日本プロ麻雀協会所属のプロがダメな理由

・前置き~ようへい氏note

一部で「麻雀プロ論」が議論を呼んでいるようなので、ちょっとだけ書いてみます。なお、有料設定ですが99%は無料で読めます。

前置きとしては、ようへい氏のこちら。

「協会員は個人単位で団体を盛り上げることを考えてない、だからMリーグもうちからは選ばれないってなってる」とのことで、個人的に麻雀に関して研鑽・努力することを厭わない人は多いのに、団体全体を盛り上げる・価値を上げる努力をしてる人はあまりいないんじゃないの?という問題提起となっています。

私自身はこの問題提起には概ね同意です。
団体全体の価値を上げることは、特にスポンサーや演出が絡むメディア露出には極めて重要なこと。この部分を疎かにしていては淘汰されていくのは自明です。

ちなみにようへい氏はこの続編のnoteでは「テレビに出てる芸人の時点で、その人はほとんどの麻雀プロより世間的には格上なのです」という表現をされていて、こういう格上・格下という斬り方はプロを語る上では得策ではないと思いますが、これはご当人も言葉足らずと自覚されているようなので(他人を批判する暇があったら自身・自団体の格を上げよう、そのための努力を一緒にしよう、というのが真意のようです)、これについてはとりあえずここでは割愛します。

では、なぜ協会員(協会所属プロ)はその努力をしないのか?
単純に個々人の資質の問題以外に、団体として構造的な問題があるとすれば、そこを是正すれば事態は改善するはずです。
私も3年半ほど(短っ!)協会に籍を置かせて頂きましたし、今でも一番好きな麻雀プロ団体は?と聞かれれば協会と答えるほどには愛や想いはあります。なので肯定的・発展的な視点で、この点を少し掘り下げさせてもらいたいと思います。

・日本プロ麻雀協会の「今」

「麻雀プロの”プロ”はプロフェッショナルではなくプロパーの略だ」と表現されたこともあるように、かつての「麻雀プロ」は”飯が食えない”職業…いや食えない以上は職業ですらない、単なる肩書或いは属性でした。
それが劇的に変わったのが、2018年の「Mリーグ」開幕でしょう。
麻雀プロがただ麻雀を打ち、対局を人に見せるだけで”食える”ようにと、最低年俸(400万円)を定めたプロリーグ戦が発足したのです。

正確にはMリーグ発足以前も、競技の賞金や対局料だけで”食う”のは難しかったものの、麻雀店のゲスト料で”食えている”麻雀プロは一定数存在していました。
ゲスト料の1日単価が5万円(この水準に達しているプロは恐らく全プロの中の数%程度でしょうが)のプロが、全国各地の麻雀店に営業を続けて年200日ゲストに入れば年収1000万円は可能であり、Mリーグにドラフト指名を受けるトッププロはほとんどがこれに該当。つまりMリーガーになることにより年収が減ったプロの方が多数派だったはずですが…まあこの辺は別の話なので稿を改めて語るべきでしょう。

話を戻すと、そのMリーグ。
2018年の開幕当初は21名だったMリーガーが、新規参入やチームメンバー規定の変化により、現在は32名になりました。契約満了によりMリーグを去った3名を合わせるとこれまでのべ35人の「Mリーガー」が存在したことになりますが、このうち協会員は僅か3名。協会から最高位戦に移籍した1名(鈴木たろうプロ)を除けば、現所属では「35名中2名」ということになります。
大雑把に各団体(Mリーガーになれるのは規約の5団体所属プロのみ)の所属人数を記すと、連盟600名、最高位戦と協会が400名ずつ、そして麻将連合とRMUが100名程度ずつとのこと。つまり1600名程度の全麻雀プロのうち25%が協会員なのに、「Mリーガー」に占める現協会員のシェアは6%ということになるのです。

