私と釣り(5)
私の釣りは性格上技術的でマニアックな方向を志向していたが、釣り好き皆が憧れる大物釣りにも向いていた。
当時、俳優の松方弘樹のマグロ釣りはテレビで頻繁に放映されていたし、作家の開高健によるエッセイ集『フィッシュ・オン』では、アラスカでのサケ釣りや、世界各地での釣り体験が語られており、自然との一体感や釣りの魅力について深く掘り下げていた。私はこの作品の愛読者で当然世界各国の大物釣りに憧れていた。
私がこの夢を実現させたのは経済的余裕が出てきた40代後半から50代になってからだ。
しかし、どの大物釣りも次へと発展はしなかった。
どうしてか…?
釣りとしては全く面白みがなく、ただの重労働だったからだ。
どの大物釣りも釣果とのツーショットの写真が話のネタ、経済的成功者としてのステータスにはなるが、釣りとしての面白み(釣り味)としては最低だったからだ。
これらの大物釣りは、見た目には魅力的に見えるが、実際やってみると、囚人に課せられた重労働の刑罰か、罰ゲームのようなものだった。
少なくとも私の目指す釣りではないと、早々のうちに悟ってやめてしまった。
このあたりから私の釣道は帰り道を歩み始めたようだ。
思い返すと、釣りだけでなく私の人生そのものも、ターニングポイントに差し掛かっていたような気がする。
目標を追いかけ獲得する生き方から、そうでない生き方。
他人の評価を気にする生き方から、そうでない生き方。
他者に何かを求める生き方から、何も求めない生き方。
少しずつ、このあたりからシフトチェンジが始まったような気がする。
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