★今日の問題★

 未成年者Aは、Bが所有する本物のコインを適正な価格で購入する旨の売買契約を締結した。なおこの契約に際して、Aは、法定代理人Cの同意書を偽造してBに差し入れ、Cの同意を得ていると偽っていた。
 この場合において、Bは、Aの欺罔行為を理由に、売買契約を取り消すことができる。

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒……

胡桃「10秒経過。どうかしら? 」
建太郎「ええっと……。この事例では、取消しを主張しているのは、相手方Bなのか」
胡桃「そうよ。未成年者Aは、詐術を用いていることになるから、民法第二十一条によって、取り消せないのは分かるわね」

民法
(制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

建太郎「うん。一方、その相手方から、取消しを主張できるかということだな。欺罔行為を理由として」
胡桃「欺罔行為ということはこの規定ね」

民法
(詐欺又は強迫)抜粋
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

建太郎「うーん。でも、これで取消しできるというのもおかしくないかな」
胡桃「結論から言うと、取消すことはできないのよ」
建太郎「そうだろうな」
胡桃「問題はその理由ね。設問では、Bは、Aの欺罔行為を理由にしているわけだけど、この事例で、契約内容に関して、BがAに騙されたと言えるかしら? 」
建太郎「契約内容? 」
胡桃「そう。例えば、偽物のコインを買わされたとか、本物なのに安く売らされたとか」
建太郎「設問を見る限りでは、契約自体は適正なんじゃないかな。ただ、未成年者Aが同意書を偽造していただけだ」
胡桃「そうよ。契約内容自体に、欺罔がないのであれば、民法第九十六条1項は使えないということなのよ」
建太郎「あっ。そうなんだ」
胡桃「このことを小難しく説明すると、行為能力に関する詐術は、法律行為の内容に関するものではなく、Bの効果意思に瑕疵があるわけではない。ということなのよ」
建太郎「うーん。とりあえず、今の話が分かればいいんだな」

※問題は、ノベル時代社の肢別100問ドリルを利用しています。下記サイトから入手できます。

https://new.novelzidai.com/

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