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05 父の死

母が亡くなった後、私達家族の生活はとても荒れました。

父は毎晩のように深酒をするようになり、タバコの量も増えました。家の中にはいつも、タバコとお酒の匂いがしていて、足元にはお酒の瓶が転がり、絨毯の上にはタバコの灰が落ちていました。私は学校から帰るといつも、お酒の瓶や吸い殻を片付け、掃除機で灰を掃除し、窓を開けて家の空気を入れ替えていました。

父はお酒を飲むと、毎晩のように私達3人に説教しました。お酒を飲みながら、タバコを吸いながら、毎晩のように行われる説教はとても嫌な時間でした。

狭いアパートにはモノが沢山あり、子供用の部屋もなく、私達3人は逃げる場所も、身を隠す術もありませんでした。

私達は3人とも、母にとてもよく似ていました。それが余計に父の癪に障るのでしょう。時には激高して手を上げたり、モノを投げつけられることもありました。

反抗すればするほど、厳しい言葉を浴びせられました。言われて一番嫌だったのは「どこの誰の子だかわからねぇ」という父の言葉でした。私たちはすっかり反抗することすらあきらめてしまいました。

この時代の記憶に、私達3人はその後何年も何年も苦しめられることになります。弟はこの時の事を思い出す度に「俺は頭の中で何万回も父親を殺している」そう言っていました。

本家に住む、いとこのお兄ちゃんやお姉ちゃんとも疎遠になり、私達家族はますます孤立していきました。

「死ねば楽になれるかな?」

そんなことを思っていたある日の朝、父が亡くなりました。

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