Mリーグの各チームにはそれぞれの事情があり、「契約や提携に際して同一団体と向き合うのが合理的だから、1団体(これに該当するのは連盟だけですが)の所属プロのみ指名する」というチームもあるでしょう。また過去の経緯から、チームの幹部が特定の団体と付き合いがあるので指名しやすかったり、逆に特定の団体と折り合いが悪くて指名しない、ということもあるかもしれません。
正直いくつかのチームの事情は知ってはいるのですが、それをここで詳らかにする意図はないのであくまで可能性に留めておきます。とにかくそういう「事情」の積み重ねによって、協会は「Mリーグドラフト戦線」に於いて不利な立場に立たされているようです。
それは事実なのですが、そういう事情だけではない、協会独自の問題があるのではないでしょうか。

・Mリーグ開幕前夜の日本プロ麻雀協会

Mリーグ開幕直前時点で、私は協会員でした。
なので協会員全員が所属するLINEグループにも入っており、Mリーグ発足前後のタイミングで日本プロ麻雀協会が協会員に向けて発したメッセージも直接受信していました。

従来の「麻雀プロ」とは全く違う「新時代のプロ」「”麻雀で食える”真のプロ」と言われた「Mリーグ」の立ち上げ。場合によっては、既存のプロ団体や麻雀プロと利害が対立する可能性もあります。
特にこれまで、オンレート(金銭のやり取りが発生する可能性がある)麻雀店のゲストや麻雀店経営を大きな収入源としていた麻雀プロにとっては、「ギャンブルの否定」を掲げたMリーグとは直接利害が対立することもあるはず。
決して「競技麻雀プロ=賭けマージャンをやっている」という訳ではないですが、最大の団体(Mリーグでも一大勢力となる)日本プロ麻雀連盟のトップの一角に位置する佐々木寿人プロ(実際にMリーガーとして大活躍している)がアマチュア時代は「フリーで1000万貯めた男」というキャッチフレーズで売っていたほどで、やはりそこにはある種の軋轢が発生する可能性はあるでしょう。

そういう訳なので、私自身、協会からどのようなアナウンスやメッセージが届くのか、楽しみに待っていました。
待っていたのですが…ついぞ、公式な見解や指示や意志表明が届くことがなかったのです。

協会から初めて「Mリーグ」に関しての連絡があったのは、ドラフトの数日前。
「ご存じのとおりMリーグが始まります」という文言にMリーグ公式サイトのリンクが貼り付けられたLINEが届き、その上で「当日ドラフト会議を盛り上げるべく会場に参席する人を募集します」という内容でした。

「ご存じのとおり」? ハァ?

正直、協会員は給与をもらう被雇用者でもなんでもない、何なら少なくない協会費(年間6~8万)を払っている立場です。
それでいて、SNS等で「協会員として不適切な発言」があれば本部から注意を受けますし、「政治的・社会的な発言をしたければアカウントを分けろ」という人権に踏み込んだ指示も受けます。
そこまでするのに、プロとして極めて重要な事象に関しては公式な見解はなく、「ご存じのとおり」で済ませる。こんな「プロ団体」が他のジャンルであるでしょうか?

そんな折、某団体の某プロが「今回私はMリーグドラフトにエントリーしませんでした」という旨の発言をSNSで発信して、一部プロや麻雀ファンがざわつく、という事件がありました。
「エントリー」というシステムがあるのか…?よく分からないですが、恐らく団体がトッププロを抜粋して本人の意思を確認して推薦する、リストのようなものがあるのは想像に難くない。それならばその存在について、内部的には何らかの通達があっていいのではないでしょうか。

このままではMリーグドラフト戦線に於いて協会は後れを取る。
それだけではなく、協会員の団体を盛り上げようという士気にも大きく関わる。
つまり、Mリーグを軸に麻雀界の勢力図が再構成されれば協会は敗北し、大きく衰退する。

