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⑦父の出発

父は病院から自宅に戻ってきて、約2日間を自宅で過ごした。
昔は宴会に使っていた和室をぶち抜いて6畳側に父、8畳側にテーブルをおいてそちらで葬儀の打ち合わせをしたり昼寝をしたり、父の孫であるうちの子たちや甥姪ははじめは怖かったみたいだけど途中からは平気で和室に入ってきてお線香をあげてみたり鈴を鳴らしてみたり、走り回ってみたり。
みんなが適当に入ってきてちゃんと襖を閉めないものだから気づいたら室温が上がっていて焦ったりもした。

父がセレモニーホールに出発するのはお通夜の日の14時半。
万太郎と運転手さんがきて、ストレッチャーに父を乗せる。
うちの長男もお手伝い。

裏口から出すのがセオリーらしいが母は正玄関から出したいと言いはった。
万太郎によれば足から出せばいいらしい。
そんなわけで正面から出して、一応正面の木戸ではなく、裏の脇口から車に乗せることにした。ビバ日本家屋。

父が建てた築32年の家から父が旅立つ。
貧しい生まれの父が、努力して努力してキャッシュで買った無駄にでかい家から旅立つ。
次に返ってくるときは小さい箱の中だ。

車が見えなくなるまで見送った。

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