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③叔父さん葬式くるってよ

しつこいようだが
「東京の娘さん」
であるわたしやその家族は病院に入れない。
急いでも仕方ないというわけではないが、午前授業の子どもたちが帰ってくるのを待って実家に向かうことにした。
新幹線を使ってDOOR TO DOORで3時間は近いようで遠い。

支度しながら、弟と手分けして親戚に連絡をする。
なんなら移動中も連絡を取る。

父方の親戚は疎遠だが存命している父の姉弟を無視するわけにはいかない。
尻込みする母となんとなく押し付けモードの弟にさせるわけにもいかず、本家を守る叔父と父とは一番仲が良かった伯母に電話をする。
わたしのミッションは父の死を伝えること、なるべく列席されないように話をもっていくこと。

これだけ長い期間疎遠だったのだ。簡単なミッションのように思われた。
伯母は高齢だからお香典だけ送るとなんなくクリア。
ところが叔父は驚くべき話を繰り出してきた。

「おっちゃんな、1ヶ月半くらいまえに兄さんと電話して会う約束したんや。コロナやからまたにしよか、ってなったけど死んでしまうのやったら会っておけばよかったわ(号泣)」

1ヶ月半前?!
お父さんもう入院してましたけど?!
なんなら目も耳も怪しくて携帯持たずに入院してましたんやで?!

思わず関西弁がうつってしもたわ。
こわこわこわ。

そして叔父は言った。

「行かせてもらいます」

ジーザス。
その瞬間、我が家(正確に言えば心優しいうちの夫)が、叔父担当になることが決定した。

叔父さん葬式くるってヨ。
でも実はわたしはちょっと嬉しかった。実家は父の実家方面からは離れている。
父方親戚が誰も来ないなんてお父さんがかわいそすぎると内心思っていたから。
まあ疎遠になったにはなったなりの長くて深い歴史があり、母の気持ちは理解できるので、ここはひとつ我が家(うちの夫)が人肌脱ぎましょうぞ。

移動中も弟からバンバン連絡がくる。
母のファインプレーで以前から近所の葬儀屋さんの会員になっていたし、お墓は市営墓地だがその墓地にほど近いお寺さんの檀家である。話が早い。
喪主も弟がやるので決まり。

父の訃報から6時間で実家に到着。
その間、泣いたり笑ったり焦ったりしながらあっという間に「東京の娘さん」は「故人の長女且つ喪主の姉」に仕上がった。

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