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「連対」という言葉について考える

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「連対(れんたい)」という言葉があります。主に公営競技に使われる言葉ですが、麻雀でも使われるようになって久しいですよね。
一般的にレースや対局で「2着以内」に入ることを指す言葉として使われています。

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※JRA公式サイト「2022年度リーディングジョッキー」より(該当部分に赤囲みで加工)
https://www.jra.go.jp/
例えばこちらの表でも、1着になる率を「勝率」、1・2着になる率を「連対率」、1~3着になる率を「3着内率」として記してあります。なお「3着内率」は「複勝率」と書く場合もあるようです。

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※Wikipedia「麻雀の成績集計」より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB%E9%9B%80%E3%81%AE%E6%88%90%E7%B8%BE%E9%9B%86%E8%A8%88
麻雀に関しては単なる慣用句的な使われ方かと思いきや、Wikipediaにもしっかり記載があります。
ところでこのWikipedia、面白いですね。時折議論の的になる麻雀の実力評価について、分散や分布の概念を用いて、一定の定義付けを試みているのが興味深いページになっています。
「連対率」に関しても、「”2着であればプラスのウマ(順位点)を獲得できる”ので、ある意味”勝率”」だとしているのも、納得できる表現です。

ところがこの「連対率」。
競馬以外の公営競技、競輪・ボート・オートなどでも使われる表現なのですが、こちらは表記の仕方が少し異なります。

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まとめての掲載なので少々見にくいかもしれませんが…
競輪・ボートレース・オートレースのオフィシャルサイトや新聞では、「2連対率」や「3連対率」という表記になっています
カンの良い方ならばもうお気づきでしょうが、これは近年の車券・舟券は三連複・三連単が主流なので3着内率という指標が昔より重要度を増していて、旧来の「連対率」という表現では足りなくなって「2連対率」「3連対率」というワードが生まれたものです。
それは間違いないのですが…では、そもそも「連対」とはどういう意味なのでしょうか。

「連対」とは「勝式馬券(車券・舟券)の象」の略なのです。

中央競馬の場合を例にとると、馬券の種類には大まかに以下のような歴史があります。
1990年以前:単勝・複勝・枠連(枠番連勝複式)
 ※4~6枠制での連単や重勝式の施行時もあったが割愛
1991年:馬連(馬番連勝複式)導入
1999年:ワイド(拡大馬番連勝複式)導入
2002年:三連複(馬番三連勝複式)・馬単(馬番連勝単式)導入
2008年:三連単(馬番三連勝単式)導入 ※2004年から一部レースで導入
2011年:「WIN5」導入

1954年の日本中央競馬会設立以降(正確には日本競馬解時代の1947年末から)2002年まで、連勝式の馬券の対象は半世紀ほど「2着以内」だったので、長らく「連対=連勝式馬券の対象」は2着以内でした。
それゆえJRAオフィシャルサイト上のデータでも「連対」は2着以内として定義されており、3着以内が対象となる馬券が発売されて20年経っても、依然として「連対率=2着以内の率」なのです。また中央競馬の場合は、1着以外で唯一競走馬の取得賞金(出走レースのクラス分けに用いられる各馬固有の指標)が加算されるのが「重賞の2着」ということで、他の競技に比べて2着以内に意味がある場面が僅かに多いことも関係しているかもしれません(と言いつつ、3着以下も賞金が加算される地方競馬も「連対=2着以内」での表記がほとんどのようです)。

他の公営競技も軒並み「連勝式の対象=2着まで」の長い期間を経ての現状「3着まで」ですが、競馬だけが旧来の「連対」の概念を守り、競輪・ボートレース・オートレースは”三連単時代”の実情に即して「連対率」に2種類の別(「2連対率」と「3連対率」)を設けているのが現状、という訳です。

個人的には、語源になった事象(連勝式馬券)が現役で続いている以上、現状に即した形での用法が望ましいと思うので、競馬における「連対/連対率」も競輪ボートオート方式の「2連対率」「3連対率」並立が分かりやすくて良いと思っています。何よりも「2」「3」という数字が入っているので、目で見て意味が分かりやすいですからね。
ただそうなると、麻雀での「連対」の概念をどうするかが問題…というほどのことはなく、公営競技の「連対」は3着以内だが麻雀のそれは2着以内、ということで良いのでしょう。こちらはそもそも語源になるものがない他競技から借用した概念なので、前掲のWikipediaの内容(2着以内にポイントプラスの意味がある)が根拠になりますよね。

いずれにしても、麻雀プロや麻雀ライターや麻雀メディアの方は、あまりに「連対」を「連帯」と誤字する人が多いので(最近はだいぶ減りましたが)、「連対=連勝式馬券(車券・舟券)の対象」の略、というのだけは覚えておいて欲しいものです。
誤字や誤用をうるさく言うより意味が伝わることの方が大事ではありますが、それは既に分かっている・知っている層に対してだけの話。特にテクニカルタームが多い競技で、これから麻雀を覚える層や学んで行く層に対して、正しい文字や言葉を伝えて行くのも専門家の役割ではありますから。

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