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厩舎力を語る2024


<厩舎力とは>

あけましておめでとうございます。新年一発目の記事のテーマは「厩舎力」。一昨年、Twitterで大きな反響をいただいた「厩舎力」。こちらでは改めてその有効性と狙いについて書かせてもらいます。私が「厩舎力」に注目したのは地方競馬をしていた時、とにかく「地方は厩舎」と言われるように大きな予想ファクターになっています。中央よりもレーススパンが短かったり、同一コースで試行されたりする地方競馬はよりバックボーンが重要になります。その考えを中央競馬に当てはめるのはどうかと、これがきっかけでした。

地方同様、中央も同じ厩舎がリーディング上位に名を連ね、しかも、毎年順位に大きな変動はありませんでした。一方で、地方と違い、中央競馬はコースのバリエーションが多く、上位厩舎をベタ買いしてもうまくはいかないということも肌で感じました。そこでふと思ったのは「コースによって傾向があるのではないか」ということでした。と、ここで目線を少し変えてみましょう。下の表をご覧ください。

<2023年生産者リーディング(トップ15)>

こちらは2023年の生産者リーディング。これを見てあることに気づかないでしょうか。そうです、社台系の圧倒的な強さです。なんとなく知ってはいたものの、こうしてみるとよく分かると思います。1位ノーザンFの獲得賞金は182億、2位社台Fは85億、5位社台Cは16億、8位追分Fは11億となっています。社台グループでトップ15全体の7割以上の賞金を稼いでいることになります。ちなみに2022年のノーザンFは159億、社台Fは72億、社台Cは20億、追分Fは13億、社台Cと追分Fは減少したものの、ノーザンFは23億増、社台Fは13億増と勢いは増しています。

この裏にはあるのは大規模な施設や育成のノウハウ、有能な人材に加え、揺るぎない血のサイクルを作り出すシステムなどがあります。良血牝馬を多く取り入れ、有力と見れば国内外問わず種牡馬として買い取る経済力。そして活躍馬は種牡馬となって再び有力産駒を送り出してくる。2023年の種牡馬リーディングのトップ11はすべて社台スタリオンステーションで繋養(ディープインパクト、ドゥラメンテ、ハーツクライは除く)されており、12位へニーニューズは優駿スタリオンステーションと、結局のところ、上位種牡馬はほぼすべて社台系が管理している状況があります。もう一つ、社台系一強を支えるのが「厩舎」です。ここまで言えばもうお分かりいただけると思います。「調教師リーディング上位=社台系に直結する厩舎」となる訳ですね。

勝てる馬を作り、勝てる厩舎に預け、勝てる騎手を乗せる。厩舎と騎手がワンセットになるのもごく自然な流れとなります。結果として、騎手も厩舎も同じ名前ばかりが毎年上位を占めることになるのです。そして、これが予想において「厩舎力の有効性」に繋がってきます。

では、具体的にどのあたりにアプローチすれば良いのか。一つは「コースによって使い分けること」、二つは「上級戦(賞金の高いレース)」です。JRAを牛耳っているノーザンF生産馬の得意コースが見えれば、当然リーディング上位厩舎の得意舞台も見えてきます。そもそも、元をたどると生産の原点は「クラシックを目指すこと」。となれば、自然と「王道コース」と呼ばれる主要コースは上位厩舎馬が走ってくることになります。「逆もまた真なり」。それとは逆の位置にあるコースは「厩舎力」は問われないということです。

ちなみに私の考える「王道コース」とは、1番人気の好走率が高く、ラスト3ハロンで速い上がりが求められる能力が結果に直結しやすい紛れの少ない舞台、主要血統が走りやすく、ルメール騎手、川田騎手を始めとするリーディング上位騎手が上位を独占する、そういうコースと認識しています。つまり、クラシックが行われる舞台は自然と厩舎力が求められるのです。

<厩舎力の表記>

S評価 ◎ ピンク
A評価 ○ オレンジ
B評価 ▲ 青緑
C評価 ☆ 黄色
D評価 △ 青
E評価 × 灰色
F評価 無 白色

私はJRA-VANを使っているので、視覚的に分かりやすいようにするため、ブログでは予想の際に色別で厩舎力を示しています。ここで一つ、例を挙げてみます。ノーザンFコースと言える舞台に東京2000mがあるのですが、そこで行われる天皇賞秋。ブログで示した近3年の厩舎力を紹介してみます。

