見出し画像

プロ野球戦力分析(阪神編)

 6月19日に開幕が迫った日本プロ野球。今日は昨年度セ・リーグ3位、阪神タイガース(阪神)について分析する。

•投手陣の入れ替わり


 2010年に来日し、10年間に渡って活躍してきた阪神史上最高の外国人先発投手、R.メッセンジャーが昨年限りで引退。また、2016年にFA宣言を経て中日から移籍し、左の中継ぎとして活躍した高橋聡文も引退。そして、2016年に来日し、クローザーやセットアッパーとして活躍したR.ドリス、昨年来日し58試合で2勝(3敗)40H、防御率1.38と驚異的な成績を残したPJことP.ジョンソンが、メジャー挑戦の為退団している。その他、岡本洋介、歳内宏明が退団。

 そして、補強もかなり積極的であった。FA戦線には参加しなかったものの、中継ぎ候補としてJ.エドワーズ(米/ インディアンス)、先発候補としてJ.ガンケル(米/ マーリンズ)を獲得。また、前ソフトバンクのR.スアレスを自由契約から獲得し、同じく前ソフトバンクでベテランの中田賢一を金銭トレードで獲得している。全員右腕投手。

 ドラフトでは、高校BIG3の右腕、西純矢(創志学園高)を外れ1位で単独指名。二軍戦では既に経験を積みつつあり、一年目から一軍に呼ばれる可能性も。また、横浜高の左腕エース、及川雅貴を3位指名。そして、東海大九州の右腕、小川一平を6位指名し、獲得している。小川は今回の支配下ドラフトで阪神が指名した中で唯一の大卒であるが、素材型の為、どう化けるか。

•魅力たっぷりの救援陣。先発は役者揃いだが…


 昨年奇跡の逆転でリーグ3位に滑り込み、CSファイナルまで進んだ阪神。原動力は何と言ってもリーグトップの防御率3.46だ。特に救援防御率は両リーグトップで唯一の2点台の2.70という凄まじい成績だ。先発防御率はリーグ3位の3.90と並。
 そんな最強救援陣のクローザーは通算250Sが迫っている不惑の火の玉ストレートボーラー、藤川球児(40)。昨年は不振のR.ドリス(昨年限りで退団)に代わって途中からクローザーに復帰し、56試合4勝(1敗)16S23H、防御率1.77。56投球回で83奪三振と右腕の衰えを感じさせない。次代のクローザーを探す必要はあるが、今季はまだクローザーを任せたいところだ。
 その他、左のセットアッパーとして48試合3勝26H、防御率1.01の岩崎優(29)、左の中継ぎとして63試合4勝1S11H、防御率1.67とフル回転した育成の星•島本浩也(27)、新外国人右腕のJ.エドワーズ(32)、51試合1勝(2敗)18H、防御率4.30の鉄の左腕能見篤史(41)、昨季5年目で57試合2勝(2敗)7H、防御率3.00と便利屋で台頭した守屋功輝(27)、第二先発として終盤の快進撃に貢献した外国人左腕O.ガルシア(31)といった、贅沢な救援陣を擁している。ここに若手が続けるか。

 一方、先発陣は昨季2桁勝利到達者がオリックスからFA移籍してきた西勇輝(30)のみ。右腕エースとして26試合で172.1回を投げ、防御率2.92というタフネスぶりを見せている。ただ、8敗しており、通算11年で84勝73敗という数字が表す通り、相変わらず援護には恵まれていない。果たして通算100勝にどれだけ近付けるか。また、変則サイドハンド右腕青柳晃洋(27)は、25試合で143.1回を投げ初の規定投球回到達。防御率3.14と台頭した。こちらも9勝9敗で貯金が無いのが寂しいところだ。
 そんな中、かつての右腕エースながら不振が続く藤浪晋太郎(26)、昨年19試合で3勝9敗、防御率3.78ながら109.2回を投げ125奪三振の左腕高橋遥人(25)は開幕一軍が絶望的で、新外国人、J.ガンケル(29)、R.スアレス(29)の両右腕が開幕ローテ入りする可能性があるがどちらも未知数。昨季不振だった左腕エース候補岩貞祐太(29)もひょうかをあげているが、果たして。移籍組で通算100勝のベテラン右腕中田賢一(38)、ベテラン左腕岩田稔(37)さえも開幕ローテの可能性があり、各々の実績はあるが、先発陣の整備には時間が掛かりそうだ。


