くなるためには効率よく地図を読まなければいけないと思います。効率よく地図を読む事で地図を読む以外のことに集中できる時間ができ、ルックアップをする時間に使ったり、現地で走りやすい場所を選べるようになったりできるからです。

ここで、効率を求めたプランニングにおいては、なるべくシンプルに読むことによって時間は短縮できると思います。またシンプルに読むことによって確認する事項は少なくなって、スピードを上げることができるということもあるかもしれません。

その一方で、シンプルに読みすぎると、省略されてしまって読み込みが足りない部分でミスをしてしまいます。それは詳細に読み込むことによってミスを減らすことができます。

つまり、’’シンプル’’に、’’詳細’’に、地図を読むことによって完璧なオリエンテーリングに到達することができます。

…。

矛盾しています。

この矛盾のように思えることについて考えるために、地図読みの段階を二つに分けてみようと思います。それは、
ルートレベルのプラン・・・a     と
実行レベルのプラン・・・b    とします。

シンプルさと詳細さの役割をこの二つに分けて持たせ、順を追ってプランニングすることで、シンプルに読む骨格の部分と、詳細に読む肉付けの部分というのでプラン上での詳細さのメリハリを自然と差を作ることができ、「最大限にシンプルに、最小限に詳細」にプランニングができるのではないかと考えました。

a.ルートレベルのプラン
シンプルで幅を持ったルートの骨格を作ります。
なるべくシンプルに地図をとらえて幅のあるラインを引きます。大体こんな感じで行くというのがわかれば十分です。具体的には【実践編】のところで書きます。それぞれのラインに幅を持たせ、詳細に考え込まないことで素早くルートを決めることができます。それとともに、この段階では広い視野で考えるので検討するルートの抜けがなくなると思っています。

概要としては、大きな地形、強いラインを拾って、それらをアバウトにつなぐイメージです。アバウトなつなぎの部分は、「大体直進する」、「大体ここら辺の切通をつなぐ」という感じです。これを1レッグごとに組み立てていきます。

b.実行レベルのプラン
選んだルートの骨格に肉付けをしていきます。
①で選んだ一つのルートのみについて、幅を持たせてラインを引いた部分を詳細に一本の線にしていきます。「大体直進する」の部分を、「ここで道を外れてここを目指して直進する」、「大体ここら辺の切通をつなぐ」の部分を「この切通に直進で乗り換えて、ここまでたどってここからは等高線をなぞってこのラインに収束する」といったようにそれぞれのブロックを詳細なものに置き換えていきます。これは幅を持った部分を手前から一つずつ置き換えていきます。


実際には、a.→b.という流れでプランニングを進めていきます。
ぼんやりした骨格だけで見込みのある骨格を判断して、肉付けをしていくというイメージです。具体的には【実践編】の前半に書いています。


これを考えることよって、

1.速く正確なプランニング
2.無駄のない先読み
3.スピードを上げたオリエンテーリング

という話につながっていくと思っています。

1.速く正確なプランニング
ルートチョイスと実行において、極端には、「ルートチョイスの段階においては、俯瞰していればよい」一方、「実行の段階おいては、その場その場だけを見ていればよい」と言えるのかもしれません。俯瞰できていることによる抜けのないルートチョイスと詳細が見えていることによる正確な実行が短い時間で同時に成り立つのではないかなと思っています。


2.無駄のない先読み
先読みする必要があるものは(極端に言うと)「1レッグ先のルートレベルのプラン」と「1ブロック先の実行レベルのプラン」だけだと思っています。プランを二つに分けることでこれがうまく整理できるのではないかなと思いました。ある意味で貯金を作りすぎない方が効率がいいという考え方な気がします。

まず、なぜルートレベルのプランは1レッグ先なのかというのは、次のレッグに入った時にすぐにそのレッグのナビゲーションに移れるようにするためです。1ブロック先の実行レベルのプランが追いついていたらポストについた瞬間に走り出す事ができます。

そしてなぜ実行レベルは1ブロック先なのか、なんでたとえば3ブロック読みためないかというと、3ブロック先の詳細なことについて考えてもまた結局、後で「なんだったっけ」と考えることになって先読みが無駄になると思うからです。詳細なことを考えるには1ブロックくらいがちょうどよいと思っています。

例外として、たとえば長い道走りとかで貯金を作れそうなときは「5レッグ先のルートレベルのプラン」と「道走りが終わった後1ブロック先の実行レベルのプラン」とかを持っていたりする時もあります。それでも実行レベルのプランは 1ブロックしか読みためないつもりですが。。