この時点で私はここまで予見して、大きな危機感を抱きました。言ってみれば現時点でのようへい氏の危惧を、3年前に予見していたのです。
そして危機感を抱いただけではなく、思い切って団体の幹部に進言をしたのです。

「従来のプロと利害が一致するという意見もあるが、団体としての見解(恐らく共存共栄を目指す、ということになるだろうが)を公式に発信して、協会員が一般の方に質問された際などの指針となるようにして欲しい」
「エントリーというシステムがあるかどうかは知らないが、団体として推薦する基準があるならば、それを協会員に示して納得感とモチベーションを上げる材料として欲しい」

この2点を直訴しました。

私は古くから個人的に多数の麻雀プロと交流があったので、東京の本部理事に直接問うこともできましたが、頭の上を飛び越えるのも申し訳ないと思い、関西本部長に上記の直訴を携えて連絡したのですが…その際の回答が、驚くべき内容でした。

・関西本部長の回答、協会がMリーグ戦線で後れを取る理由

「エントリーやリストなんて自分も知らない。
というか、全て極秘裏に動いているのに、そういう発言をしてはいけない

要約すると、前述の「魂の直訴」に対する返答はこのようなものでした。
恐らく各団体の幹部のみで共有されている内容で、それを漏らしてはいけないという箝口令が敷かれていたのでしょう。何も存在しないし知っていてはいけない、ということから、それへの質問や意見も「悪」だと咄嗟に反応したのだと思います。幹部の一人である本部長が、泡沫の一会員である私にこの返答をしたこと自体は責められないでしょう。

しかし既に「Mリーグ」が発足することは公になっているのですから、「詳細は明らかになっていませんが、現時点でも将来的にも既存のプロとは利害は対立せず、本団体は共存共栄を目指して盛り上げていく所存なので、協会員の皆さんも協力して欲しい」などのアナウンスはできるはず。
そして開幕してからは、例えば「団体としては在籍3年以上・A2リーグ以上・公式戦平均着順2.3以上・公式戦累積ポイント1000pt以上のうち3つ以上を満たせば、責任を持って各チームに推薦します」など(条件はあくまでも一例)のメッセージを送れば、各プロのモチベーションも団体への帰属意識も高まりますし、その指標を満たしている人・近づいている人は当然全力で団体の価値を高めるような言動をするでしょう。

そしてショックだったのが、後日私が他の協会員から言われたセリフ。
「Mリーグに関して、なんか本部長に噛みついたらしいですねww」

こんなにも危機感を抱いて協会への愛から直訴したことが、半笑いで「噛みついた」と言われる言動と解されてしまったのか…私は極めて深く絶望しました。

本部長からも「東京の本部幹部にもあなたの意見を伝えてみたが、全て私と同じ意見だった」との追い打ちの叱責が届きました。ああ、これから協会は更に衰退するんだな、とこの時ハッキリ悟ったのを覚えています。本部長が個人とのLINEや会話の内容を他者(幹部以外の協会員)に漏らしている、という資質の低さも悲しかったですが。

ちなみに私は2019年秋(Mリーグ発足から1年強の後)に協会員を辞めるのですが、そこに至るまでMリーグに関する公式な見解のアナウンスはありませんでした。
正直こういう体制や体質が、そのまま現在のMリーグ戦線での惨状に繋がっていると思います。つまり協会の現状、ようへい氏が嘆く協会員の団体への帰属意識や団体の価値を上げようとする意識の低さは、日本プロ麻雀協会という団体そのものの体質に由来する部分が少なくない、と思うのです。

・結び~協会の前途に希望と栄光あれ

今現在はどうなっているか知りませんが、「Mリーグ」をはじめいろんな事象に関してしっかりした公式アナウンスがあり、昨今増えている若くて有望な人材たちのモチベーションと団体への帰属意識が上がり、そして麻雀プロ界の勢力図に於いて協会が重要な位置を占めている。そんな未来を願ってやみません。

日本プロ麻雀協会の前途に、希望と栄光あれ。

以上です。

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