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13 不倫男

私は高校卒業と同時に就職、弟と妹を施設に残し、会社の寮に入ることになりました。

当時は寮と言えば「ツルモク独身寮」のような、夕飯と朝ごはんが出る「社員寮」というイメージでしたが、私が入居したのは1Kのお部屋が沢山あるアパートで、そのアパートがまるごと寮という感じでした。

私は高校を卒業したものの、まだまだ子供でした。

毎日寮と会社の往復。そんな決まりきった生活でも、どこか人の温もりや、人の温かさを求めていました。

私は同じアパートに住んでいる男性と、お互いのお部屋を行き来するようになりました。

きっかけは職場で優しく褒めてもらったことでした。他人から認めてもらう事に飢えていた私は、男性の優しさの裏にある下心に全く気付けませんでした。

その男性とは職場も同じで、アパートも同じということもあり、肌を寄せ合うようになるまでさして時間はかかりませんでした。

しかし、その男性は単身赴任中で、奥さんも子供もいたのです。そしてそのことは、私には全く知らされていませんでした。

私は独身寮に住んでいる人は独身だとばかり思い込んでいたのです。

まだ若くて社会経験のない私は簡単にダマされて、もて遊ばれただけでした。

お付き合いしている男性が妻帯者だった。その事実を知った私は何となく会社にいづらくなり、会社を退職することになりました。

私は知人のつてを頼り、保険の外交員の仕事を始めました。

それは私が二十歳になったばかりの時でした。

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