3.スピードを上げたオリエンテーリング
「1レッグ先のルートレベルのプラン」と「1ブロック先の実行レベルのプラン」だけわかっていればよいと割り切ったら、それが作り終わったらあとは基本的にはそのブロックでは自由に時間を使う事ができます(ルックアップとか現地→地図対応とか足元とか)。そんな感じで進んでいると、そろそろ地図を読まなきゃという瞬間が来るはずで、その時にまた「1ブロック先の実行レベルのプラン」を考えることで同じ状況になります。これを繰り返していったら、確実にプランを持っている状態でスピードを上げて走れるのではないかなと思います。


【実践編】

具体的なレッグについて考えていきたいと思います。

プランニングの手順

ICL2022のロングレッグについて見ていけたらと思います。

2022ICL 15→16

地図読みの手順の概要
①ラインの抽出
②「大体」で間をつなぐ
③ルートを選択する
④選択したルート上で幅のある部分を手前から順に1本の線に置き換える
という手順でプランを立てていきます。具体的に話していきます。

まずはルートを選択します(ルートレベルのプラン)

①ラインの抽出
大きく見てレッグ線方向に伸びていくようなラインを抽出します。ここで見るのは大きな地形(ロングレッグであったら計曲線レベル)地形的なライン、強い道、植生界などになるかなと思います。
ここでは計曲線をオレンジ、パッと目に入るラインを赤(強いのは濃く、弱いのは薄く)で描きました。これくらいを把握してルート検討に入る気がします。

①大きな地形とラインを抽出する

② 「大体」で間をつなぐ
その間を幅のあるラインとして設定します。大体何をしてつなぐというのは考えている気がします。(大体直進とか、大体同じ高さを走るとか)繋いだものを黄色として書き出しています。

②幅のある線で間をつなぐ

③ルート選択
不完全なままの大体のルートから好みとか経験とかでルートを選択します。(プランニングの手順について書くということで今回はこの部分には特に触れません。)ここでは黄色で書き出した3本の中から、真ん中ルートを選んだとして話を進めます。

選択したルートのみについて具体的に考えていきます。(実行レベルのプラン)

④幅のある部分を手前から順に一本の線に置き換える
手前から順番に、幅を持たせて組み立てた部分に具体的な一本の線を引いていきます。何を見るかまでを考えながら線にしていきます。考えるブロックを黒で仕切り、水色で線を書きました。この後のレースでのプランニングにつなげるために、線への置き換え作業は手前から行っていきます。

④幅のあるラインの上に詳細に線を引いていく

これで一本の線が完成します。

レース中におけるプランニング

上のレッグを含む前後3レッグでレース中のプランニングについて書いてみようと思います。

レース中は、いわゆる地図読みとは違い、読むタイミングが自由なので、必ずしもレッグごとに詳細なプランが完成する必要はないと思っています。【理論編】における「 1レッグ先のルートレベルのプラン」と「 1ブロック先の実行レベルのプラン」ができていれば良いという立場で、時系列にしてみたいと思います。

下の図は地図読みのが完了したと想定して一本の線になっています。この一本の線をどのタイミングで作っていくかという話になります。

14-17の具体的なルートとプランの分割

 プランニングの段階を上からの時系列にして表すと下の図のようになります。基本的に、ルートレベルのプランニングがそれぞれのレッグの1つ前に、実行レベルのプランニングがそれぞれのブロックの1つ前にくるようにタイミングを見ます。

時系列:上から下に時間が流れる

例えば、上から1つ目の青い横線を入れた時点での頭の中はこんな感じな気がします。

青△の時点での頭の中のプラン1

この時点では地図を読む必要はないと割り切ってポストでも止まらずに走り続けたと思います。

上から2つ目の青い横線を入れた時点についてです。

青△の時点での頭の中のプラン2

この時点で、次のブロックである、16へのアタックの部分を読まなければいけないと思い、アタックポイントの設定、具体的に見えるものを想定したと思います。


補足
・よく言われる、「シンプリファイ」という部分に対応するのが①~④の部分(ルートレベルのプラン)で、「ラインО」というのに対応するのが⑤の部分(実行レベルのプラン)なのかなと思いました。

【欠点】

今までに発覚しているこのプランニングにおける欠点に、線状特徴物が少なく、点状特徴物の多いテレインで地図が読めないという状況になる事です。その場合、プランの段階では幅のある線のみを引いて、その幅の中を進み、現地→地図を多くするというように例外として対応しています。
他にも抜けがあったら教えていただけたらと思います。

【まとめ】

ルートプランニングについて考えてみました。ひたすら自分のプランニングについて書いたので誰かに伝わって、またそれに関する話ができたらうれしいです。オリエンテーリングにはプランニング以外にも、いろいろな要素があると思うのでそういったものもお話しできたらうれしいです。
(本音:よくわかんない文章になってしまった気がするが、誰かに伝わっていてくれ!笑)

ここまで書いてみてアドベントカレンダーにふさわしいものなのか不安になってきてしまいました(笑)。楽しんでいただけたとしたら幸いです。

ちょっと長くなりすぎた気もしますが、ここらへんで終わりにしようと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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