2023年 天皇賞秋

1着 イクイノックス(S厩舎)ノーザンF
2着 ジャスティンパレス(A厩舎)ノーザンF
3着 プログノーシス(S厩舎)社台F

2022年 天皇賞秋

1着 イクイノックス(S厩舎) ノーザンF
2着 パンサラッサ(S厩舎)
3着 ダノンベルーガ(A厩舎) ノーザンF

2021年 天皇賞秋

1着 エフフォーリア(C厩舎)ノーザンF
2着 コントレイル(S厩舎)
3着 グランアレグリア(S厩舎) ノーザンF

3年前のエフフォーリアは上位厩舎ではありませんが、他の8頭はすべてSまたはA厩舎。賞金が高いレースはメジャーコースで組まれているため、そこに特化した馬作りをしているノーザンF生産馬の強さが際立っているのが分かります。

ちなみにS~Fのランク付けは年に3回行っており、その都度、見直しをしています。私の独自の視点によるものではあるのですが、2023年1月、S厩舎は10厩舎でスタートし、9月の改訂では9厩舎、直近の2024年1月改訂では7厩舎となりました。ちなみに2023年の芝重賞は114レースありましたが、S厩舎とした9厩舎で何勝したと思いますか?

正解は34勝(うちGⅠは11勝)。190近くある厩舎のうち、たった9厩舎で重賞の約3割、GⅠの半分を勝っているのです。この事実が分かれば、「厩舎力」からのアプローチの有効性は見えてくるでしょう。

皐月賞 ソールオリエンス(A厩舎)
ダービー タスティエーラ(A厩舎)
菊花賞 ドゥレッツァ(D厩舎)
桜花賞 リバティアイランド(S厩舎)
オークス リバティアイランド(S厩舎)
秋華賞 リバティアイランド(S厩舎)
天皇賞秋 イクイノックス(S厩舎)
ジャパンカップ イクイノックス(S厩舎)
有馬記念 ドウデュース(S厩舎)

とまあ、このように考えると中山2000m(皐月賞)、東京2400m(日本ダービー、オークス)、京都2000m(秋華賞)も当然、厩舎力の問われる舞台になる訳で、結果もそうなっています。菊花賞だけはD厩舎が勝ちましたが、このコースは決して王道とは言えない舞台。ただ勝ち馬ドゥレッツァはノーザンF生産馬でした。

「逆もまた真なり」ということで、全く厩舎力の問われないコースについても少し触れます。クラシックコースと真逆に位置するもの。代表的なのは芝の千直ですね。

2023年 アイビスSD

1着 オールアットワンス(D厩舎)
2着 トキメキ(B厩舎)
3着 ロードベイリーフ(D厩舎)

2022年 アイビスSD

1着 ビリーバー(F厩舎)
2着 シンシティ(E厩舎)
3着 ロードベイリーフ(D厩舎)

2021年 アイビスSD

1着 オールアットワンス(D厩舎)
2着 ライオンボス(D厩舎)
3着 バカラクイーン(D厩舎)

これを見れば分かる通り、低厩舎馬がズラリ。一昨年に至ってはF厩舎とE厩舎のワンツーとなっています。厩舎力の問われない舞台では、こうした低厩舎決着も起こる訳です。興味深いですね。またダートに関しても、厩舎力は微妙になります。なぜなら「芝のクラシックを目指して馬作りをしているから」。ただ、一昨年から「ダート厩舎力」にも注目。芝とは別に作成しました。

2023年 チャンピオンズC

1着 レモンポップ(A厩舎)
2着 ウィルソンテソーロ(D厩舎)
3着 ドゥラエレーデ(A厩舎)

表は昨年のチャンピオンズC。ウィルソンテソーロはD厩舎でしたが、レモンポップ、ドゥラエレーデはA厩舎。厩舎力だけでアプローチするのは難しいところはありますが、ドゥラエレーデを推せる一つの要素にはなっていますね。

<まとめ>

今回は「厩舎力の魅力と有効性」について改めて紹介しました。先にも書きましたが、毎年、1月、5月、9月の3回改訂を加えていまして、その都度、S~F厩舎の見直しを行っています。2024年版はホープフルS終了後に作成に取りかかりまして、芝&ダートとも無事完成。昨年の第Ⅲ期(9月改訂)からS評価は1厩舎増え、3厩舎減の7厩舎となりました。ちなみにA評価は9厩舎。私の中ではトップ7で回っていき、第2グループの9厩舎が後ろを支えていくイメージ。今年も上位厩舎で回っていくのは間違いないでしょう。そこに大注目の「福永厩舎」がどう絡んでいくのか。第Ⅲ期の改訂ではある程度、福永厩舎のランクも見えてくるでしょうね。なお、厩舎力については重賞展望および予想の際にブログで示していきますので、みなさんの予想の参考にしてもらえたら幸いです。

それでは今日はこの辺で。今年もどうぞよろしくお願いします!

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