★今日の問題★

 Aが失踪宣告を受けたことで、その唯一の相続人であるBが善意で、Aの財産をすべて相続した。
 しかし、その後、Aの生存が判明して、Aの請求により、失踪宣告が取り消された。
 この場合、Bは、相続した財産のうち現存利益のみをAに返還すればよい。正しいか?

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒……

胡桃「10秒経過。どうかしら? 」
建太郎「これは、条文の問題かな」
胡桃「そうね。次の条文を覚えているかどうかだけの問題ね」

民法
(失踪の宣告の取消し)抜粋
第三十二条 
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

胡桃「すると、設問はどうかしら? 」
建太郎「正しいんだな」
胡桃「そうね。ちなみに、現に利益を受けている限度、現存利益の意味は分かるかしら? 」
建太郎「つまり、今あるお金とかを返せばいいというとじゃないかな」
胡桃「じゃあ、建太郎が、失踪宣告を受けた人から、1000万円を相続したとするわ。その上で、失踪宣告が取り消されるまでに、建太郎が家賃として100万円払っていた。この場合は、いくら返せばいいのかしら? 」
建太郎「900万円だな」
胡桃「ブー。間違いよ」
建太郎「えっ。じゃあ、いくら返すの? 」
胡桃「1000万円よ」
建太郎「なんでだ? 」
胡桃「家賃は、生活費でしょ。建太郎が、1000万円相続しようとしまいと、100万円の家賃は出ていったはずよね。つまり、建太郎がもともと持っていた財産の中から、支払っていたはずということなのよ」
建太郎「うーん。そうだな」
胡桃「すると、生活費として費消した場合は、その分が現存利益になるので返還しなければならないのよ。つまり、相続した財産から家賃を払っていたなら、その分、建太郎がもともと持っていた財産からの支出を免れていたわけでしょ。それを返しなさいということなのね」
建太郎「そういうことか。じゃあ、現存利益と言う場合、全部返さなければいけないのか? 返さなくていい場合ってあるの?」
胡桃「返さなくていい場合もあるわ。例えば、浪費した場合や盗まれた場合ね。この場合は、現存利益がないため、返還する必要はないとされているのよ」

※問題は、ノベル時代社の肢別100問ドリルを利用しています。下記サイトから入手できます。

https://new.novelzidai.com/

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