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JR西日本が赤字路線の収支を公表 対象路線の取り組みは? ②

前回大糸線、越美北線、小浜線の利用状況と御客を増やす取り組みを紹介させて頂きました。今回は関西本線、きのくに線、播但線、加古川線を紹介させて頂こうと思います。前回の記事は下記リンクから見ることができます。

関西本線

(写真は関西本線で活躍するキハ120)
【関西本線の概要】
関西本線は名古屋駅からJR難波駅へ至る路線です。このうち名古屋駅~亀山駅はJR東海が、亀山駅~JR難波駅はJR西日本が管轄しています。今回収支が発表されたのは亀山駅~加茂駅(京都府)の区間です。

【関西本線の現況】
亀山~加茂の区間では、1時間に1~2本程度普通列車のみ運転されています。JR西日本のローカル線の中では比較的本数は多いと言えます。
この区間の輸送密度は1090人(2019年度)、営業係数は685(2017~19年度平均)。収支は14.6億円の赤字(2017~19年度平均)となっています。

【関西本線活性化の取り組み】
「JR関西本線利用促進と電化を進める会」という団体があり、関西本線の活性化に取り組んでいるようです。この団体には個人も会費を支払うことで入会することが出来ます。また、2021年3月からは交通系ICカードを利用して乗車出来るようになりました。

【関西本線の今後】
東海道線に万が一の事があった場合、迂回路として使用出来るので廃止されることはないと思います。しかし、お客を増やそうと思うと課題があり、それはこの区間で一番人口の多い伊賀市の中心が伊賀鉄道の上野市駅にあるということです。つまり、伊賀地方へ観光に行く人は車か近鉄~伊賀鉄道の経路を使う方が多いです。そのため、この区間を利用する御客は地元の方々が殆どです。沿線住民の利用率をあげることが今後の活性化に繋がると思います。

きのくに線

(写真はきのくに線の特急くろしお)
【紀勢本線の概要】
紀勢本線は三重県亀山市の亀山駅から和歌山県和歌山市の和歌山市駅を結ぶ路線です。亀山駅から和歌山県の新宮駅まではJR東海が、新宮駅から和歌山市駅まではJR西日本が管轄しています。また、新宮~和歌山駅間に「きのくに線」の愛称が付けられています。今回収支が発表されたのは新宮駅から白浜駅です。

【きのくに線の現況】
 紀伊勝浦~新宮間は名古屋直通の特急南紀が3往復。
新宮~白浜間は新大阪・京都直通の特急くろしおが5往復運転されています。また、特急列車は多客期には臨時列車が運転されます。この他にも普通列車が1~3時間に1本程度運転されています。
 この区間の輸送密度は1085人(2019年度)で営業係数は525(2017~19年度平均)。収支は28.6億円の赤字でした。特急くろしお号の振り子式車両の経費が嵩んだのかJR西日本の全ての路線の中で2番目に赤字額が多くなっています。

【きのくに線活性化の取り組み】
2021年7月から12月まで、JR西日本の観光列車「WEST EXPRESS銀河」がきのくに線で運行されました。2022年9月から2023年3月にもきのくに線で運行される予定となっています。
 また、紀伊田辺~新宮駅間で普通列車の車内に自転車をそのまま持ち込めるサービスの実験を行いました。利用が好調だったようで、2022年4月1日からは御坊駅~紀伊田辺駅間でもサービスが開始されるようです。

【きのくに線の今後】
2025年にきのくに線と並行する形で紀勢自動車道(すさみ南IC~串本IC)が開通します。くろしお号のお客を減らさない努力が必要と考えます。

播但線

(左は電化区間で運用されている103系電車。右は非電化区間で運用されているキハ41)

【播但線の概要】
播但線は兵庫県姫路市の姫路駅から兵庫県朝来市の和田山駅に至る路線です。姫路駅から寺前駅は電化されており、電車が走っています。寺前駅から和田山駅は非電化で、気動車が走っています。今回収支が発表されたのは非電化の寺前~和田山の区間です。

【播但線(寺前~和田山)の現況】
1~2時間に1本程度普通列車のみ運転されています。
また、1日3往復大阪~香住・浜坂・鳥取を結ぶ特急はまかぜ号も運転されています。輸送密度は1222人(2019年度)、営業係数は340(2017~19年度平均)。収支は7.3億円の赤字でした。

【播但線活性化の取り組み】
定期的に団体列車形式でサイクルトレインを運行し、参加者に「銀の馬車道・鉱石の道」の景色、名物を楽しんでもらうことでエリア内外への認知度向上、来訪者増加を目指しているようです。

【播但線の今後】
阪神・淡路大震災でJR神戸線が寸断された際に迂回路として使用された実績があること、他の線区に比べると比較的輸送密度が高いことから廃止になることはないと思います。近年竹田城が有名になり、外国人観光客も増えてきていますので今後の利用者増に期待です。

加古川線

加古川線で運用されている103系電車
【加古川線の概要】
加古川線は兵庫県加古川市の加古川駅から兵庫県丹波市の谷川駅に至る路線です。今回収支が発表されたのは、西脇市駅から谷川駅の区間です。

【加古川線の現況】
1~3時間に1本程度普通列車のみ運転されています。
西脇市以南と比べるとかなり少ない運転本数です。
輸送密度は321人(2019年度)、営業係数は1567(2017~19年度平均)。収支は2.7億円の赤字(2017~19年度平均)でした。路線長が短いこと、一部区間で25km/hの速度制限を実施するなど徹底したコスト削減が行われているため、比較的赤字額は少なくなっています。

【加古川線活性化の取り組み】
「JR加古川線・神戸電鉄粟生線・北条鉄道利用促進協議会」が、沿線の情報誌を発行しています。また、加古川~西脇市駅間では定期的に、沿線の児童向けに車内で環境学習を行う列車や、高齢者向けの歌声列車を団体列車形式で走らせるなど取り組みを行っていますが、西脇市以北については残念ながら活性化の施策は特に講じていないと言わざるを得ません。

【加古川線の今後】
 阪神・淡路大震災でJR神戸線が寸断された際に迂回路として使用された実績があり、2004年に全線電化された経緯がありますが、電化と同時に黒田庄駅の交換設備が撤去されてしまいました。西脇市~谷川間で列車交換を行うことが出来ないため、列車の増発が出来ず迂回路としての役割は現在果たせないと考えられます。
 今後も鉄道を残すためには、沿線住民の利用率を上げるしか方法は無さそうです。

今回は関西本線、きのくに線、播但線、加古川線の4路線を紹介させて頂きました。次回は山陰本線について考えようと思います。

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