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【カレーコラム】カレーという言葉の呪い。

郷土料理、地方料理というものは何も日本の国内のことだけではない。
それはもちろん当たり前に皆さん理解ができるであろう。しかし、である。

皆さんもご存知の牛丼チェーンの松屋。その松屋から、心からまさかと驚いたジョージア(グルジア)料理の全国展開が決まり、滑り出しも順調、どうやら大人気の様子。

本国からテレビ取材チームが来日して撮影をしているというニュースも出ている。
しかもその料理「シュクメルリ鍋定食」のポスターには「松屋世界紀行」という文字が躍る。次を、その次を期待せずにはいられない。第一弾が、日本で知る人は残念ながら多くはないであろう旧ソビエト連邦領のグルジア地方(現ジョージア)というチョイス。その先には何が待っているのだろう。

松屋の企画開発の方々の中に、どうも趣味人がいるのではないかとわたしはにらんでいるのだが。

そしてサイゼリア。もともと少しづつイタリアの郷土料理に目を向け、新商品のリリースなどしていた下地があったのだが。イタリア料理通の友人からも聞いたことがないアドリア海沿岸の郷土料理が大胆にもメニューに追加された。

その名も「アロスティチーニ」。羊のスパイス串焼きである。こちらは販売早々売り切れの嵐。素材調達が間に合わなくなってしまったようで、驚きの一旦終売という結果になった。サイゼリヤ自身もこの反響に驚いているようだ。

悪い意味ではなく、ファミリーレストランとファストフードのレストランは外食のボトムを支える主力である。つまり三角の底辺、イコール1番広い辺に満遍なくこういうものが広まり、受け入れられる時代がやってきたという意味だ。
乱暴に分けよう。中国、イタリア、フランスとインド。韓国と台湾。それ以外の国の外国料理の日本での新時代である。

いまだその言葉を怖がる人も多いのだが、事実上日本は移民の国だ。なりつつあるのではない。もうそういう国だ。古くは自動車や楽器の工場で働くブラジルの人々、飲食で働くインドやネパールの人々。インドの人々はIT技術者の人も大きく増えており、中国や台湾からやってくる留学生の人々は富裕層の子女も多いと聞く。わたしの世代の家庭では子供のクラスに数人の外国人がいることが当たり前になってきている。わたし自身も10年前にはこれほど外国人の友人が増えるなど思ってもみなかったのが正直なところである。
世界の郷土料理の時代がやってきて当然の時代なのだ。

そこでカレー。

カレーという言葉は呪いの言葉なのだ。

あれもカレー、これもカレー。カレー味の〇〇とか。あ、それも見た目がカレーに似てるしスパイスの匂いがするからカレーだよね。そういう呪いなのだ。

でもそのカレーに似たものにはカレーという名前ではない正式な名前があって、例えば本国、インドラジャスターン州の言葉で本来の料理の名前を持ち、その意味は〇〇の煮込みだったり〇〇のスパイス炒め××風だったりする。
日本人だけがこれをカレーと決めつけるのだ。

たとえばだご汁とか瓦そばとを指差した外人が「ワショク」といってたらその郷土生まれの人は「違う違う、そうじゃなくてこれこれという名前なんだよ」と必ず説明したくなるのではないか。そうに違いない。
日本人がどれもこれもを「カレー」と呼ぶのは悪いことではないけれど正しいことではないのだ。カレーライスの文脈で他国の郷土料理を呼ぶ。今やっていることはそういうことだ。

そこでわたしごもう3年ほど提唱し続けていることがある。
いったん「カレー」と「外国の郷土料理」を切り離して考えてみてはどうだろう。カレーはカレーライス。ニッポン固有の料理。ニッポンのカレーライスとして捉える。インドカレーと呼んでいたものもタイカレーと呼んでいたものもカレーライスで括るのはやめて、たとえばインド、ビハール州の野菜の炒め煮、のような呼び方をしてみる。するとカレーではないものという認識とともにビハール州ってどこの国?インドのどこだっけ?どんな食べ物なんだろう、とカレーで括っていたときとは違う興味が湧いてくる。

全員が一度にそうなれば、とは考えていない。誰かが「それ、カレーライスじゃないよ、インドの東の郷土料理」と声に出して教えてあげるともっと面白くなるのではないだろうか。

それをやった上でもう一度、偉大な言葉、呪いでもあり魔法でもある言葉の「カレー」でくくり直す。すると今まで混沌としてきたものがすっきり、みやすくなっている。

そろそろ時期なのではないだろうか。

#カレーツーリズム #カレーダンニャバード #カレーですよ #curryheads

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フードジャーナリスト、ブロガー。2005年開設の食をテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」に5000記事超の実食記事掲載。著書 技術評論社「iPhone x Movie スタイル」笠倉出版社「カレーの本」ぶんか社月刊男性誌「エキサイティングマックス!」にて連載9年目。
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