•野手陣の入れ替わり


 2000本安打を達成していた鳥谷敬がコーチ就任の打診を断り昨年限りで退団。ロッテに入団した。Y.ソラーテ、E.ナバーロの両外国人も退団した。また、その他にも森越祐人(西武移籍)、小宮山慎二、山崎憲晴、育成の横田慎太郎の4選手が退団した。

 野手の補強も積極的で、メジャー通算92本塁打の左打者J.ボーア一塁手(米 /エンゼルス)、昨年韓国リーグ打点王のJ.サンズ外野手(韓国 /キウム)を獲得。ドラフトでは履正社高の4番井上広大を2位、二刀流としても活躍した遠藤成内野手(東海大相模高)を4位、藤田健斗捕手(中京学院大中京高)を5位で獲得。育成でも大卒の2外野手を獲得している。


•機動力野球を活かせるか


 チーム打率はリーグ5位の.251。538得点はリーグワースト。94本塁打はリーグ5位。509打点はリーグワースト。得点力の無さが浮き彫りになっている。
 ただ、100盗塁はリーグトップ、104犠打はリーグ2位と、スモールベースボールの気配は見せた。それだけに、リーグワーストの99失策の守備力を改善し、守り勝つ野球を見せたいところ。


 各選手を見ていくと、福留孝介(43)、糸井嘉男(39)の両ベテランに未だに頼りがちな面がある中、ルーキー近本光司(26)が142試合で159安打、36盗塁、打率.271で盗塁王を獲得。矢野燿大監督の方針で今季は2番での起用が濃厚だが、9本塁打、20二塁打、7三塁打と長打も打てる為、打って走れる2番を目指したい。また、昨季全試合出場で14本塁打76打点の大山悠輔(26)は得点圏打率.318とチャンスにも弱くないが、20失策の守備が課題だ。主将で二塁、三塁、遊撃を守り、全試合出場で打率.267ながら出塁率.353、通算3年間でも出塁率.371の糸原健斗(28)は7失策。守備面で成長し、鳥谷のようになれるか。
 正捕手の梅野隆太郎(29)は2年連続ゴールデングラブ賞で昨年サイクルヒットも達成。129試合で打率は.266だが、9本塁打14盗塁、出塁率.326、得点圏打率.330、リーグ2位の盗塁阻止率.370。走攻守揃った名捕手である。リードはまだ課題もあるが、ブロッキング能力も高い為、今季も期待。
 その他、2016年の新人王の頃の復活の兆しを見せた外野手高山俊(27)、2年目の内野手木浪聖也(26)、強打の内野手北條史也(26)、今季は三塁を争っている外国人内野手J.マルテ(29)といった戦力もいる。

•今季期待の若手選手

投手:望月惇志(23)
  190cmの長身から最速159km/hの速球を投げる豪腕。変化球の精度に課題があるが、CSファイナルでの先発登板も経験している。
 ただ、球種が少ない為、中継ぎでの起用が理想。大型先発右腕として育てたい球団の気持ちも理解出来るが、クローザー候補として捉えた方が良い結果を残すだろう。矢野監督の起用に期待したい。


野手:井上広大(19)
  ヤクルトに1位指名された星稜高、奥川恭伸から本塁打を放ち、履正社高の夏の甲子園優勝に貢献した右のスラッガー。既に実戦で本塁打を放つなど結果を残しており、1年目からの一軍起用も視野に入っている。外野手の高齢化が深刻で、近本以外横一線の為、期待したいところだ。


•優勝への条件


 投手、野手共に高齢化しているが、若手の台頭が見えつつあるのは収穫としてある。ただ、盤石の救援陣、機動力野球を活かす為には守備力の向上を目指すしかない。落合博満が中日監督だった時代の野球が理想となってくる為、特に二遊間の守備に重きを置きたい。
 また、外国人野手のハズレが見え始めている。元々球団体質的にハズレ外国人が多いが、ボーア、サンズはどうなるのだろうか。



 


 





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?