宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-18

 赤城刑事の言葉に天木刑事もうなずく。
「ですね。二十五歳にして何の資格もなく、恋人の事務所に居候――すねをかじっているようなものですからね」
「二人が共謀して宅本健一の遺産を狙うことも十分にありうるな。恋人の桜咲胡桃は不動産と法律のプロだ。宅本健一の遺産を手に入れるためにはどうしたらよいか心得ているだろう」
「どうでしょうね。宅本建太郎の方はともかく、桜咲胡桃がそんなことを考えますかねえ」
「数千億近い遺産が転がり込むかもしれないんだぞ。大金を前にすれば人は変わるものだ」
「しかし、今のところ、二人が怪しい人間と接触している様子はない。ごく普通の仕事をしているだけのようだし、宅本建太郎も夜になるとまっすぐに家に帰って、宅建の勉強をしているだけですよね」
「当分、二人の周辺を探り続けよう」
「分かりました」

 ※ 

 桜咲司法書士事務所が入る小豆ビルに到着した建太郎は、自転車を道路に停めると、階段を駆け上がった。五階建ての小さなビルであるから、エレベーターなどない。一つの階に一つのテナントが入る雑居ビルだ。一階はヘアカットの店。二階と三階は学習塾。四階は保険代理店。五階が桜咲司法書士事務所である。
「言い訳どうするかな……」
 五階にたどり着く時、建太郎は、足を止めて考え込んだ。
 桜咲司法書士事務所の始業時間は朝の八時である。既に一時間も遅れている。
「そうだ。トイレが壊れて修理しているのに時間がかかったということにしよう……! 」
 ドアのノブに手をかける。
「遅くなってごめんなさい! 」
 中に入った時、傍らの鏡を見て、頭に寝癖が立っていることに気づいた。これでは寝坊したことの何よりの証になってしまうではないか。
 慌てて、髪の毛を撫でようにも、水が無ければどうにもならない。いや。その前に、胡桃に謝らないと……。
 胡桃のデスクに目を向けると、ノートパソコンに向かって猛烈にキーボードを叩いているところだった。八時半になると法務局の登記・供託オンライン申請システムが使えるようになるので、不動産登記の電子申請ができるようになる。早速、前日、受けつけた仕事の処理を始めているのだろう。
 建太郎が遅刻しているなど気にもかけていない様子で、ひたすら、パソコン相手に格闘していた。
「お……はようございます……」
 建太郎がそっとつぶやくと、胡桃がびっくりしたような眼差しを向けてきた。
 意外な反応だった。いつもなら遅刻すれば、眉を吊り上げて説教してくるのに、今日は全く様子が違う。
「建太郎! おはよう! 今すぐに、市役所行って、建太郎の戸籍簿謄本と住民票を取ってきて! 大急ぎよ! 」

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※権利関係編は完結しています。今年の合格を目指す方は、先に読み進めてくださいね。


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